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夢を見る意義~一期一会と孤独~

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 最近では、そこまで波乱万丈な人生を歩んでいるような気がしていなくて、少し落ち着いてきているような気がしているのに、執筆意欲は、それなりにあるのだった。
 ということは、
「喜怒哀楽を感じていないと思っているけど、実際にはそうでもないのかも知れない」
 と思うようになっていた。
 それは、小説を書いていて、
「自分が小説を書き続けている」
 という思いにブレがないからだった。
 小説を書けるようになったのは、精神的に落ち着いている時ではなかった。どちらかというと、精神的に厳しい時で、失恋をした時ではなかったか。
 それまで人を好きになることはあっても、好かれることはなかった。それなのに、クラスの女の子で一人、坂崎を好きになった女の子がいた。その子はあまり目立つ女の子ではなく、いつも一人でいるようなタイプだった。普段から、気になっていたわけでもないのに、その子が、一時期やけにモーションを掛けてくる時期があったのだ。
 何かあったのかとは思ったが、まさか、自分のことを好きだと言い出すとは思ってもみなかった坂崎は、意表を突かれた思いと、好きと言われて嫌な気がするわけがないという気持ちとが絡み合っていた。
 だが、好きだと面と向かって言われると、それ以外の気持ちが浮かぶわけもなく、その言葉を素直に信じたのだ。
 ただ、接近の仕方があまりにも露骨だったのが気になった。どちらかというとおだてに弱く、好きだと言われれば素直に信じる方が、自分らしいと思っている坂崎のことだから、
「こんな俺を好きになってくれるんだから、俺も好きにならないといけないな」
 と思ったのだ。
 好きだと言われてビックリしたのは、確かに、自分に告白なんかしてくる女子などいるわけはないという思いが強かったのだが、まさかその相手が、自分のまったく意識していなかった相手だということに、戸惑っていたのだ。
 だから、好きでもない相手が自分のことを好きだと言ってきている。本当であれば、
「好きでもない相手なのだから、断ればいいだけじゃないか」
 というだけのことなのに、なまじ今まで女性に好かれたことなどなかっただけに、素直に好きになってくれたことは嬉しかった。だから、
「もったいない」
 と思うのだった。
「このまま付き合っていれば、好きになれるかも知れないのだから、ここでフッてしまうのはもったいない」
 と考えた。
 嬉しかったという感情に対して感じたもったいないという思いとは厳密には違っているのだろうが、これを同じだと考えると、余計に、
「もったいない」
 という感情を、素直に受け止めればいいのかが悩みどころであった。
 ただ、女性と付き合ったことのない坂崎は、好きだと言ってくれた相手に対して、どう接すればいいのか分からなかった。
 普通にデートに誘って、お互いに気持ちを話せるくらいになれるのが一番いいのだろうが、どうも、好きだと告白してくれたわりには、彼女の態度は警戒しているようだった。
 ひょっとすると、告白するまでが、彼女のすべてだったのかも知れない。
 別にこれから付き合いたいという気持ちを抱いているわけではなく、自分の気持ちを相手に伝えるだけで満足するという女性であれば、坂崎が考えていることはまったくの無駄だということになってしまう。
 これは後から分かったことであるが、彼女には好きな男性が実はもう一人いた。自分が本当に好きな相手がどっちなのか分からずに、二人に告白してみて、そのリアクションで判断しようと思っていたようだ。
 もう一人好きになった男子生徒というのは、活発な性格で、友達も、男も多ければ女性も多いという、タイプだった。
 告白されることも結構多く、その都度、皆フラれているようだったが、それを分かっているのに、告白する女生徒が絶えない。まるで、玉砕覚悟のようだった。
 つまりは、
「どうせダメなんだろうから、玉砕することで、あきらめがつく」
 と考えるようだった。
 だから、彼女も、坂崎に告白する前にその男子生徒に告白をして、しっかりとフラれたうえで、坂崎への告白だったのだ。
「坂崎君だったら、別に断るようなことはないわよ。それに、他に誰かを好きだというようなことなさそうだしね」
 と、彼女はそう言って、友達から背中を押されたようだった。
 ただ、その友達から、
「坂崎君のどこがいいの?」
 と聞かれて、
「人畜無害なところ」
 と答えたというので、完全に、坂崎は、
「滑り止め」
 でしかないのだった。
 その時坂崎は、彼女が先に本命にフラれているなどということは知らなかった。もし、知っていればどうだっただろう?
「バカにするな」
 とでも感じて、彼女に最後通牒を渡すことになったのだろうか?
 坂崎の性格からすれば、きっと、最後通牒を言い渡すに違いない。ただ最後通牒は、完全にフルというわけではない。どう言って、最後通牒を渡すことになるのだろうか?
 坂崎は、その後、彼女をフることになるのだが、
「バカにするな」
 というような感情にはならなかった。
 むしろ、自分が卑屈になる感じで、
「そりゃあそうだろうな。俺のような男が女の子から告白されるなんて、ありえるはずないもんな」
 と、言葉にしていうことで、自分を納得させようとしていたのだ。
 ただ、今回のは、自分が悪いわけではない。相手があまりの仕打ちだったことで、このまま彼女を許すことができなかったという素直な気持ちというよりも、もし、そこで許していたとしても、また同じことをされるのではないかと思うと、相手というよりも、自分が遭う被害に対して、冷静に考えた結果のことであった。
 ある意味では、結果を出すうえで、気持ちに余裕があったに違いない。どっちにしても、彼女をこのまま許して付き合い続けることは、自分にとって、いい結果になるわけはないと思ったからだ。
 ただ、彼女が悪いというわけではない。しいていえば、
「坂崎が滑り止めだった」
 というだけだ。
 滑り止めを卑怯だとは言えないような気がした。受験にだって滑り止めはある。ただ、滑り止めという制度を恋愛に応用していいのかどうか、滑り止めにされた自分としては、他の人がどう考えるのか、聞いてみたい気がした。
 ただ、勝手な想像は自由にできる。
「この感情を小説にしてみるのもいいかも知れないな」
 と感じたのだった。
 その頃、小説を書きたいと思い始めた頃で、まだ最後まで書いたこともなく、
「どうやれば、最後まで書くことができるか?」
 ということを模索している時期だったのだ。
 最初の頃は、原稿用紙を目の前において、家の机で、原稿用紙と睨めっこをしていた。何かを考えようと思っただけで、額から汗が出てくるような感覚だった。かしこまった格好が、自分には似合わないとも思えた時期だったのだ。
「小説なんて、そんなに難しいものではない」
 という思いと、
「いやいや、簡単にできるくらいなら、小説家の苦悩なんて、描くことはないだろう」
 という思いとがあった。
 ドラマなどで、文豪と呼ばれる小説家が、原稿用紙をグシャグシャにして、まわりに散らばっている姿であったり、編集担当者が、後ろにへばりついていて、
「先生、締め切り」