小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

三者三様のタイムスリップ

INDEX|9ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 

「なるほど、実は私も似たようなところがあるんですよ。というか、私が占い師を始めたのも、ある時、自分で予感めいたものがあり、それが本当に実現するようなことが何度かあったんです。自分でも、そんなバカなと思ったりもしたんですが、その時に、バカなことだとして済ませていれば、それ以降、何もないまま、生活を変えることもなかったでしょう。でも、自分の能力を知りたくなったんです。それで、いろいろな事例を調べているうちに、この感覚が占いに似ていると思ったことで、実際に占いの先生に弟子入りしたんです。でも、占いというのは、占い師独自の能力であるので、人に教えてもらうようなものではないんですよ。教えてもらえるとすれば。商売にした時、致命的な外し方をしないようにするにはどうすればいいかということになるんでしょうね。だから、誰にでも当てはまるようなことを無難に答えられるという訓練をするんですよ。これがバーナム効果と呼ばれるもので、一種のマインドコントロールのようなものなんですよ」
 と言っていた。
「そういえば、バーナム効果という言葉、訊いたことがありましたね。誰にでも当てはまるようなことを言って、いかにも、その人が、自分にだけ当て嵌まることだと思わせるかということが大事で、そうやって、相手を自分の術中にはめ込んでおいて、それからの占いや予言を信じ込みやすくするというものですよね? 私はそのことを知っていたので、今まで占い師というものを信じられなかったんですが。彼女を見ていると、占い師の本質を知らないというのは、危険な感じがしたんですよ。占い師と彼女とがどういう結び付き方をするのかと聞かれると答えられないけど、自分としては占い師を他人事だと思ってはいけない気がしたんです」
 と隼人がいうと、
「彼女はバーナム効果を無意識に使える人なのかも知れないですね。バーナム効果というものを知らずに、無意識でも使える人は結構いるものなのですよ。実は私も最初はそうだったんです。別に誰かに助言をしたりしたわけではないんですが、私を見ていて、他の占い師が急に。私が占い師に向いているというようなことを言い出したんです。最初は、何を言っているのか分からなかったんですが、占い師の人が私にいろいろ予言をしてくれるのが、ことごとく当たっているではないですか。それで話を聞いてみると、ちょっとだけ話をしただけで、その人の本質のようなものが垣間見えると、その人の過去が分かるというものなんです。決して未来が分かっているわけではないので、それほど不思議ではない。だけど、素人には恐ろしい能力に見えた。そもそも恐ろしい能力に見えたところが、バーナム効果なんでしょうけどね。完全に、私はその時、その占い師の言葉を、予言のようなものを同じ感覚になっていたんですよ。だって、過去のことばかりを指摘していると思っていなかったということは、彼がいっている言葉が無意識に頭に入ってきただけで、頭が働いたわけではない。そういう意味では一種の洗脳であることに間違いはないと言えるんでしょうね」
 と、占い師は言った。
「輪廻転生だって、過去のことばかりを当たり前のことのように無意識に感じることで、人間だけがその理屈を理解できるという感覚になるのであって、これも当たり前のことを言っているだけだというか、、途中で様子が変わった彼女のように、その間にどれほどの、自分たちに見えていない広い世界が広がっていたのかということを、無意識に感じることができるだろうかを考えさせられたんだよな」
 と、隼人は言った。

                 再生能力

 さて、前章で出てきた隼人という人物であるが、彼は阿田川隼人といい、いちかとお付き合いをしている男性だった。
 中学時代までは、いちかやつかさと同じ学校だったのだが、いちかとつかさが女性香に行ってしまったので、高校は離れ離れになってしまった。
 しかし。それでも、高校に入ると離れ離れになったのだが、隼人はそこまでいちかを意識していたわけではないが、いちかの方が中学を卒業する頃になると、もうアプローチを仕掛けてきて、二人は卒業を機に、付き合うようになったのであった。
 いちかは、元々隼人のことが好きであったが、告白するまでには至らなかった。一番の理由には、つかさの存在があったからだ。
 いちかは、つかさも隼人のことを好きだと思っていた。勧善懲悪なところがあるいちかにとって、
「裏切るわけではないが、一人の男性を巡って三角関係になっているとするならば、友達に先んじて行動するというのは、つかさに対しての背徳心であったり、後ろめたさのようなものが打慣れてきて、私自身が耐えられない」
 と思っていたのだ。
 だから、なるべく自分の心を抑えて、ちょっと鈍感なところのあるいちかにつかさに対して、
「このまま自分が、隼人のことを好きだということを黙ってさえいれば、波風を立てずに済むことなんだ」
 と自分にいい聞かせていた。
 それに、もう一つの理由としては、
「肝心の隼人が私のことを、好きだとは思えない」
 という意識があったからだ。
 いちかとしては、そんな隼人の本心が分かっていないところに持ってきて、つかさとの仲を天秤に架ければ、
「気持ちをこのまま封印しているのが最良なのだ」
 と、思ったとしても、無理もないことだろう。
 幸いなことに、自分たちは高校生になれば、女子高に行き、隼人とは嫌でも学校で合わなければいけないという、何かあった時には、生殺し状態になってしまうことは避けられるのであった。
 そういう意味で、
「つかさに感謝しなければいけない」
 と思っていた。
 一緒に、今の女子高に行こうと言い出したのはつかさだった。
「私は、親友はおろか、友達と言えるような人はほとんどいないので、そんな中でも唯一の親友だと思っているいちかと同じ高校に行きたいの。女子高なんだけど、一緒に目指してくれるかしら?」
 と、つかさが言った。
 つかさが行きたいという学校は、いちかが目指している学校でもあった。いちかとつかさは成績も拮抗していたので、目指す高校も同じランクのところだったので、最初から何もつかさが誘わなくとも、同じ学校に進学する可能性は結構高かっただろう。
 それでも、つかさが誘ったというのは、つかさにとって、一世一代の覚悟を持っての誘いだったのかも知れない。
 それだけつかさというのは、あまり自分の気持ちや考え方を人に話すことはなかった。
 そんなつかさの性格を知っているいちかだっただけに、いちかとしてはとても嬉しかった。
「うん、いいわよ。私もつかさと同じ学校にいければ嬉しいと思うのよ。つかさの方から誘ってくれるなんて、感激だわ。親友冥利に尽きると言ったところかしら?」
 と、いうと、
「ありがとう。いちかだったら、きっとそう言ってくれると思っていたわ。だから余計に嬉しいの。私は、今まで自分から人にお願いをすることってあんまりなかったので、本当はすごく緊張したの。いちかなら分かってくれると思っているわ」
 とつかさがいうので、