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大団円の意味

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「風俗の王道と言ってもいいところだからな。当然合法なんだから、別に罪悪感を感じることもない。お前のような童貞が、卒業するということのために実際に、何人もの男性がお世話になっているという側面もある。だから、余計なことは気にしなくてもいいんだ。とにかく大切なのは、楽しむということさ。たぶん、今俺が言ったこの言葉、お前がサービスを受け終わってここに帰ってきた時に感じているかも知れないし、もし感じていなかったとしても、今日、寝るまでには感じることになると、俺は思っているんだ」
 というではないか。
 先輩は、よくいろいろと思い切ったことを、遠山にさせたりするが、その時も今日のように、心境について話をしてくれる。
 その話は本当にウソではなく、確かに言ったことは、すべて当たっているのだった。
「この先輩にはこれからもついていっていいんだよな?」
 ということをいつも感じさせてくれる人だったのだ。
「ソープにもいろいろあって、昔のように、高級店しかないわけじゃない。格安店と呼ばれるものもあれば、中間クラスの大衆店と呼ばれるところもある。今日は大衆店にしようと思う。せっかくの童貞卒業を格安店では気の毒だし、かといって、高級店にいきなりというのは、刺激が強すぎて、嵌ってしまって抜けられなくなるのが、怖いともいえるからな」
 と、先輩はいうのだった。
 まさにその通り、嵌ってしまって、抜けられなくなるという性格を、自覚もしていたので、それは避けないといけないことだと思うのだった。
 そんなソープランドが、どのような店かということも、先輩に予備知識として教えてもらった。
 遠山の意識としては、
「まるで必要悪のようなものかも知れないな」
 というものであった。
 基本は、「悪」であり、しかし、それでも世の中には必要なものとして、存在している。だからこそ、法律で守られていて、市民権もあるのだろう。だから、何も後ろめたさを感じる必要などない。
「楽しむ」
 というのも、そういうことなのかも知れない。
 先輩が連れて行ってくれたのは、やはりソープであった。ということは、童貞卒業が目的であることは明白である。
「お前も、もうそろそろ二十歳になるだろう。卒業してもいい頃だ。それに最初は素人よりも、プロの方がいい。同じ緊張するなら、任せる相手の方がいいだろうからな」
 ということであった。
 大学に入学してから、最初の頃は合コンなどに誘われて、
「夜の街」
 に出かけたこともあったが、あまり好きではなかった。
 そもそも、アルコールが苦手で、酒が入ってテンションが上がっている連中を見るのが好きではなかった。両親も、親戚も皆酒が弱い。
「お前は、酒の弱い家系に育ったんだから、きっと酒が弱いはずだ」
 と、決めつけられて育ったのだから、嫌でも、そう思い込んでしまったのは、無理もないことだった。
 もし、それを言われなくても、たぶん弱かったのだろうと思うが、言われたせいで、さらに思い込んでしまい、
「俺は酒に強いわけなど、まったくないんだ」
 と思っていた。
 思い込まされたことが癪には触るが、酒に強いということでメリットはないと思っていたので、気にはしていなかった。
「嫌なら、飲まなきゃいいんだから」
 と思っていたが、新入部員歓迎コンパというものに参加した時、
「先輩の杯は飲み干さなければいけないことになっているからな」
 と言われた。
 嫌だったが、しょうがないので、何とか飲み干したのだが、そのせいもあってか、完全に泥酔してしまって、前後不覚に陥り、完全に翌日は、死んだように寝込んでしまった。
 自分ではまったく覚えていない。どうやって帰ってきたのか、気が付けば、着替えて寝ていた。頭が割れるように痛く、
「もう酒の匂いを嗅いだだけで、吐いてしまいそうだ」
 と思ったくらいだった。
 そのせいで、それ以降は、飲まされることもなかった。
「お前は飲まなくてもいい」
 と先輩から言われて、不思議に思いながら、
「はぁ」
 と、頷いていたが、要するに、
「もう、こいつに飲ませるとロクなことにはならない」
 と、先輩も分かったのだろう。
 その時がどんな感じだったのか、誰も教えてくれない。ひょっとすると、
「忘れるはずはない」
 と思っているからではないだろうか。
 それほど、本人もしっかりしていたのかも知れないし、ただ、どちらにしても、どこかで前後不覚になったのは間違いない。帰る時、しっかりしていれば、さすがにここまでまわりが気を遣うこともないだろうから、帰る時は、強引にタクシーにでも乗せたのかも知れない。
 ただ、気になるのは目が覚めた時、誰もいなかったことである。一度目覚めて、
「もう大丈夫です」
 とでも言ったのかも知れない。
 その時、思ったよりもしっかりしていて、ただ、
「こいつに飲ませると、その後、誰かが付き添わなければいけない」
 というほどに、酷かったのだろう。
 急性アルコール中毒では、泡を吹くということも聞いたことがある。つまりは、泡くらいは吹いたのだろう。
 ただ、もし泡を吹いたとしても、救急車では運んではくれない。これは昔からのことで、よほどの命にかかわることでもない限り、救急車は乗せてくれない。
「我々はタクシーじゃないんだ」
 と言いたいのだろうが、まったくその通りだと思った。
 救急車で運ばれる際に、
「受け入れ病院が見つからず、たらいまわしにされる」
 という話をよく聞いたものだ。
 この場合は、病人がホームレスであったりなどの理由から、
「健康保険証を所持していない」
 などということで、病院に受け入れ要請をしても、病院側から、拒否されるということもあるようだ。
 もちろん、ただで拒否はできないので、
「手術室が埋まっている」
 あるいは、
「先生が他の患者に当たっていて、対応できる医者がいない」
 などを理由にすることが多いのであろう。
 要するに、
「金にならない患者は、他の病院に押し付ければいい」
 という、営利目的の受け入れ拒否であった。
 しかし、このような状態が救急救命病院であからさまに行われると、いつかは、問題になるというもので、実際に、受け入れ拒否のせいで、助かる命が助からないなどという悲惨な結末になったりした。
 そんな状況をマスコミは黙っていないだろう。まるでハイエナが集るように、いろいろ取材を重ね、合法、非合法関係なく、土足で立ち入るような方法で情報を集め、それを記事にしているのだ。
 彼らが慈善事業でやっているわけはない。しょせん、マスコミだって、営利のためにやっているのだ。
「俺たちが書きたい記事を書くんじゃなくて、読者がどんな記事を読みたいかということだけが、マスコミの使命なんだ」
 ということである。
 読者が読みたい記事であれば、少々倫理から離れたとしても、それは、
「読みたい人がいるから、与えているだけのことだ」
 ということを理由にして、書き続ける。
 それがマスコミというもので、
「マスゴミ」
 とも称されるゆえんである。
作品名:大団円の意味 作家名:森本晃次