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孤独という頂点

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 というものが起こりかけないと言えるのではないだろうか。
 この場合は、私恨を残した人間が、その能力を巧みに生かして、教祖となり、信者としての部下を得て、信者からその資金を巻き上げることで、組織を大きくしていったことから起こった問題だ。
 そもそも、社会的に問題がなければ、このような宗教団体に入信する人もいないだろう。宗教団体として大きくなってきた理由は、その当時の社会背景に大きな問題があったからではないだろうか。
 そもそも、そのような教祖という一人の悪魔を作り出したのも、彼が置かれた社会的な立場から来ているのではないかと思うと、果たして、警察や公安なので、どこまで分かっているというのだろうか?
 そのことを記載した記事もあまりなければ、記録も残っていない。
 それは本当に調べたが分からなかったのか、調べて分かったが、
「これを公表すると、社会的影響が大きすぎて、どうしようもない状態になってしまう」
 ということで、公表できないということなのか、それを考えると、恐ろしいことだと言ってもいいだろう
 放っておけば、
「第二、第三のテロ事件」
 が起きないとも限らない状態であっても、公表できないというのは、どういうことなのか、政府や警察、公安が何を恐れているのか、考え始めるときりがない。
 作者の考えすぎだと言われればそれまでだが、何しろ宗教が絡んでいただけに、恐ろしい。宗教に対して、結界のようなものが、社会に蔓延はしていたが、目に見えるようになったのは、この事件からなのかも知れない。
 そんな頃、川崎洋二は、まだ大学生だった。中学高校と真面目一筋というか、まわりのチャラい連中を冷めた目で見ていたと言ってもいいだろう。特に、中学の頃から、学校のトイレでタバコなどを吸っている連中には嫌悪感しかなかった。
「何が楽しくて、タバコなんか吸うんだ?」
 と思ったものだ。
 やはり刑事ドラマの影響が大きいのか、洋二は、
「専売公社の回し者か?」
 と思っていた。
 ちなみに、当時はまだ日本たばこ産業が、専売公社と言われ、国営だった頃のことである。三公社などと言われ、
「電電公社がNTTへ、そして、国鉄がJRへと横文字に変わった時代である」
 電信電話などは、たくさんの企業が参入してきた。
 当然、ネットが普及してきて、軽量化でポケットに入るくらいの携帯電話ができてきたからで、それまでの携帯電話というと、肩から下げる形のお弁当箱のようなものだったのだ。
 今ではタバコを吸う人間自体がほとんどいないので、あまり感じないが、やはりタバコを吸っているのを見るのは、当時の連中を見ると、
「人が吸っているから自分も吸っているという、主体性のない連中ばっかりだ」
 としか思えなかった。
 大学に入ってからというもの、それまで暗かった自分を一変させようと、友達をたくさん作ったものだった。
 友達がこれほど簡単にできるものだとは思ってもみなかった。声をかけるだけで、それだけで友達だ、きっと、相手も自分と同じように、大学ではたくさん友達を作ろうと思っていたに違いない。
 皆苦しい受験戦争を戦ってきたのだ。確かにまわりは皆敵だらけなのだろうが、しょせんは自分の努力の問題である。
「敵はまわりではなく、自分自身だ」
 ということを、初めて思い知った時でもあった。
 それだけに、余計に、まわりのチャラい連中が、情けなく見えてしかたがなかった。
「何が楽しいというのだ?」
 と思ったが、受験勉強をしていると、一人が好きだという感覚も出てきたのだった
 だが、大学に入ると、そんな気持ちを忘れてしまっていた。大人になって、さらに年を取って、中年から初老になりかけた頃、子供の頃に戻った気がした。
「一人が気楽でいい」
 という思いは、受験戦争の真っただ中にいる時に感じたことだった。
 さすがに、受験勉強が楽しいなどと思ってもいなヵったが、寂しさもなくなってきた。
 最初の頃は、友達と一緒に勉強したりしていたが、お互いにレベルも違えば目指す先も違う。どちらかが犠牲になるような気がすると、人との勉強は億劫でしかなくなっていった。
 だが、大学に入ってしまうと、その時の苦労も、
「喉元過ぎれば熱さも忘れる」
 と言わんばかりで、ついこの間までの苦労を忘れてしまっていた。
 大学にもなかなか通わなくなり、楽しいことに逃げてしまいがちだった。
 しかし、二年生の時、まわりにつられて遊んでいると、いつの間にか自分だけが置いて行かれていることに気が付いた。
 まわりはそんなことは分からない。皆と同じような行動しかしていないのだ。
 要するに、洋二は、
「要領が悪かった」
 と言えるのではないか。
 他の連中と同じ勉強方法ではないのに、まわりに合わせるのだから、勉強しても身に入る内容は雲泥の差であった。
 勉強していなかったわけではないが、修得単位の違いはそこにあったのだ。
 真面目に暗記して、すべてを覚えようとする。それに比べてまわりは、いろいろな情報を先輩などから仕入れて、どこが試験に出るかなど、対策を立てて、そこを集中的に勉強する。
 教授も生徒を留年させようとしているわけではない。卒業させたいのだ。要領よくふるまう生徒に贔屓的なのは、大学というところの特徴でもあろう。
 社会に出れば、そういう要領のいい人間が出世をする時代だ。大学の成績がものをいうというのも、そこから考えれば、理屈は通っているに違いない。それでも、何とか在学中に留年することもなく卒業できたのは、ちゃんと努力をしたからだった。
 平凡であったが、何とか地元企業では、名前の通った会社に就職をすることができた。成績が平凡だったので、その他大勢の就職枠だったのだろう。まずは、支店での下積みというところか、会社は、地元地方の各県に、一つずつ支店を持っているようなところだった。
 最初に赴任された勤務地は、それまでの中途半端な都会から比べれば、明らかに田舎で、カルチャーショックを感じないわけにはいかなかった。最初は、倉庫での研修、次は事務系の研修。そのうちにお盆前の繁忙期になると、研修というわけにもいかず、アルバイトのような仕事をさせられる感じだった。
「九月になったら、いよいよ営業の見習いという形になるので、期待しているよ」
 と支店長は言っていたが、その舌の渇かぬうちに、
「いやぁ、本社から転勤命令が出たんだよ。申し訳ない」
 と言って誤っている支店長を見ると、急に力が抜けていくのを洋二は感じた。
 転勤になる支店とは、二つ隣の県で、こちらも、ここに負けず劣らずの田舎であり、自分にとっては初めての町だった。
 転勤してみると、
「うちの会社は、最初の半年間は研修期間で、研修が終わると、その後が正式採用になるんだけど、支店によっては、新人をほしいというところもあるので、再度、入社半年で、勤務地がシャッフルされることがあるんだよ」
 と、赴任先で課長からそういわれた。
 支店長クラスになると、会社の内情にかかわるような話はしてくれない。課長クラスが支店長の意を汲んで話をしてくれたのだろう。
 その支店は、最初こそ、
「こんな田舎で、何が楽しくて」
作品名:孤独という頂点 作家名:森本晃次