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中二病の正体

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「平家の滅亡だね。平清盛は、福原の港を開いて、海外貿易や海外文化を積極的に取り入れようとしていたが、権力を握るために、貴族化してしまった。源氏は、東国節を味方につけるために、今までは土地を貴族や僧侶が手にしているという荘園制度というものを覆し、領主が農民に土地を保証する代わりに、戦争などの時には兵役と、税としての年貢を納めるという主従関係のハッキリとした封建制度が拡充したよね。これは、大化の改新と並んで、日本の歴史が、百年後戻りをしたといわれることがらだったんだよね」
 ということだった。
 確かに、この二つは歴史上でもターニングポイントとして習ったことだが、学校で習うのは定説であり、
「史実は正しかったんだ」
 ということしか教えてくれなかった。
「そおして、もう一つは、信長暗殺かな? 明治維新の坂本龍馬暗殺を口にする人もいるけど、坂本龍馬の思想はその後の明治の元勲によって達成されているからね。確かに明治初期は一部の人間によって腐敗もしかかったけど、それは坂本龍馬が生きていたとしても変わらないかも知れない。だけど、織田信長という男の存在は、彼一人がいるいないで、時代がまったく変わっていたという意味で、私は本能寺だと思うんだ」
 と、雄二はいうのだった。
 そんな時代を考えていた雄二も五月病に罹ったというのは、やはり、
「五月病は恐るべし」
 と言っても過言ではないのではないだろうか?

                自分を納得させる感覚

 そんな五月病に罹っていた雄二であったが、同じ頃、実は裕美にも異変が起こっていた。思春期である裕美は、少し言動もおかしなところがあるような気がしていたが、それは、大人になるためにはl、ある程度仕方のないところで、実は雄二も気にかけていいるところでもあった。
「最近の裕美が少し気になるところがあるんだ」
 というではないか。
「どういうことなんだい?」
 と聞くと、
「ハッキリと、どこが悪いというわけではなく、精神的に何かずれているような気がするんだ。話をしていても、急に違う話に代わってしまったり、かと言って一貫性のない話というわけではないんだ。どこか、偏った考え方に似ているような気がするんだ。気を付けてあげた方がいいとは思うんだが、どう話をしてあげればいいのか、よく分からないんだ」
 という。
「それはそうだよね。しかも今は思春期の時期なので、特に何を考えているか分からないところがあるだろうから、下手に入り込むと、噛みつかれる可能性がある。それで、もしそれを避けようとすると、相手に、自分が狂気になっているということを悟らせることになりかねないからね」
 と弘前がいうと、
「じゃあ、裕美は自分の行動の元が分かっていないということかな?」
 と雄二がきくので、
「おれはそう思うんだ。俺も思春期の頃、似たようなことがあったからな。しかも、自分は恥ずかしがり屋だったと思うので、何か自分に対して相手が違和感を持ってるとすれば、どうしても警戒してしまう、そうなると、こちらがその後、何を言っても相手に気持ちが伝わらないということもあり得るからな」
 と弘前は言った
「でも、お前はそのままおかしくはならなかったんだよな? ということは、裕美も放っておいても大丈夫だということになるのかな?」
 と雄二がいうので、
「それは何ともいえない。俺の場合は、自覚のようなものが少しはあったので、それ以上ひどくはならなかったが、一歩間違えれば、おかしくなっていた時期が続いていて、君の知らない俺になっていたかも知れないんだ。しかも、そうなっていたとすれば、俺たちが知り合うこともなければ、ましてや、友達になることもなかったかも知れない」
 と、弘前は言った。
「お前はそれをなんだと思っているんだい?」
 と聞かれて、
「ハッキリとは分からないが、思春期の中では大人になる過程においていろいろなことが頭をめぐるだろう? お前だって、思春期だった時期はあったんだからね。そういう時にどれか一つだけ、特化した考えだけが派生してくれば、そこまで心配することはないと思うんだけど、一つのことだけであれば問題ないと思うんだけど、他にたくさん派生していることがあると、少し気になるんだよ」
 と、弘前は答えた。
「どういうことなんだ?」
 と聞かれて、
「俺も実際にそんな状況になったので、俺なりに調べてみたんだけど、ただ、病気というわけではないだ。たぶん、精神的に不安定になっている時に、子供から大人になろうとして背伸びをしようとしたり、まわりを自分と比較してみたりした時に感じる矛盾や違和感が、自分を苦しめることがある。俺はそんな感情が別の意識を深めるんじゃないかって思うんだ」
 というと、
「どういうことなんだ?」
「これは、実際の病気でもなければ、学説でもないんだけど、中二病という言葉を聞いたことがないかい?」
 と聞かれて、
「ああ、聞いたことはあるんだけど、詳しいことは分からないんだ」
「それはそうだろうね。何しろ、ラジオで流行り出した言葉から端を発していて、ネットが普及してから、意味も少し変わってきているとも言われているからね」
 と弘前がいうと、
「そうなんだ。それが、子供が大人になる時の障害になるというのかい?」
 と聞かれて、
「障害というのとは少し違っているのかも知れないけど、障害というよりも、本当はちゃんとそれらの感情を感じて、それを自分の中でちゃんと消化することで、大人になっていくのだろうけど、それを解決できずに曖昧にしようとしているのかも知れないな。あるいは、自分に当てはめて考えるものなんだろうけど、自分に当てはめすぎて、理解できずに進んでしまうということが往々にして起こってしまうと、一気にたくさんの矛盾を自分で引き受けることになってしまう。それが成長という不安定な時期に自分を苦しめることになるんじゃないかって思うんだ」
 と弘前は言った。
 本当はもっといろいろな考えが頭の中にあるのだが、それ以上言ってしまうと、雄二自身が、何かの病気になってしまいそうで、少し怖かったのだ。
 雄二という男も、考え込むと抑えが利かなくなり、コントロールが難しくなることがある。そんな時、妹の存在が大きかったのだが、今回はその妹の話だったので、本当であれば、もっと話したいこともあったのだが、これ以上言ってしまい、気持ちを混乱させてはいけないと、弘前は感じたのだ。
 そんな状態でも、
「まあ、兄貴のお前がしっかりしてあげていれば、大丈夫なんじゃないか?」
 と言ってあげた。
 少し精神的にいっぱいいっぱいだったかも知れないが、下手にブレーキをかけすぎると、雄二の場合はまずいことにもなる、
 この場合の、
「お前がしっかり」
 という言葉は、雄二の中の自尊心を復活させるという意味でいいのではないかと思ったのだ。
 そんな雄二が、まさかとは思ったが、
「五月病」
 に罹ってしまった。
 五月病というのは、中二病とは違って、実際の精神疾患である。
 一過性のものではあるが、本人としては結構きついに違いない。それまでの自分を、一時の間、全否定する形になるのだから、
「うつ病のようなものだ」
作品名:中二病の正体 作家名:森本晃次