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正夢と夢の共有

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 しかも、マネージャーが元AV女優として、絶えず表に出ていた人であればなおさらのこと、美月がどこまで真摯にマネージャーという仕事と向き合っていたのか分からないが、今はやりがいのある仕事だと思っているのではないだろうか、そうでもなければ、自分からメンバーのスケジュール調整役に名乗りを上げるというのも普通では考えられないことで、その件については、誰もが頭の下がる思いだったはずだからだ。
 一つ気になるのは、
「みのりが、美月の過去を知っていたのか?」
 ということだった。
 美月の性格からいって、自分から話をすることはなかっただろう。今の美月を見ていると、
「石橋を叩いて渡る」
 というような、慎重さが感じられた。
 もっとも、そんな慎重で検挙なところがなければ、とても、マネージャーなどという仕事はできないだろう。
 しかも、完全に影の仕事で、普段の仕事をやりながらも、扇のかなめのような仕事をしているのだから、慎重なところがないとできないだろう。
 それほど、忙しい毎日を過ごしている美月に、みのりのストーカーができるほどの時間があるはずもない。そういう意味でストーカーというのは考えられないと、なぜみのりは、そんな簡単な理屈が分からなかったのだろう?
「ひょっとすると、そんなことも分からないくらいに、美月のことを嫌っていたのではないだろうか?」
 しかし、みのりが美月をそこまで嫌う理由が分からない。
 表面上は、お互いに嫌っているというような素振りは一切見せない。それをプロ意識というのか、それとも、相手に感じさせないように、細心の注意をしているのだろうか?
 そこで一つ考えたのが、
「みのりに対して、誰か第三者が、みのりが信じるようなみつきの悪口を吹き込んだのではないだろうか?」
 ということである。
 みのりが、
「この人のいうことであれば、かなりの信頼性がある」
 と感じる相手であれば、そう思っても仕方がない。
 吹き込んだ人がいるとして、その人が最初から、
「吹き込む」
 という意識を持ってのことであったのか、それとも、吹き込んだとしても、それは意識的にではなく、世間話の中で、呟いた美月に関してのことを、変に歪んだ考え方で、みのりは解釈してしまったのではないかと言えることであった。
「ひょっとすると、その吹き込んだ相手というのが、自分だったのかも知れない」
 とまで、晴香は考えたが、そこまでその時、晴香に相手に思い込ませるだけの説得力があったとは思えないし、みのりの方も、そこまで晴香を信用していたとは思えないが、いつ何時、人の恨みを買うとも限らないと言われるように、人を無意識のうちに、洗脳してしまうということもあるのだろう。
 そんな晴香であったが、今では静かに影に徹している美月が、果たしていつ表舞台にでないと我慢できないようになってくるのかということが気になっていた。
「一度、スポットライトを浴びたことのある人で、ずっと注目され続けてきた人というのは、そんなに簡単にスポットライトを浴びることをあきらめきれるものだろうか? しかも自分はその人を支える立場であり、脚光を浴びる人を見ているだけではなく、自分が携わっていることで、嫉妬の嵐が巻き起こるものではないか?」
 と晴香は思った。
 晴香はそれを、自信過剰のようなものとして感じ、そこには、実績というプライドが見え隠れてしているのではないかと思わせた。自信とプライドは似ているように見えるが、微妙なところで相まみえない結界のようなものが存在している気がしたのだ。
 マネージャーになろうと思った美月が、なぜみのりのマネージャーになったのかというと、最初から美月は、
「マネージャーになるなら、みのりのマネージャーになりたい」
 と思っていたようだ。
 その理由として、美月はみのりのファンだったのだ。
 あれは、まだ結婚している時、昼間コンビニでアルバイトをしていた。すでにその時は、結婚に対して疑問を感じていて、結婚した相手が自分のことを大切にしてくれる様子もなく、しかも、他に女の匂いを感じていたのだ。
 その女はかなり若い女の子で、
「こんなのバレたら犯罪じゃないか?」
 と思うほどの年の差だっただろう。
 美月の元旦那というのは、美月との間でも、十歳くらいの年の差があった。離婚当時で確か、三十五歳くらいだっただろうか。どうやら、お金目当てだったようで、優しさへのあざとさは、かなりのものだった、
 美月も、あざとい演技では有名だったので、本当はそんなにあざといわけではなかったのに、あざとい女の気持ちは分かっていた。
 だから、旦那が騙されているのが分かったので、
「あんた騙されているのよ。そんなことも分からないの?」
 と言って諭すと、
「何言ってるんだ。お前だって、結婚前はもっとあざとかったじゃないか。俺はそれに団されたんだ」
 と、美月への批判をしてきたのを聞いて、美月は急に冷めてしまった。それを聞くと、
「もういいや」
 と感じたのだが、離婚までにはなかなか踏み込めなかった。
 結局は、離婚調停によって、離婚が成立したのだが、それでよかったと思っている。二人だけでダラダラしていると、離婚もうまく成立しなかっただろう。
 結局離婚が成立し、それから間もなくのことだった。なんと、離婚してすぐに、旦那は浮気相手に捨てられたのだった。
 こともあろうに、元旦那は、どのツラ下げて、
「俺は騙されていたんだ。やっぱりお前がいいんだ。もう一度よりを戻さないか?」
 と言ってきた。
「よりを戻すも何も、離婚したという事実をあなたは理解していないの?」
 と聞くと、
「ああ、だけど、またやり直せばいいじゃないか?」
 と。まるで、まだ美月が彼のことを好きなのだと信じて疑わない様子に、呆れかえってしまった。
「何、いったい? しかもあなたが捨てられることなんて、簡単に分かっていたことなのに」
 というと、
「だったら、そう言ってくれればいいのに」
 と、これ以上ないというくらいの言葉に、開いた口がふさがらなかった。
「あんなに騙されているって言ったのに」
 と言いたかったが。どうせ、この男は、
「でも、別れることになるとは言わなかったじゃないか? そう言ってくれれば、俺だって考えたのに」
 とでもいうだろう。
 要するに騙されているという言葉をちゃんと信じられるなら、別れることがすぐに想像もつくだろうということをこの男は分かっていないのだ。この男は、自分に都合の悪いことは聞きたくもないし、考えたくもない。つまり不倫を続けている時は。
「お前のせいでこんなになったmじゃないか。嫌なことは考えたくない。そんな時に現れた女に惹かれただけじゃないか。お前は反省の意味も込めて、大好きな男が、他の女を抱いているという事実を受け入れて、大いに反省すべきなんだ」
 と言いたかったことだろう。
 そんな男だから、離婚となった時もあいまいにしてしまうと、後々まずいことになると思ったことで、調停離婚にしたのではないか。そんな意味も分からずに、どうして調整にこだわったのか分かるはずもないから、この期に及んで、抜け抜けと、
「よりを戻そう」
 などと言ってこれるのだ。
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次