小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

正夢と夢の共有

INDEX|15ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

 ドキュメントものや、痴漢ものは、どうしても、それを見ることで、
「レイプや痴漢の犯人の同期の中に、AVを見ていて、興奮した」
 という動機の人もいるかも知れない。
 ただ、それをいうと恥ずかしいという思いの人もいれば、AVのせいにして、自分がどうしてそのような行為に至ったのか、考えたくないと思っている人もいるだろう。
 本当であれば、犯人には、自分としっかり向き合って、厚生してほしいというところなのだろうが、実際にはそうもいかない。
「痴漢は立派な犯罪ですから、決して行わないように」
 と、作品の最後に文字で書かれたりしているが、見ている方からすれば、
「そんな作品を作って、煽っておいて、今さら何をいう」
 と言いたいだろう。
 ただ、ほとんどの人はそんな破滅に繋がるような真似はしないが、作品とすれば、
「痴漢されて、女性も楽しんでいる」
 ということを売りにしている作品もある。
「真に受けてはいけない」
 というのは、虫のいい話ではないだろうか。

               正夢なのか?

 最近、またよく夢を見るようになった。以前にもよく夢を見ていた気がしたが、それがいつのことだったのか、最近までは分からなかった。しかし、今になって思えばそれがいつのことだったのか、分かってきたような気がする。
 それは、AV時代のことであった。
 AV時代のそのほとんどは、
「企画女優である方が気が楽だし、延命もできる」
 と思っていたので、下手に目立って、その時だけ輝いていられる人生なんて、こっちから願い下げだというように考えていた。
 だが、ある時だけ、企画女優よりも自分を目立たせる女優になることの方がいいように思えたのだった。
 それは、一人の女優の存在だった。
 彼女はとてもあざとい役を得意としていて、作品の中では、S性をいかんなく発揮していた。それが人気となっていて、結構売れていたのだ、
 顔は、あどけなさが残った、清純そうな表情なのに、実際にはあざとくて、男に対して、どんなえげつない命令でもしかねないというギャップが、萌えになるのだということで人気だったと言ってもいい。
 プロダクションも彼女の人気にあやかっていた。そういう意味では完全に彼女推しと言ったところであったが、その分、同じ立場の女優達からは反感を買っていた。
 彼女を会社が推すのであれば、性格がよければ問題ないのだろうが、そのあざとさに負けず劣らず、好き放題なところがあったので、まわりからの反感もすごかった。
 しかし、彼女にはそれに勝るとも劣らない自分への自信と、仕事に対して真摯に向き合っているというところが、男優や監督から信頼を得ていた。
 つまり、彼女は相手によって、見方が両極端であり、
「敵でなければ味方、味方でなければ敵である」
 と言われていたほどだった。
 それだけ皆からの関心を、いい悪いは別にして受けていたということである。
 晴香が、女優を今できているきっかけの一つに、ある男優からの助言があった。
 まだデビューしてからすぐくらいの頃、今では男優として、人気女優との絡みもこなすようになった、人気男優である男性から言われたのだ。
「晴香ちゃんは、一生懸命なのが伝わってくるんだけど、映像にすると、どこまで伝わっているのか分からないところがあるんだ。その理由は要点を抑えきれていないところにあると思うんだ。一番の問題は、いくら企画女優だからと言って、自分が出演する作品をおろそかにしてはいけないと思うんだ。その作品を作るのに、どれだけの人がかかわっているのかということを自分なりに見つめていけば、分かることも出てくるはずだよ」
 と言ってくれたのだ。
 確かに、自分の演技の部分だけしか台本も読まないし、その作品が、どういう趣旨で作られているのかということも、まったく知らなかった。
 要するに、楽をしていただけである。そんな自分が、作品と真摯に向き合っているわけでもない。
「どうせ、私は企画女優なんだから」
 ということを言い訳にして、いつの間にか、頑張るということを忘れてしまっていたのだろう。
 それを看破したその男優が、今では立派にAVの世界を牽引しているのだと思うと、彼があの時に言っていた言葉が間違っていなかったということに気づかされた気がした。
 その男優は、結構貪欲なところがあった。
「俺は、このまま男優だけで終わる気はしていないんだ。将来は、脚本を書いたり、編集の仕事、そして、監督をやってみたいと思っているんだ」
 と言っていた。
 なるほど、だから作品をいろいろな面から見て、絶えず正対する形で作品と立ち向かうということを、自分のポリシーだとしてきたのだろう。作品に対してのビジョンも、自分なりに理解できるようにするのが目標だと言っていたが、その言葉の意味が分かったような気がしたのだ。
「晴香ちゃんは、きっと俺の話に共感してくれると思うんだ」
 と言ってくれたが、晴香がその話を聞いていた時、無表情であることは、自分でもわかっていた。
 分かっていたが、否定できないせいもあってか、どうして無表情なのか、その李湯を自分で認めたくなかった。だが、その男優は認めてくれているのだ。
 晴香は、その男性に密かに惹かれていた。
「どこの何を?」
 と聞かれると難しかったが、彼と一度一緒に撮影で絡んでから、彼のことを忘れられなくなったのだ。
 女優をしていて、一人の男優が気になってしまうなど、自分にはありえないと思っていた。確かに自分が女優として生きると言っても、あくまでも企画女優としてわきまえていたつもりだったので、まさか気になる男性が現れるなど考えてもいなかった。
 その人は、どこか一本筋が通っていた。話をしていて、
「この人のいうことであれば、信用できる」
 という思いがあったのだ
 筋が通っているが、どこか荒々しいところがあり、それがどこから来るのか、最初は分からなかった。
 しかし、ずっと見ていて、他の男性と見比べてみると、どこが違うのか分かった気がした。彼は、どこか捨て鉢なところがあるのだ。それなのに、気持ちに余裕が感じられ、
「何をそんなに捨て鉢になっているのだろう?」
 と感じたのかと思いと、逆に、
「あんなに捨て鉢に見えるのに、どうして余裕が感じられるのだろう?」
 という矛盾とギャップが、晴香の気持ちを引き付けるのだ。
「俺は、いつどうなってもいいと思っているんだ」
 あれは、作品の打ち上げで、会社が催してくれた慰労会の席で、彼がぽつりと言った言葉だった。
 他の人に言ったわけではなく、明らかに晴香に対して言った言葉だった。
「どうして私にそんな話をしてくれるの?」
 と聞くと、
「君だったら、僕の気持ちを分かってくれるような気がしてね。君はきっと僕がどうして捨て鉢なところがあるのか、気になっているんだろう?」
 と聞かれて、
「ええ、そうなんだけど、でも、プライバシーをほじくり返すようなマネを私はしたくないのよ」
 と、晴香は言った。
「そうなんだね。ありがとう」
 と言って、ニッコリと笑った。
 しかし、その笑顔は、晴香が初めて見る笑顔だった。
 それは、彼に対してという意味ではなく、
作品名:正夢と夢の共有 作家名:森本晃次