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孤独という頂点

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 予備軍も加えたら、三人に二人くらいは、まともな結婚生活とはいえないのではないか。本当の円満夫婦などというのは、この世に存在するのだろうか?
 そう思うと、この世に愛なんて存在しないとも思えてきたが、それでは寂しすぎるような気がした。
 だったら、一期一会の恋であっても、その瞬間を現実だと思えれば、それだって愛ではないかと思う。
 何も愛というのが、継続性がなければいけないということはないのではないか。
 本当に愛と言えないと思っていても、そこに、同じ感性であったり、パッションが存在すれば、それこそ愛と言えるのではないだろうか。
 転落人生を歩んでいるはずの洋二だったが、四十代も半ばを過ぎた頃から、そんな風に感じるようになってきた。
 ちょうど、離婚してから少しして、趣味で小説を書き始めた。それが四十歳を超えた頃から楽しくなり、最近では毎日のように書いていて、書かない日があれば、気持ち悪いくらいであった。
 書いている内容は、オカルトやあミステリーである。
 中学の頃に好きだった昭和初期のミステリー、それから、社会人になってから少しして、
そう、恭子と別れて少ししてくらい、もっといえば、梨花と付き合い始めてくらいの頃、山沖君と一緒に言っていた例のスナックのお客さんで、四十代前半くらいの主婦の人がいたのだが、その人が教えてくれた小説家の話が面白くて、その作家の影響を受けたのだった。
 オカルトというか、奇妙な物語として、
「奇妙な味」
 というジャンルなのだそうだが、
「俺もこんな作品が書ければいいな」
 と思っていた。
 だから、その人の作品を目指してずっと書いてきた。今でも目標である。ずっと小説を書いていると、恋愛などがくだらなく思えてくるくらいだった。
 ちょうどその頃になると、新聞や週刊誌などの広告で、
「原稿をお送りください」
 という文句が騒がれ出した。
 それまで小説家になりたい人は、文学新人賞に応募して入選するか?
 持ち込みで原稿を見てもらうかしかなかった。
 後者は、そのほとんどに可能性はなく、コネでもなければ、持ち込んでも作者が帰った瞬間に、原稿はゴミ箱域というのが実情だった。
 だが、この宣伝では、
「原稿を添削してお返しします」
 と書かれている。
 洋二はその原稿を送ると、なるほど、添削して却ってきた。しかも、その内容はまるでプロにでも読んでもらったかのようだ。新人賞に応募しても、入選できなければ、添削どころか、
「応募の審査に関しては、一切お答えできません」
 というほど、密室での合議のようだった。
 今でこそ、審査の仕組みは皆が周知のことになっているが、それも、、どこまでが本当だか分かったものでもない。
 投稿原稿を実際に出版社が読んで、批評をして返してくれるのだが、そこには、出版社からの提案が入っていた。
「あなたの作品はいい作品なので、出版社も半分お金を出しますから、本にしませんか?」
 というものであった。
 実際には、数百万かかるものであって、普通であれば、手を出せるものではない。それでも、本にしたいと思っている人は、バブルが弾けて、仕事人間ではいられなくなったことで、サブカルチャーや趣味に没頭する人が増えたせいで、
「にわか小説家」
 が増えたのだ。
 そんな連中をターゲットにしてのこのやり方は、実にうまいものだった。
 一気に本の発行部数は、新興出版社であるにも関わらず、すぐに日本一の発行部数になった。いかに本を出したいと願っている人が多いかということだろう。
 だが、メッキはすぐに剥がれるもので、出版社が自転車操業であることが分かったうえに、最初の話と違って、有名書店に自分の本が置いていないことが分かった出版に乗った人が、裁判を起こす。一人出てくれば次々に出てきて、あっという間に、
「詐欺商法」
 と言われ始めて。あれほど一世を風靡したこの業界だったが、あっという間にすたれてしまった。
 自転車操業が破綻すると、あっという間に破産に追い込まれ、業界では、二番煎じとしていくつも出てきた出版社が、ほとんど潰れてしまった。
 その間の盛衰に要した時間は、五年もなかったであろう。
 最後は、本を出した作家に対しての、
「救済の会」
 なるものが立ち上がったりして、完全に社会問題になってしまっていた。
 自転車操業もここまでくると、どうしようもなくなっていた。
 そのおかげで、あれだけ、
「小説家になりたい」
 あるいは、
「本を出したい」
 と思っていた人が小説を書くことから遠のいていってしまった。
 それでも、前から小説を書きたいと思っていた人たちが残った形で、それからは、元手のかかる、紙媒体の書籍という形ではなく、インターネットを使った。SNSと呼ばれる部門で、
「電子書籍」
 と呼ばれるものが主流になってきたことで、
「無料投稿サイト」
 に自分の作品を乗せる人が増えてきた。
 最初は出版社の詐欺にひっかかりそうになったが、幸いなことにお金がなかったことで騙されずに済んだ洋二だったが、今ではSNSを使っての作品発表ということを中心に活動するようになった。
「ただで、小説を発表できるのだから、これに越したことはないよな」
 と思うようになったのだった。
 趣味に没頭できるようになってからというもの、少し人生に対して気が楽になってきた。だが、実際の性格は若干頑固になっていった。
 というの、自分が今まで、
「とにかく我慢してきたので、それが今は後悔の念にとらわれている」
 というものだった。
 というのは、言いたいこともいえなかった時期があったと思っているからだ。
 離婚した時だって、嫁に対してなのも言えなかったことが原因だったではないか、確かに相手が何も言わないことを、
「便りがないのはいい知らせだ」
 という違った解釈をしてしまったことが原因だったのだが、それは自分が相手と話をする勇気がなかったからだと後になって気づいたのだ。
 その時から、
「思ったことは口にしないといけないんだ」
 と思うようになった。
 口にしないと我慢できなくなって態度に出てしまう。そして相手に非があると思うと、まくしたてるように自分の正当性を訴えてしまう。
 しかし、世の中というのは、おかしなもので、どんなに正当性を訴えても、相手が悪いのだとしても、ちょっとやり方を間違えただけで、こちらが悪になってしまうこともよくあるというのも、この世の理不尽さを示している。
 世間で騒音が激しいからと言って、自分だけで訴えて、騒音の元を壊してしまったとすれば、それは、理由のいかんに関係なく、
「器物破損罪」
 ということで、犯罪を犯したことになってしまう。
 いくら正義であっても、正義だけを主張すると、悪者にされるということだ。
 洋二はそんな自分が嫌で、逆らいたい時はあからさまに差からようになった。いわゆる、
「自粛警察」
 のようなものであった。
 自粛警察というのは、令和になってから、伝染病が流行った時に分かることであるが、ある国のある都市を中心に全世界に流行り出した、
「正体不明のウイルス」
 が原因で、世界的なパンデミックに陥ったが、その時、日本国では、
作品名:孤独という頂点 作家名:森本晃次