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無限の可能性への冒涜

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 と、難しいことを門脇は言った。
「どういうことだい?」
「つまりはさ。神話においての神、特に万能の神であるゼウスを中心にしたオリンポスの神々というのは、実に人間臭いものだったりするだろう? 嫉妬深かったり、人間に対しても嫉妬したり、それで、自分たちの勝手な嫉妬から、人間を虫けらのように殺すのが神だとされているのが、神話の世界ではないか。そういう意味で、本当に神などと言われるものは存在せず、今のタイムマシンによって作られた、不老不死に見える人間が存在していて、彼らは、人間を羨ましいと思っていたのかも知れない。死にたい時に死ぬことができて。寿命が適正に存在している人間の世界を羨ましく感じ、あのような嫉妬から物語ができたのではないかと思うのは、危険な発想だろうか?」
 と、門脇はいった。
「かなり屈折したような発想だけど、それを考えると、タイムマシンの乱用は本当に恐ろしいものではないだろうか。それこそ、タイムマシンの開発は、相対性理論の問題点を解決できるようにならないと、開発してはいけないものなのかも知れない」
 と、松岡は考えた。
「だから、もうタイムマシンを使うのはよした方がいい。しかも、そのマシンを他の人が使うことも阻止した方がいいだろうね。そういう意味では、M大学の研究チームは、悪魔の機械を開発したといってもいいのかも知れない」
 と、門脇は言った。

                大団円

 そんな会話をしていると、自分が過去に行ったことは、
「まったくの無駄だった」
 と言ってもいいのかも知れない。
 それを門脇にいうと。
「そんなことはないさ。お前が過去に行って、実際に見てきたことが無駄足だったということでもなければ、タイムマシンというものが、ただの便利な道具という認識で、その危険性を予見することなんかできないのさ。これは、予言ではなく予見なのさ。予見というものは、絶対に必要なものであり、危険を察知するために必要なものなんだ。もし、今回の君の行動は決して無駄ではない。ある意味、この世に本当に無駄なことなんか、あるのだろうか? と考えてしまうくらいだからね」
 と、門脇は答えたのだ。
「俺はこれから、どうすればいいんだろう?」
 と、ボソッと松岡が言ったが、
「どうすればいいか。考えてみるといい。ただ、今の前のめりな発想は少し考え直した方がいいかも知れない」
 と言ってきた。
「そうなんだよな。俺が下手に騒ぐとロクなことがないような気がする。特に、今回はどうしても一番最初に行動してしまいそうで、自分でも怖いと思っているんだよ」
 と、松岡は言った。
「あまり気にしすぎない方がいいと思う。とにかく、過去の垢を落とすというもの必要なことで、しばらく研究室も休んだ方がいいかも知れないな」
 と言われたが、
「そうなんだ。研究所の方からも、今は何もちょうどないので、ゆっくりしていいとは言われているんだけどな」
 と言った。
「じゃあ、お言葉に甘えて、ゆっくりしていればいいよ」
 と、門脇がいうので、
「分かった。そうする」
 と、簡単に引き下がったのだ。
 その日は、そのまま夕食を食べて、すぐに帰宅した。
 夜のしじまが降りていたが、思ったよりも、メイン道路は交通量が多い気がした。真っ暗な中、たくさんの車がヘッドライトを照らして走っているのを見ると、ライトの明かりで頭の中が混乱してくるような気がしたのだ。
「そういえば、タイムマシンに乗っている時の、タイムトンネルってどんな感じなんだろうな」
 と感じた。
 タイムマシンというのは、あっという間にその時代に到着する、それまで目の前にあったものが、光を発し、真っ白になったかと思うと、今度は暗黒の世界から、次第に明るさがよみがえってくる。それが、タイムトラベルをしたという証拠だったのだ。
 時代が一か月ほどしかさかのぼっていないので、目の前の光景がそんなに分かることはない。ほとんど、同じ光景であり、それは、まるで夢から覚めた時、現実に引き戻された時のような感覚だった。
「タイムトラベルなんかしていない」
 と言っても疑問に感じないほどだ。
 むしろ、
「時空を超えたんだ」
 と言われた方が違和感があり、自分で何を感じているのか、錯覚を覚えない方がおかしな気がするくらいだった。
 一人になって、目を瞑ると、あのタイムマシンの中でのことが思い出される。
「未来はもちろんのこと、一瞬にして、過去に行けるなどということを味わった人間は誰もいないんだ」
 と感じたが、それもおかしな話の気がした。
「今タイムマシンが存在しているわけだから、未来においては、タイムトラベルは可能になっているのだから、たくさんの人がタイムトラベルをしてもいいはずだ」
 と思ったからだ。
 確かに未来の人間のタイムトラベルなのだが、その人が過去に行った場合、その人は過去の人なのか、未来の人間なのか分からなくなってしまう。過去に戻って、自分が未来から来たということを示して、過去の人間が信じたとすれば、そのタイムマシンを、その過去の人間が扱うこともできるのではないだろうか。
 そんなことを考えていると、頭の中が混乱してきた。
「一体何を考えているんだろう? 研究所のいうように、ゆっくりしていればいいのに」
 と思っていた。
 だが、タイムマシンを使ったのは、この機械では、自分だけである。
 もちろん、M大学のタイムマシンも誰かが使ったのだろうが、それがそんなマシンなのか、実は見たことはなかった。
 実際にプレス発表の時でも、
「タイムマシンの実物は、今回諸事情があってお店できませんが、いずれお見せすることができるはずです」
 と言っていたのを思い出した。
 しかし、これが不思議なのだが、自分がタイムマシンで、過去に戻ってから、何もせずにこっちに戻ってきた時、
「M大学のタイムマシンは、最初から公開されていたはずだけど?」
 という研究員がいた。
「そんなことはないだろう。だって、プレス発表の時、諸事情で公開できないので、いずれ機会があればと言っていたんじゃなかったかい?」
 というと、研究員は笑って、
「何言ってるんだよ。そんな馬鹿なことがあるわけないだろう、タイムマシンを開発したといって、実物を見せられないなんて、絶対に騒動になるだろう? いくら何でもそれくらいのことは分かるよな}
 と言われて、
「そうだよな。どうしてそんな当たり前のことが分からずに、そんな風に思い込んでしまったんだろう?」
 というと、
「洗脳でもされていたんじゃないか?」
 と笑って言われたが、そういえば、あの発表の時、自分のまわりにいる人たちは皆洗脳されたかのように、顔色も悪く、何を考えているのか分からないと言った感じだった。
 それほど、タイムマシンの開発がセンセーショナルなものなのだろうと、思ったからだった。
 洗脳された人間は、まるで宗教において、洗礼された時と同じような感覚なのではないかと思えた。
 宗教にはいろいろなタブーが存在するが、タイムマシンの開発も同じようなものだといえるのではないだろうか。
 しかも、神話の世界の神のように、決して人間よりも偉いという存在ではなく、ただ、
作品名:無限の可能性への冒涜 作家名:森本晃次