ぼく、アッシー
「あれ?ここに居たの?」
え? 彼女があっちの方でぼくのこと呼んでる? いや違う・・・と思うけど
おぉーい、こっちだよ。ぼくはココだよぉー
誰に声かけているんだ?
「いつもの個より 小さいねぇ。また違う個なんだ。この家何匹いるのかな?」
あ、あれは イトコの・・・かなぁ
そうなんだ。ぼくらは 決めているわけじゃないけど けっこう生活領域が広くて、だいたいひと部屋に 一個体が行動している。
じゃないと 徘徊型だから 捕食の取り合いになってしまう。
でもね。捕食に成功していても 新しい獲物が 見つかるとそちらへ気が移っていってしまう。
まあ こんな習性もご愛嬌さ。
おっと 言い忘れた!
ぼくらはね 毒はないけど 捕食には消化液を使うんだ。消化液を対象に注入するんだけど 強い殺菌能力があって、自身で云うのもなんですが スラっと自慢の足の手入れにも使うんだよね。だから ほら見て バイ菌もないでしょ?
もちろん テーブルの上も歩かないように心がけてるし、人様の食品には興味ないですから G-コックやフライブーンのように病原菌媒体にもならない。
でも もしぼくらに触ったら しっかり薬用ハンドソープで手洗いしてね。
彼女なんて 仇にでも会ったくらいゴシゴシ洗ってるよ。
まったく!まいっちゃうなぁ
彼女のいるこの住まいにぼくだけじゃないけど きっと彼女は ぼくらの徘徊を見守ってくれていると思う。
だから、彼女が G-コック出没に見せる恐怖と緊張と そして、狂気な殺意の表情をさせない為に ぼく そして、ぼくの仲間が 元凶の奴らをやっつけるんだ。
彼女の優しい笑顔を守ってあげたいんだ。
ぼくは、アシダカグモのアッシー。
彼女の都合のいいヤツでいい。
持って生まれた複数の生態のユニットで捕食向上を目指すぞ!
・・・ってぼく臆病だからなぁ
―了―