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予知能力としての螺旋階段

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 それが同じ次元に並行して存在している世界であり、そして宇宙であるという考え方だからで、それは、同じ世界に存在していて、ただ、時間が違っているというだけの、並行世界に似ているのかも知れない。
 しかも、その世界は、たった五分であるが、縦並びに、
「平行して」
 進んでいるのであって、
「決して交わることのない」
 というものなのだ。
 時系列が、すべての人に共通して進んでいるのだから、兄弟の弟が、兄の年齢に追いつけないのと同じで、追いつこうとすると、兄を葬るしかなくなるのだ。
 だが、それは、あくまでも殺してしまうということは、
「別次元に追いやる」
 ということなのか、
「存在を抹殺する」
 ということのどちらしかなく、この世界とは、一切のかかわりを持つことはなくなるであろう。
 ただ、そうやって考えた時、自分がもう一人五分先にいるのだとすると、その人間にもし出会ってしまうとどうなるのだろう?
 どちらか一方が消えてしまう運命にあるとするならば、もし、五分前の自分が抹消されれば、今の自分も存在できないような気がする。しかも、その時に、考えるのは、
「同じ瞬間に消えてしまうのか。それとも、先に五分前の人間が消えてから、五分後に今の自分が消えてしまうことになるのか、それが問題であった。
 もし、一緒に消えてしまうのだとすれば、二人は同次元にいるわけではなく、あくまでも異次元の同じ人間として存在しているわけで、この世界では、虚像として映し出された自分が見えているだけなのかも知れない。
 しかし、死ぬのが五分後であるとすれば、あくまでも、中心は自分自身(もう一人の自分を含む)というわけで、同じ世界に存在している人間として、ドッペルゲンガーのような発想になり、二人が死んでしまうというのは、
「ドッペルゲンガーを見ると、近いうちに死ぬことになる」
 という伝説に合っているような気がするではないか。
 ということになると、同一次元に、五分前を行く女性は存在するということになり、自分も死んでしまうのではないかということで、主人公は思い悩むようになった。
 結果としては、事故に遭って死んでしまうことになるのだが、結果がかなりあいまいだ。事故に遭うということは、偶然なのか、それともドッペルゲンガーの存在によるものなのかということがハッキリと分からない。
 その人と同じような形で死んだ人が他にいて、その人も、自分が死んでしまうのではないかと怯えていたのだという。
 その人は、主人公とは似ても似つかない人であったが、結局は、
「五分間」
 というのがミソであり、この五分間の間に信憑性を持たせるために、お互いが選ばれたのだ。
 どちらが、本当に死ぬ運命にあったのかということは分からない。ただお互いに、五分前と五分後で別々の世界に生きているはずで、別の人間を意識していたのだ。
 だが、ここでおかしなことに気づく。
「では、彼の態度は何だったのだろう?」
 という考えであった。
 彼は、ひょっとすると、このどちらの世界も知っていて、管理している人間だったのかも知れない。どちらもの世界を行き来できるエージェントのような存在で、それぞれの世界の二人を監視していて、それぞれに幻影を見せるために遣わされた人間だったのかも知れない。
 そう思うと、異次元であっても、同次元の並行世界であっても、そのことはあまり変わらないように思う。エージェントが、いかにお互いに信憑性を持たせ、そして、それぞれを意識させることに注意を払ったのか。そしてそこからどのように、市に向かって舵を切らせるかということが重要だったのだ。
 そんな小説を読み終えると、ちひろは、何か寒気を感じ、思わず誰もいないはずの部屋にゾクッとして、部屋を見まわした。
「こんなにこの部屋って狭かったのだろうか?」
 と感じさせ、窓もすべて閉まっているのに、どこからか、隙間風が入ってくるのを感じたのだった。

                かえでとちひろ

 吉岡かえでが、谷山ちひろと知り合ったのは、大学内でのことではなかった。いつもちひろが言っている本屋に、その時偶然、かえでが来ていたことだった。
「ひょっとして、K大学文学部の方ですか?」
 と最初に声をかけたのは、かえでだった。ちひろの方は、一瞬たじろいでしまったのは、かえでが声をかけてきたのが、いきなりだったことと、かえでの勢いが結構なものだったからだった。
「ええ、そうですが?」
 と相手を探るような眼をしたちひろだったは、そんなことにはまったく気づかないと言った雰囲気のかえでに対して、ちひろは却ってかえでの堂々とした態度にビックリさせられたのだった。
 かえでの天真爛漫さは、結構まわりでは有名で、天真爛漫というか、そのほとんどが天然であり、相手にまったく気を遣っている様子もないのにも関わらず、それでいて誰からも恨まれることがないというのは、羨ましいことだった。
 圧倒されるのも分かった気がして、そのせいもあってか、ちひろは、すでに自分の気持ちが凌駕されたことに気が付いた。
 さすがに洗脳というところまではいかないが、かえでとのこの出会いの瞬間から、これからもかえでを避けて通ることはできないと思ったのだ。
 それにしても、ちひろにはかえでがどうして本屋に来たのか分からなかった。彼女も文学部なので、彼女はきっと、文学の本を買いに来たのだろうと思うと、手に持っているのは、SF関係の本だった。
 ちひろと違うのは、SF小説というわけではなく、ガチな勉強の本であり、名のあるどこぞの大学教授が書いたと思われる本だった。
 ただ、ちひろが目を引いたのは、その本の帯に、パラレルワールドに関しての話が乗っていたことだったのだ。
 ちひろが以前読んだ、
「五分前の女」
 という本の中に、パラレルワールドという言葉があったからだ。
 その頃のかえでは、まだパラレルワールドというものを勘違いしていた。
 つまりは、
「次の瞬間に、末広がりのように広がっている、無限に広がる可能性のことだと思っていたので、五分前の女という本を読んだ時、そこまであの話とパラレルワールドという発想が深くつながっているとは知らなかった。
 だから、最初は興味本位に、
「パラレルワールドって、どういうことなんでしょうね?」
 という質問から、話が始まった。
 この話にはさすがにちひろも食いついてくれた。
「パラレルワールドというのはね」
 というところから始まり、何となく違っているのを感じたかえでは、
「えっ、パラレルっていうくらいだから、末広がりのようなという意味で、無限に広がる可能性という意味なんじゃないの?」
 という話をすると、ちひろは冷静に考えて、
「確かにそういう言葉も広義の意味でいえば、そうなのかも知れないけど。そこまで含めてしまうと、本来の意味のパラレルワールドが別に存在することになるの。それってガチの現象だっていえるんじゃないかしら?」
 というのだったが、それを聞いたかえでは、本当におかしくなり、大声で笑ってしまって、まわりを憚らずに笑うかえでを、ちひろが冷めた目で見るのではないかと思うと、少し、嫌な気がした。