果てがない河
現代編2から、王国編2へ 『砂丘の中に』
一瞬の戸惑いのあとで、私は息を飲んだ。
本当にそれはカメラのフラッシュのような一瞬。
私が瞬きをして目を開いた時ことだった。
目の前に広がったのは、私が思う水面ではなく、絹のようなたおやかさを持った、白と肌色の溶けた小麦色の斜面だった。
――何なの、これは。
私はもう一度、いや、二度、三度と目をしばたたかせる。
しかし目の前の風景は変わらない。
いや、それどころか、だ。
私は膝を折り腰を下ろしている。
その斜面の一角に、だ。
たった今まで自分が座っていたはずのくたびれた古い電車のシートは跡形もなく姿を消している。
いや、それも違う。
シートどころかすべてがない。
すべてとは「すべて」だ。
電車もレールも川も橋も、風景としての町並みも、何もかもが消失していた。
私は着の身着のままで、
何もない砂漠、
あるいは、砂丘のただ中にひとりきりになっていた。