小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ぼく、アッシー

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
「おっと・・。もう!そんなところに居ないで」
そう言いながら ぼくを跨ぐ彼女。
「暗い所をもそもそしていたら危ないよ」
振り返って彼女は ぼくを見下ろし微笑んだ。

一瞬 肝が冷え その場にすくんだまま動けなかったが、彼女が ぼくの際(きわ)の床をとんとんと指で叩いた。かすかに伝わる振動にぼくは、申し訳なさそうにこそこそっと食器棚の横に入り込んだ。

ありきたりで平凡。そんな空間でもぼくは毎日が楽しい。

そうそう、ぼくのことも少し知ってもらおうかな。
自己紹介なんてしたことないからうまく伝えられるかな。
ぼくは、この住まいの何処かで生まれたはずだけど、もしかすると、勝手に侵入したと思われているかもしれない。
自慢は この足。8本あるけど 蛸じゃないよ。それにぼくらは 昆虫ではないんだ。
ぼくら特有の生態なんだ。
何頭身だろう。一番長いので体の4倍くらい。まだまだ成長中なんだ。
一度っきり見かけたことがあるオジサンは ぼくよりずっと大きくて 長くがっちりした体つき。足を左右に伸ばして たたずむ姿は10センチくらいあったよ。
かっこいいなぁ。ぼくも絶対にああなるんだって こころに決めたんだ。
でも 恐そうに見える容姿だけど 本当は ぼく・・・臆病なんだぁ。悪さもしないよ。牙をむくのは 獲物を狩る時だけ。 こう見えて人にとっては 益虫なんだよ。
人が言うには『アシダカグモ』って呼ばれている。どう?ボクの足長いでしょ?
でも、間違わないで「あしながぐも」じゃないよ。どっかの乱暴な蜂と一緒じゃないからね。

【クモ目アシダカグモ科アシダカグモ属アシダカグモ】

此処ではアシダカグモって呼ばれているけど バナナスパイダーなんて呼ばれている所もあるんだって。でも、あのスパイダーマンのように糸は使わない。捕食は徘徊型だから あちらこちら網で汚さないから安心して一緒に居させてね。

ということで ぼくのことは これから出来事としてまた知ってね。
ああ、早く成虫になりたいなぁ。まだぼくは3回しか脱皮してないから幼虫らしい。
オジサンみたいになるには 9回は脱皮しなければいけないんだ。先は長いよ。

でもね、この前、キッチンカートの裏でG-コックの卵を見つけて始末したんだよ。

もちろん、人知れず・・・ ふっ! 手柄はひけらかさないぜ! 

作品名:ぼく、アッシー 作家名:甜茶