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少年の覚醒

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「いずれ、シュート練習ができるようになれば、それまでの練習の成果が認められたということだろうから、今は焦ることなく、言われたことに邁進していればいいんだ」
 と思うのだった。
 練習が終われば、他の部員も優しく接してくれて、
「今はつらいかも知れないけど、実際に皆と同じ練習に加わることができるようになると、それまで見えていなかったものが見えてくるわよ」
 と、先輩が教えてくれた。
 それを聞いていた他の部員も、何も言わず、
「うんうん」
 と頷いている。
 どうやら、彼女たちも自分が新入部員の時に、同じことを言われたのではないだろうかと感じたのだ。
 バスケットの練習というと、やはり、シュートに絡む練習が一番楽しい。だからこそ、最初の時にやらせてくれたのが、シュートだったのだろう。
 それに比べれば、他の練習はきついだけだった。
 特にバスケットというと、オフェンスだけではなく、ディフェンスも大事な仕事だ。他のスポーツのように、守備と攻撃の人間が別というわけではなく、バスケットの場合は、同じ人間が、瞬時にして、攻撃から守備に変わったり、守備から攻撃に変わったりしなければいけない。
 また、バスケットというのは、
「秒を争う競技」
 と言ってもいいだろう。
 決められた時間の中で、いかにタイムを使うかというのも作戦であったり、さらには、秒にまつわるルールも多い。
「何十秒以内に、ボールを取ってから敵陣に入らなければいけない」
 とか、
「何十秒以内に、シュートまでいかなければいけない」
 などというルールが存在する。
 サッカーやラグビーのような屋外の広大なコートではない分、秒を争うルールが多いのだろう。
 したがって、バスケットというのは、他のスポーツに比べて、俊敏性が求められる、すぐに攻守交替するのもそうであるし、機敏に動かないと、相手の守備を抜くことができないということもあって、フェイントなども大きな武器になったりするのだ。
 そのために、重要なのが、
「下半身の強化」
 である。
 下半身を強化することで、俊敏性も増し、シュートの精度も上がってくる。
 守備に囲まれながらシュートを打つのだから、ゴール下の練習のように、狙いすましてゴールを狙うようなことは基本的にはできない。動きの中で、相手にボールを奪われないようにしながらシュートを放つか、パスを受けて、瞬時にシュートを放つかしかないだろう。
 しかも、シュートが決まってから、そこでプレイが中断するわけではない。ゴールのネットから落ちてきたボールを奪ってすぐに、攻撃に転じるのだ。
 バスケットは、一本で二点、三点という点数が入るので、三桁の点数が入ることも珍しくはない。それだけに目が離せないスポーツでもあるし、見ていて楽しいのかも知れない。
 アメリカでは、野球、アメフトなどと並んで、三大プロスポーツの一つである。しかも、夏の間は野球のプロとして、冬では、バスケットだったり、アメフトのプロとして活躍している選手も少なくない。
 実際に、高校、大学ではすべてのスポーツをやっていて、すべてに秀でていることで、将来、それぞれのスポーツでドラフトに掛かる選手もいるだろう。
 きっと、そのための、オールラウンドプレイヤー用の契約形式も確立されているのかも知れない。
 いろいろなスポーツを見てきたつもりの聖羅先生であったが、一番のスポーツはやはり自分がやっていたバスケットだと思っている。
 練習もきつく、スポーツマンシップというものに関しても、かなり厳しかった。
 それは、当時のコーチが実業団のチームで身に着けた感覚だったに違いない。
 自分も今、同じ立場なのだと思っているが、実際には相手が中学生と、小学生で違うのだ。
 しかも、小学生では部活と言っても、対外試合ができるというわけでもなく、あくまでも練習しかできない。そんな子供に、教えることは限られてるが、できるだけスポーツマンシップくらいは教えてあげたいと思っていた。
 中には、中学に入っても、バスケットを続けたいと思っている人もいるだろう。
 もし、小学校での部活の延長が、中学の部活のようなものだと思うと、それは大間違いである。
 中学のバスケット部からすれば、小学生の部活などは、遊びの延長でしかない。
「中学の部活も、こんなものだ」
 と思って入部すれば、まったく期待外れで、せっかく入部したのに、すぐにやめてしまいかねないだろう。
 そんなことになってしまっては、せっかく小学校で部活をしている意味がまったくないというものだ。だから、せめて、小学生に対してでも、少しは厳しさというものを教えておく必要がある。
 それを、保護者や教育委員会から、
「行き過ぎだ」
 と言われるかも知れないが、それはしょうがないことだと思うようになっていた。
 教育委員会は、あくまでも、保護者から何か言ってこなければ動かない。だから、保護者だけを気にしていればいいだけだった。
 バスケットボールというのは、基本的に、
「スポーツは誰にでも平等だ」
 と言われるが、肉体的に決定的な差別がある。
 それは身長の問題で、やはり背が高い選手は、同じ運動能力であれば、重宝されることだろう。
 ボクシングなどでは、ライト級、フェザー級などと言って、体重により階級が違うスポーツもある、
 しかし、ボクシングなどは、厳正な計量測定が試合前にあるので、過激な原料を重ねて、それにパスしなければ、試合が組まれていても、実施されることはない。計量が終わって、少ししてからの試合となるので、計量にパスしたからと言って、いきなり食事をたくさん摂るということはできない。
 したがって、試合は栄養が十分に足りない中で行われることになる。これも、どうかと思うのだが、一応は公平だと言えるのだろう。
 それでも、他のスポーツなどでも、明らかに身体的に違う相手であっても、戦わなければならないものもある。
 相撲などはそうであるが、大相撲などを見ていると、小兵の力士が、大きな力士を倒すことがよくある、それだけ小回りが利いて、技が鋭ければ、相手を倒すことができるのである。
 決まり手の中には。
「猫だまし」
 のような、いきなり相手の出鼻をくじいて、戦意を一気に喪失させるものもあり、その一瞬の隙をついて、相手を倒すということも、相撲の醍醐味でもあるのだ。
 バスケットでも、小兵が、ちょこまかと動き回り、ゴール下にいるエースにうまくパスをすることで、得点を挙げることもよくある。
 自分が得点を挙げるわけではないが、立派なアシストである。
 そういうアシストに徹するような選手が、本当のプロではないかと思い、そういう選手をたくさん育てたいと、どこのコーチも思っていることだろう。
 生来背が高く、シュートセンスに長けている選手は、スカウトが見つけてきてくれる。入部してその実力を引き出してあげられるのが、コーチとしての本懐だと言えるのではないだろうか。
 実際にプレイをしていると、背が高い選手は、動きが鈍い。しかし、それも無理もないことかも知れない。
作品名:少年の覚醒 作家名:森本晃次