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正夢と夢の共有

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 二十三歳という年齢を感じさせない雰囲気であるが、しかし、よく見ると大人の雰囲気を醸し出している。
 そんな彼女の様子を見ていたスタッフたちは、
「彼女こそ、新しいアイドルの形なのかも知れない」
 と思った。
 歌を歌わせてもうまいし、パフォーマンスもしっかりできている。グラビアアイドルとしてもいけると踏んだプロデューサーは、最初のうちは彼女になんでも経験させているようだった。
「デビューが結構な年齢なだけに、短い間に少しでも、いろいろ経験させたいと思ってね。でも、彼女には、たぐいまれなき才能が潜んでいて、彼女はまるでアイドルになるべくしてアイドルをやっていると言ってもいい逸材なんだよ」
 と言っていた。
 ドラマ出演も結構早い段階で決まっていて、最初は、バーターだったが、それでも、事務所と撮影現場との交渉がスムーズにいったのは、その事務所にそれなりの力があったということだろう。
 アイドルやタレントが売れるのには、事務所の力が大いに左右するとも言われている。どんなに有望なタレントでも、事務所が弱ければ、下手をすれば、共倒れになってしまうこともある。
 それを思うと、晴香は事務所に恵まれていたといってもいいだろう。
 彼女には、枕営業など必要なかった。なぜか、プロデューサーやドラマ制作の主要人物の、枕営業の担当と言われているような人たちが、晴香を所望することはなかった。
 だからと言って、彼女を使ってもらえないというわけではなかった。脇役ではあったが、ちゃんと主要な役にも抜擢してくれているのだ。
 しかも、
「まだ新人で、ここまでの役は破格だ」
 と言われるほどで、口の悪い連中は、
「枕営業だろう」
 と言っていたが、実際にはそんなことはなかったのだ。
「彼女とは、床を共にするという感覚はないんだ」
 と言っていたが、それは、彼らならではな発想であり、それだけ、
「いろいろな女を見てきて、大体分かっている」
 ということなのだろう。
「彼女は、マグロな気がするんだ」
 と言っている人がいた。
 またある人は、
「抱いているところをどうしても想像することができない」
 と言っていた。
 それは、興奮しないということを言っているのと同じである。
「だけど、彼女には溢れる魅力があるんだ。たぶん、ラブシーンを撮らせると、映像では興奮させられるかも知れない。きっとそれだけ彼女の演技がすごいということを表しているんだろうね。だから、俺は彼女を使い続けるような気がするんだ。名わき役としてね」
 と言っている監督もいた。
 彼女が二十一歳になるまで、どんな生活をしていたのかということを知っている人は少なかった。
 彼女が学生時代から、大人っぽいところがあり、
「まわりの男性を寄せ付けないという雰囲気があった」
 と、高校時代の彼女を知っている人からは、皆口を揃えて、同じことを言うのだった。
「私の高校時代? 忘れたわ」
 と、一度雑誌の取材で昔のことを聞かれた時にそう答えた。
 その時の彼女は、公式のインタビューや撮影が終わって、雑談の時に答えた受け答えだった。
 インタビューを行った記者も、さすがに本番のインタビューとの違いにビックリしていたようだが、雑談になると豹変する人も少なくないので、そこまではビックリしなかったが、他の女の子は、どこか蓮っ葉な雰囲気があるにも関わらず、彼女にはそういうイメージはない。
「いつでも、真剣に答えているようだ」
 というのが、彼女の雰囲気だったのだ。
「そんなに前じゃないでしょう?」
 とお世辞を込めて記者は聞いたが、
「期間の問題ではなく、昔の自分と今の自分とは違うんだという感覚なのよ」
 という彼女に、
「そんなに学生時代っていやだったの?」
 と聞くと、
「ええ、本当に暗い時代だったというのは間違いないですね。ただ、いつも一人だったので、却って安心できるところはあったわ。私って、結構まわりからいろいろ言われることを嫌がるタイプなんですよ。そんな自分がアイドルをやっているなんて不思議でしょう? アイドルというのは、ある意味誰にでもできることであり、選ばれた人間にしかできないものだともいえると思うのね?」
「じゃあ、二種類のアイドルがいるということ?」
「私はそう思うわ」
「君はどっち?」
 と聞かれて、
「選ばれた人間だと思っているわ」
「その根拠は?」
「心構えかしら? 私の場合は、アイドルを演じている自分を磨こうと思っているの。他の人は、アイドルの自分を磨くか、アイドルではない自分を磨こうと思っていると感じるんです。私はあくまでも、演じている自分を見つめているんですよ」
 というのだった。
 記者は、分かったような分からないような表情をした。晴香は、本音を言ったつもりだった。だから、相手が迷うだろうというのも分かっているし、きっと、その時も、
「晴香は、自分を演じているんだ」
 と、会話しながら、そういう目で見ていたに違いない。
 ただ、彼女は仕事を選んでいた。というよりも、仕事を選んでいたのは事務所側であり、彼女が受ける仕事はある程度決まっていた。
 一番多いのは、脇役としての、ドラマ出演で、その次がグラビアアイドルだった。イベントにも積極的に参加していて、そのおかげで知名度は大きく、ビルの上にある巨大な看板が彼女の顔で埋め尽くされていることもあるくらいだった。
 彼女はグラビアの時と、脇役として演じる時とで、明らかに表情が違っている。
「同じ人間なのか?」
 と思われるほどで、ドラマを見ていて、
「この娘があの看板の女の子?」
 と聞いて、ビックリする人も少なくはなかった。
 最近では、少し変わったところで、報道番組のコメンテーターとして呼ばれることも増えてきた。
 昼の報道番組などでは、特に最近、お笑いタレントはMCを務めていて、コメンテーターにもお笑いタレントというのが増えてきている。
「報道番組の質も落ちたよな」
 と言っている人も多いだろう。
 ただ、昔はその時間というと、奥様をターゲットにしたドラマや、昼休み中にはバラエティ番組が多かったことを思うと、
「報道番組になっただけ、まだましではないか?」
 と言われるくらいであった。
 そもそも、今では夫婦共稼ぎという家庭が増えてきて、それが当たり前という時代になってきたこともあって、
「ターゲットを主婦層にするというのは、限界がある」
 ということだったのだろう。
 バラエティも、昼休みだけであればまだいいが、それ以降の一時過ぎからをどうするかということになると、報道番組が多いのも無理もないことだ。
 最近であれば、昼過ぎから四時頃までの間、全国ネットの報道番組が多く、それ以降の夕方の時間になると、地元の報道番組が多くなる。
 主婦層の番組があった時期であれば、その時間は、
「子供向けのアニメの再放送」
 というのが主流だっただろう。
 しかし、今はアニメや特撮というと、ほとんどが週末にしかやっておらず、それ以外というと、深夜の時間帯となる。子供は起きている時間ではないだろうから、子供ではなく、中高生相手のアニメが主流であろう。
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次