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正夢と夢の共有

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 その思いが、夢をいかに考えるかということと、現実世界との結界まで結び付けて考えられるような気がした。
「夢と現実の結界」
 そんなものって、本当にあるのだろうか?
 美月がみのりのマネージャーになって、
「皆さんのスケジュールを私の方で管理します」
 と言って、五人で活動しているところに現れた時、晴香の方では、美月の存在に気づいたが、美月の方では気づいていないようだった。気づくというよりも、誰の顔もまともに見れないほど、忙しいという雰囲気であった、
 美月が気づいていないようなので、わざわざ名乗り出ることもないと思っていたが、その翌日から、美月の視線が気になり始めた。
 今回の興行は五日間くらい、この土地に滞在し、地方のショッピングセンターなどで小さなステージを作ってもらい、そこで活動するというものだった。
 子供だけではなく、彼女たちのファンも遠征に同行してくれるという噂もあったので、事務所としても力の入れどころのようだった。
「さすがに、地下アイドルの力は、舐めたものではない」
 と言えるだろう。
 宿も久しぶりにホテルに泊まれて、温泉付きというのはありがたかった。
 皆が浮かれている中で、みのりだけが憂鬱な表情をしていた。それに気づいた晴香は、
「ストーカーのことが気になるの?」
 と聞くと、
「ええ、そうなのよ」
 と答えた。
 ここで敢えて、
「マネージャーさんには相談したの?」
 と聞いてみると、
「相談したんだけどね。何とも要領を得ない感じなのよ。だから、私の方は不安で不安で」
 と言っていた。
「とりあえず、皆いるから大丈夫だと思うんだけどね。なるべく、一人にはならない方がいいと思うわ。マネージャーと一緒にいるか、それが無理なら、私が一緒にいてあげる」
 というと、
「じゃあ、一緒に寝てくれませんか? 私一人だと怖くて」
 というではないか。
 今日の宿は、ベッドもセミダブルで、結構広い。少々無理をすれば、二人で寝られないこともない。一瞬、晴香は躊躇したが、真っすぐにこちらを見つめて、本当に怖がっているその様子を見ると、
「うん、分かったわ。とりあえずは、今日は一緒に寝ましょう」
 というと、
「うわぁ、ありがとうございます。本当に一人になるのが怖いんです」
 と言って、嬉しそうにしながらも、怖がっている。
「マネージャーさんにも許しを得ないといけないんじゃないの?」
 と言われたみのりは、
「ええ、さっそく連絡してみます」
 と言って、携帯で連絡を取った、
「いいってお許しが出ました。晴香さんによるしくと言っておいてくださいとのことでした」
 と言われて、
「ええ、分かったわ。マネージャーさんも大変でしょうから、私でできることであれば、してあげるわよ」
 というと、
「ありがとうございます。やっぱり、晴香さんは私のお姉さんも同然なのね」
 と言って、まるで少女のようにはしゃいでいるのを見ると、こちらも、甘えてくれる妹ができたようで嬉しかった。
 夕飯は、レストランで皆一緒の食事だったが、それから就寝までは自由行動である。
 食事は七時半には終了するので、そこから一応就寝時間は十時と決められた。
「睡眠不足ではいいパフォーマンスはできませんからね」
 と言っていたが、若い女の子が数人揃えば、そう簡単に眠りに就けないことは分かっている。
 普段から、単独の活動が多いので、マネージャーと二人だけでの興行は寂しいものがある。
 夜だって、本当にやることもなく、一人でゲームをしているくらいしかないのだが、たまにそのせいで夜更かしをすることもあるが、基本的にはいつも一人である。
 そんな毎日を過ごしているとさすがに寂しく、
「夜長というものを、嫌というほど意識してしまう」
 と感じていることだろう。
 今回のように、いい宿でないことも多く、日本家屋の民宿のようなところでは、夜にお風呂に一人で入りに行くのも怖いというものだ。
 夏の時期は、幽霊が出るかも知れないという恐ろしさと、冬は、寒さで、布団から出たくないという思いも手伝ってか、
  今回の遠征は、時期的には寒くもなく暑くもないという、ちょうどいい時期であった。こういう時こそ、夜長を本当であれば楽しむのだろうが、アイドルとしての自覚から、最初は、
「今日は夜更かしだ」
 と思っていても、十時が近づいてくると、本当に眠くなってくるもので、誰か一人のテンションが下がると、後は、起きているだけで時間が長く感じられ、
「早く寝てしまった方が勝ちなのではないか?」
 と考えるようになった。
 他の子たちも、誰かの部屋に行って話をしているかも知れない。その証拠に、みのりは誘われたらしい。
「いいの? あっちに行かなくて」
 と、少しひねくれた気分で晴香がいうと、
「いいのよ。晴香おねえさんが一緒にいてくれるだけで、私は嬉しいの」
 と、みのりが言った。
「そんな風に言ってもらえるほど、私はしっかりしていないわよ」
 というと、
「そんなことはないわ。私はおねえさんに憧れているんです」
「どうしてなの?」
「おねえさんは、地下アイドルの出身でもないのに、失礼ですけど、私たちのように若くもないのに、アイドルを目指しているというところがすごいと思うんですよ」
 というので、晴香は、急に恐縮した気持ちになり、何と言って言葉を返していいかわからず、言葉を失ってしまったのだ。
「私は、子供のことからアイドルに憧れていた」
 と言って、ごまかしていたが、小学生の頃はアイドルヲタクだったのは間違いのないことだった。
 だが、当時のアイドルというと、テレビ番組の企画で、
「アイドルを目指せ」
 という形のドキュメントものから、アイドルとしての知名度を得るというものが多かった。
 当時は、まだ民放などが、ロウソクの炎が消える寸前に、パット明るくなるような感じであった。
「もう、消えていく運命にあるのは確定していて、どこまで延命ができるかということなのだろうが。ただ、灯火がすべて消えるわけではない、くすぶった状態なので、最後まであきらめるというわけにもいかない」
 というのが、民放だった。
 しかし、その頃から、有料放送の番組が増えてきて、特にスポーツ番組など、民放のゴールデンタイムにやっているプロ野球などは、今はたまに地元球団の放送をやっているくらいだ。
 以前、民放しかなかった時は、放送時間を延長しても、せめて一時間くらいであった。ほとんどは三十分くらいで、延長になった時は、以降の番組は繰り下げての放送だった。
 プロやキューのファンも、元々の放送時間のドラマなどのファンも、どちらにも中途半端なののだった。
「三十分延長しても、最後まで放送してくれないと、どこで終わるかというだけで、同じことだ」
 ということになり、ドラマのファンは、
「三十分繰り下げられると、予定が立たなくなる」
 ということであったり、録画して見ようと思っている人にとっては、いくら延長録画を競ってしてあったとしても、最初の方に、余計な番組がついていて、録画のテープを三十分も無駄に使ったのと同じである。
 どちらからも、文句が出るのは、どうしても、スポンサーの意向があるからだ。
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次