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正夢と夢の共有

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 などという縛りもあったりして、まだまだ若い彼女たちに、その理由が分かるわけもないかも知れない。
 本当の意味を知らないと、辛いだけに違いない。
 昔から、アイドルは危険な商売でもあった。昭和の頃には、アイドルが隠れて付き合っていた男性がいて、その男性との別れ話がこじれたのか、男の方が逆恨みし、ホテルでいちゃついている写真を、週刊誌に送り付けたりしたということもあった。
 そうなってしまうと、さすがにアウトで、イメージが商売のアイドルには致命的であった。
 今の時代であれば、ストーカー防止法の検知から、その男を訴えることもできるだろうし、法律があるだけで、逆恨みをしないという抑止力も働くかも知れないが、当時はそうでもなかった。
 付き合っていた男が悪かった。つまりは、見る目がなかったということなのか、それとも、相手がそこまでのことをするだけのことを、そのアイドルがしてしまったのかは分からないが、そのせいで迷惑をこうむったのは、そのアイドルだけではなく、売り込みに必死になっていたプロダクションであり、彼女のファンではないだろうか。
「裏切られた」
 と言っても過言ではない状態で、そのアイドルは四面楚歌状態だったに違いない。
 元々は何が原因から分からないが、誰一人としてそのことで得をした人間もいないし、ましてや幸福になった人間もいない。そういう意味で、悲惨な状態なのは、間違いのないことだろう。
 また、最近では通り魔のようなファンに狙われるということもあった。変なファンや、異常な感情を持ったファンによる犯行なのだろうが、特にアイドルという仕事は、
「ファンにグッズやチェキ券、CDなどを買ってもらってなんぼ」
 と言われるだけに、推しに対してのお金の使い方が半端ではないファンも少なくはない。
 そんなファンが逆上すれば怖いというもので、そんなファンとどのような立ち振る舞いをするかというのが相手の心情を惑わすことになりかねない。
「相手が勝手に、自分のことを恋人だと思い込んでいた」
 というほどのあざとさがアイドルにあれば、それは浅はかだと言われるだろう。
 しかし、お金を使わせてなんぼという世界なのだから、その線引きも難しい。
「まるで、キャバクラのようじゃないか」
 とも言えるだろう。
 相手をおだてて、いくら高い酒を入れさせるかということである。
 そういう意味ではキャバクラもアイドルもどこか似ている。
 キャバクラでは、用心棒がついているかも知れないが、アイドルには用心棒というわけにもいかない。何しろ、アイドルというのは、地下アイドルも含めると、かなりの数だろうからである。
 アイドルの恋愛禁止は、そんなアイドルたちを守るためだと言えるだろう。
 もちろん、アイドルである以上、
「アイドルというのは、ファンがお金を使って、疑似恋愛というものを、ファンに妄想させる」
 というのが、商売である。
 だから、余計な妄想を抱く輩がいないとも限らないし、お金を使いすぎて、勝手な妄想に至ってしまい、さらに、お金が無くなったことに気づいても、まだ入れあげてるために、借金を重ねるファンもいるだろう。
 そうなってしまうと、本末転倒なことなのだが、そうなると、逆恨みの可能性も出てくる。
 そんな状態で、自分の推しに、彼氏がいるなどということが分かれば、どう思うだろう?
 逆恨みがその相手の男に向く場合もあるし、裏切られたという感情からアイドルに向く場合もある。
「可愛さ余って、憎さ百倍」
 というやつである。
 そんなアイドルを守るのが、
「恋愛禁止」
 というルールである。
 中には、そのリールを破って、密かに男と付き合っていて、週刊誌からスクープされることも多い。
 今ではSNSというものがあるので、ファンが思っていることを匿名でいくらでもコメントができるので、辛辣なものも多い。
 しかしそれだけに本音が言えるというもので、すべてを否定することなどできないのではないだろうか。
 特にグループで活動している人に、スクープがあれば、結構大きな問題だ。
「他のメンバーはちゃんと守っているのに、一人だけ守らないのはルール違反だ」
 というわけである。
「でも、少し可哀そう」
 という同情的な意見もあるが、それはあくまcでも少数派で、
「恋愛禁止を分かっていてアイドルになったのだから、彼女たちの商売の性質を考えると、ファンに対しての重大な裏切り行為だ」
 というのである。
 商売の性質というのは、前述における、
「アイドルというのは、ファンがお金を使って、疑似恋愛というものを、ファンに妄想させる」
 というものである。
 コメントしている人がもし、ファンであれば、同じ気持ちになっているに違いない。
 辛辣なコメントも多いのは当然で、しかも、彼女の進退にまで言及もしている。
「バレたのなら、潔く卒業すればいい」
 あるいは、
「もう、彼女はテレビに出さないでほしい。出ていても見たくない」
 という意見まで出てくる始末で、アイドルという商売がファンを裏切ると、何を言われるか分からないというものだ。
 その時点で、ファンは離れていき、
「ファンを裏切ったアイドル」
 というレッテルを貼られてしまい、立ち直るにはかなりの時間を要することだろう。
 その間に、まわりからどんどん置いて行かれていき、結果、卒業を余儀なくされることになるだろう。
「そもそも、恋愛禁止なんていうカビ臭いような決め事があるからいけないのよ」
 と思ったところで、
「分かっていたアイドルになったんだろう?」
 と言われると、言い返すことなどできなくなるに違いない。
 アイドルの中には、ファンというものを、ただのお金としてしか見ていない人もいるだろう。
 そんな彼女たちは、卒業を余儀なくされても、まだ華やかな場所にいたいと思うのか、アダルト系に走る人もいたりする。
 キャバクラなどの夜の店に行く人もいるだろうが、ちやほやされたいという感情も手伝っているのかと思うのも、無理もないことだ。
 アイドルを辞めて、あるいは卒業してから、普通に結婚したりする人もいるだろうが、円満に卒業した人は、それまでの経験を生かして、別の道に進んでいる人も少なくはない。
 俳優であったり、舞台。さらには、実業家になる人もいたりする。
 それは、アイドルをやりながら、卒業後の人生設計をしっかりしていた人だろう。
 もし、恋愛などにうつつを抜かしていると、将来設計に対しても、目が狂ってしまって。先を見ることができなくなるに違いない。
 まずは、
「自分には何ができるだろう?」
 というところからである。
 つまりは、自分をいかに見つめなおすことができるのか? ということが一番なのではないだろうか。
 そんなアイドルの中に、一人、片岡晴香という子がデビューした。
 彼女は、オーディションに受かったわけでもなく、プロデューサーがどこかから見つけてきたようで、彼女は、アイドルというよりも、女優を目指しているようだった。
 しかし、ルックスが幼いというのもあり、アイドルと言われている。そんな自分がアイドルと称されるのを、晴香はあまりうれしくは思っていなかった。
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次