小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ぼく、アッシー

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

彼女さんとの暮らしぶりを語ろうか。

あれは 風が少しひんやりした頃だった。春うららな日だったらしいが カアチャンがいっぱい、ほんと、いっぱい卵を産んだ。初夏になる頃には 300ほどの兄弟は散りぢりになったけど 別に寂しくはない。一緒に居た7日間でお互いに初めての脱皮を見せ合い 励まし合ったからいいんだ。

でも、ここに来て、やっぱり恐かった。
食べるものにありつけるかな?って。
でも そんな心配は わりと早く解消できた。
築年数もほどほどなこの住まいの環境。たまに彼女がスプレー缶を持って追いかける姿。
奴らはいる! ぼくは幸せ者だ。運がいい。G-コックから彼女を守るんだという使命感まで感じている。

そういえば、彼女が 話していた。
悲しい知らせだ。
その頃引っ越してきた隣のおばさんが 玄関の脇に黒い変なものがいると キッチンペーパーを抱えて追いかけまわして捕まえ 踏みつぶしていたものを彼女に見せたらしい。
「これは 蜘蛛ですよ。ちょっと不気味ですよね。お嫌いならば仕方ありませんが、ゴキを取ってくれますよ」
「あらそうなの? ここらによく見るから気持ち良くなくて」
「毒はないですから心配はないですが この建物、家の中にも蜘蛛はわりと出ますよ」

彼女は、G-コックは とことん追い詰めやっつけるが、ぼくには「これこれ ここはお邪魔です」と冊子で掬われ玄関土間に連れて行かれたり、追い立てられて棚の横に逃がしてくれたりするだけで スプレーを掛けることも圧死させることもしないでいてくれる。

好きなのかなぁ・・・ぼくのこと。

「朝の蜘蛛はやっつけない。夜の蜘蛛は働きもの? ん。働け!蜘蛛か」なんてぼくを見つけるとそんな声を掛けてくれる。

やっぱり・・・
好きなのかなぁ・・・ぼくのこと。

でも、彼女さんが ぼくのような奴を捕まえて外に放り出したんだ。
ヤツの名は『ザトウムシ』 ぼくの仲間(蜘蛛)ではない。紛らわしいクモガタ科。
ヤツめ蜘蛛型か!? 豆粒のような胴体に ぼくらの生態の特徴である8本のほっそり長い足がついている。
さすがに 彼女さんだ。それに気づいてヤツを追い払ったんだ。凄いや!あっぱれ!

作品名:ぼく、アッシー 作家名:甜茶