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正夢と夢の共有

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 本当が付き合いたいのに、付き合ってしまうことで、本来一番好きになった相手の本来の性質を殺してしまうことに大いなるジレンマを抱いたのだった。
 そんな彼女のことを、このままそれ以上好きになってしまうわけにはいかない。だからと言って、彼女のそばからも離れたくない。そんな自分の性格をわがままだと思った彼には、子供のようなところがあった。
 だからこそ、彼女から離れられず、かといって、これ以上の愛情を溢れさせるわけにはいかない。そう思うと、
「他に女を作るしかないんじゃないか?」
 という安易な考えになってしまったのだ
 その時に、現れたのが、長門美月だった。
 彼女は、当時、一番一緒に絡んでいた女性で、AVの仕事として絡んでいるだけの相手で、愛情など感じているわけではなかった。
 それを意識したことで、
「晴香のことを忘れるため、美月を利用しよう」
 と思ったのだ。
 罪悪感はなかった。それだけ、彼は子供のようなところがあった。
「美月と付き合って、こっぴどくフラれた場合なら、晴香は自分が一番求めている彼女になって、俺の前に現れてくれるかも知れない」
 という、本当に中学生の恋愛レベルの発想を抱いたのだった。
 もちろん、そんなバカげたことになるわけもなく、確かに美月に捨てられることになったのだが、自分だけが見捨てられる形になった。ただ、その時美月も、かなり傷ついたのは確かなようで、美月は、その後、かなり苦しんだ後、開き直りのうまさが功を奏して、しかも、この経験が彼女を強くしたのか、結婚には円満だったようだ。
 それでも、結婚がうまくいったのは二年ほどの間だけで、どちらが悪いのか、かたくなまでに箝口令が敷かれ、誰も本当の理由を知らないままに、離婚したのだった。
 しばらくの間、美月は表にまったく出てこないようになった。一時期行方不明だった時期もあり、捜索願を出そうという一歩手前で帰ってきたということであった。
 そんな美月は、本当に表舞台に出てこなくなった。一度いなくなったとしても、少しの間でも無事に暮らしているというのが分かると、今度は彼女が失踪しても、誰も気にならないだろう。
 実際に、それ以降、彼女と親交があったという人を皆知らない様子だった。
 美月がそれからどうなったのかということを最初に知ることになるのは、何と、晴香だったのだ、
 彼女の今を知っている人は、彼女の過去を知らない。彼女は、自分が他の人から関心を買わないように、どちらかというと、人を避けていたり、わざと嫌われるようにしていた素振りがあった。その効果はてきめんであり、ある意味、彼女の思惑通りだったと言ってもいい。
「あの人が美月だったなんて」
 そう思ったのは、今回のテンパイガールズを結成してからだった。
 彼女は、何とメンバーの仙崎みのりのマネージャーになっていたのだ。
 今までにもみのりのマネージャーを何度か見たことはあったが、いつも帽子をかぶっていて、サングラスをかけていた。しかも、ラフな服装に、動きやすいという画期的で簡単な服だったこともあって、まさか、かつてのAV女優だったなんて、誰が感じることであろうか。
 そのことを知った時、晴香は、美月の夢を見るようになっていた。
 別に美月のことが気になっているわけではない。美月を発見したことで、それまで忘れていたはずの男優の彼を思い出したのだった。
 もちろん、完全に忘れていたわけではないので、思い出すことになったのだが、思い出すにはそれなりにきっかけなるものが必要で、思い出したことが、晴香を、
「毎日のように、夢に誘った」
 と言えるのではないだろうか。
「それにしても、まさか、恋敵と言える女のせいで、彼を思い出すことになるなんて」
 と晴香は思った。
 晴香も、実は死んでしまった彼を気にしていた。
 晴香が気になっているのは。別に彼が死んだからではない。ただ彼の死に対して晴香が大いなる責任を感じているのは事実だった。
 彼が晴香を意識しているのは分かっていた。分かっていたが、男優である彼を自分が好きになってはいけないと思ったのだ。
 彼は、れっきとした男優で、自分は企画女優でしかないと感じていたことで、彼の愛を信じることができなかったのだ。
 それは、ある意味、晴香の被害妄想であり、嫉妬のようなものであったが、それだけ晴香は、男優、女優の世界に対して、偏見と被害妄想の両面から、自分で勝手に結界を作っていたのだった。
 だが、そんな男優が自分を意識しているということが分かると、嫉妬の気持ちよりも被害妄想の方が強くなり、恐怖がみなぎってきたのだった。
 だから、彼の本気度を見誤り、相手のためにと思い、自ら身を引く形をとったのだが、それは彼に対して、余計な気を遣わせたことで、彼を死に追いやったというのが、晴香が見つけた結論だった。
 もちろん、その後、違う女優と付き合って、うまくいかずに死んでしまうことになってしまったのだから、晴香の責任ではないはずだ。
 それを自分の責任として抱え込んでしまうのは、逆に彼女の思い上がりにもほどがあるというものである。
 その思いと、自分が彼の気持ちを分からなかったという意識が働いて、しかも、死んだ時に、一番そばにいて、その責任を感じなければいけないはずの美月が、いつの間にか他の男性と結婚してしまったということで、勝手に晴香は美月のことを、
「恋敵だ」
 と思うようになったのだ。
 恋敵だとでも思わないと、自分を責め続けて、どうしようもないと感じた晴香にとっての、
「言い訳のようなもの」
 だったのかも知れない。
 そんな夢を見ていた晴香だったが、彼がどうして死んだのかということを考えていると、どうしても、美月の存在を忘れるわけにはいかなくなった。しばらくの間、美月のことが頭から離れないでいたが、やっと最近になって、思い出さなくなっていった。それにも関わらず思い出したのは、この夢が何かを暗示しているからなのかも知れない。
「正夢」
 という言葉があるが、それは、
「見た夢が現実になる」
 という考えではなく、その夢がいかに見た人に影響を与えるか? という意味において、美月のことを思い出させ、しかも、彼女がまったく違った形で自分の前に、またしても立ちふさがってくるというので、何かを暗示させているようで、まさに、夢が現実になるという意識を与えてくれるのだ。
 彼女がまったく知らないところで影響してくる存在だったということ自体が正夢であると言ってもいいだろう。

                 ファン

 テンパイガールズを結成してから、最初こそ、それぞれのスケジュールの調整が難しかったことで一緒にイベントを行うということが難しかったが、みのりのマネージャーである、美月の努力によって、次第にみんなのスケジュールが合わせやすくなってきたのだ。
 スケジュール調整がうまくいかなかったのは、それぞれのタレントのスケジュールが合わなかったことは前述のとおりだが、もっと言えば、それを取りまとめる人がいなかったというのが一番だった。
 これまでは、テンパイガールズの仕事など、しょせんは、
「宣伝のための、臨時的なイベントにいくつか出れればいい」
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次