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正夢と夢の共有

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 そもそも、今の民放は昔とは違って、急激に変化している、それは、きっと、スカパーなどの有料放送が増えてきたからだろう。スカパー契約をしている人は、何を好き好んで民放を見るかというものである、有料放送と民放の一番の違いは何だと思う?
 それは、歴然とした回答だった。
「民放はスポンサーが命だ。つまり番組の制作は視聴者のためではなく、お金を出してくれるスポンサーの意向に沿っているかどうかということが問題なのだ」
 ということである。
 有料放送にもスポンサーというものはあるが、それよりも、収入源は、視聴者が払う視聴料である。民放のように、視聴料がいらないところは、スポンサーからの収入しかないのが、民放局だ。当然、視聴者そっちのけと言ってもいいくらいの番組になるだろう。
 特に有料放送ができてから、顕著に感じられたことだろう。それゆえ、視聴者の、
「民放離れが加速している」
 というものだ。
 しかも、今はユーチューバーなるものもあり、スカパーですら、危機感を感じていることであろう。
 ネットでは、個人が発信者だから今までにない、新鮮さがあるのであろう。

                  最年長と最年少

 そんな中で晴美は、臨時ユニットに参加することになった。
「事務所を越えての新ユニット、テンパイガール」
 というグループで、五人編成であった。
 ここでいうテンパイというのは、
「マージャンなどでいう、リーチのようなものという意味と、もう一つは、天拝、つまり、点を拝むという意味」
 の二種類から名付けられた。
 前者は、
「リーチというと、公開しているので、相手に悟られやすいが、自力で引くこともできるが、テンパイというのは、リーチを含んだところで相手が振り込んでくれるという他力本願も含めたオールマイティな手段を表す。つまりは、目的達成という意味で、あらゆる努力を惜しまないという意味が込められている」
 ということであり、後者の方は、
「神頼みという意味合いもあるが、それだけではなく、天拝の儀式に用いられる能の舞台やその踊りのようなイメージをコンセプトにしたアイドル」
 ということであったのだ。
 そのため、ミュージックビデオなどでは、どこかのお寺や神社、歴史的な建造物の近くで撮影されたものを用いた。衣装も、十二単を模したものだったり、貴族女性の衣装だったり、もちろんレプリカであるが、それらを着て行うパフォーマンスは、それなりに人気があるようだった。
 普段はみんな、それぞれの事務所でそれぞれの活動をしていたので、皆が集合して、コンサートというようなことはなかなかなかった。
 最初の頃は、人のコンサートの前座的な地味な活動を繰り返していたので、皆それぞれ、このテンパイガールズを、副業のようなイメージでしかとらえていなかった。
 そもそも、臨時に結集したユニットであり、出資してくれる会社の意向で始まったものだったのだ。
 彼女たちが選ばれたのも、出資会社の中にいる、
「自称アイドルヲタク」
 と呼ばれている人のチョイスだったようだ。
 顔の好みだったり、ポスターのイメージによるものが大きく。実際にパフォーマンスを見て選ばれたわけではない。言い方は悪いが、
「適当に選ばれたメンバー」
 だったのである。
 そんなことを、メンバーは知る由もなかった。知っているのは、彼女たちのマネージャーくらいなのだが、彼女たちに対して、皆よそよそしいくらいに遠慮していて、それだけでも、
「何か怪しい」
 と勘のいい子は悟ったことだろう。
 残念ながら、晴香にはそこまで感じるだけの鋭さはなかった。しかも、おだてに弱いタイプなので、マネージャーとしても、扱いやすいと思っていたことだろう。
 ただ、メンバーの誤認はそれぞれに仲が良かった。ほぼ初対面のメンバーで、皆ほとんど知られていない面子だったこともあって、却って仲良くなれたのだ。みんな無名なこともあって、上を目指そうと思っている人にとっても、今回だけの特別な活動だと思っている人にとっても、今までまわりはみんな有名な人ばかりだったこともあって、気を遣ったり遠慮ばかりしていないといけなかったりしたのだが、そんな気遣いは一切いらなかった。
 メンバーで一緒にいる時は、まるで女子会のノリだった。特に、晴香以外のメンバーはみんな地下アイドル出身で、二人は、半ば強引に卒業させられたり、一人は、スキャンダルによって、クビになったり、もう一人は、学業に力を入れている間に、あっという間に隅っこに押しやられ、自分から辞めなければいけないところに追いつめられることになってしまったという、
「苦労や挫折を嫌というほど味わった」
 という、そんな人たちだった。
 晴香は地下アイドル出身ではなかったが、一度挫折を味わった人には、晴香のことが見えているようで、晴香は自分のことを話さないが、
「彼女なりの挫折や、紆余曲折による、波乱万丈な人生を味わってきたんだろうな」
 とメンバーはみんな感じているようだった。
 その雰囲気が伝わってくることから、晴香は嬉しかったのだ。
 そんな誤認グループの中で一人、晴香のことをいつも見ている女の子がいた。
 五人の中では一番最年少で、まだ、十五歳だという。八歳も離れていると、話が通じないのではないかと思い、晴香のようでは遠慮して話しかけることはなかった。もっとも、他の女の子にもこちらから話しかけることはなかったので、実際にみんながどんな感じなのか分からなかった。やはり自分以外がみんな地下アイドル出身で、下積みを知っているというところからの遠慮があったのだろう。しかも、最年長ということもあり、お互いに勝手に、
「話が通じないんだろうな?」
 と思っていたのだ。
 その子は名前を、仙崎みのりと言った。彼女はおとなしそうに見えることで、年齢が十五歳と言われて、
「えっ、もっと上かと思った」
 と皆から言われるという。
 それを本人はあまりいい気持ではなかったようだ。実際の自分は、まだまだ少女だと思っていたので、アイドルになったのであって、大人っぽく見られるというのは本意ではなかった。
 どうしてなのかと聞いてみると、
「だって、若いうちから落ち着いてるって言われたら、年齢がかさんでくるうちに、どういう態度で臨めばいいか分からなくなるでしょう?」
 と言っていた。
 なるほどそうだ。
 確かにアイドルということになれば、年相応に思われる方がいいのかも知れない。だが、年齢と実際のギャップとを売り出そうと思っているのだとすれば、目論見が外れたと言ってもいいだろう。
「私のような年上を意識しているところが、年齢よりも高めに思われる理由じゃないかしら?」
 というと、
「私、同年代の人とあまり話をするのが苦手なんです」
 という。
「それは女の子という意味?」
 と聞くと、
「そうじゃないんです、男女ともに年上が気になるんです」
「男の人の年上に憧れるのは分かるけど、じゃあ、女性に対しても年上が気になる理由があるのかしら? 自分のことを幼く見られるのを嫌っているという反面があるから、年上に憧れを持つというような感じじゃないのかな?」
 というと、
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次