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三者三様のタイムスリップ

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「信仰心が厚ければ、そんな欲求に負けるはずはない」
 という教えがそこには含まれていて、おとぎ話というのは、子供に対しての戒めというだけではなく、宗教不況のプロパガンダとして利用されたという考えも出てくるというものである。
 それを思えば、浦島太郎の話を、おじいさんになったところで終わらせるというのもありではないかと思われるのだった。
 そんな浦島太郎の話にとって、
「本当は先があった」
 というのだが、それは、乙姫様がカメになってやってきて、鶴になった太郎と結婚し。幸せに暮らしたというハッピーエンドである。
 しかし、ここにも若干の違和感があるのだが、気が付いた人もいるであろう。
「乙姫様が太郎を慕って地上に来て、二人は結婚するのであれば、何も太郎が、おじいさんになる必要などあるのだろうか?」
 という思いである。
 それを考えると、別の発想が生まれてくる。
「浦島太郎の話というのは、本当は最初から二つあったのではないか?」
 という疑念である。
 そもそも、昔話というのは、類似の話が全国各地に点在していて、それらを総合的に見て、
「おとぎ草子」
 として、編纂したものなのであろう。
 この場合の疑問というのは、やはり、
「せっかく、太郎の元にやってきて結婚するのであれば、わざわざ玉手箱を持たせたりして、おじいさんにする必要があったのか?」
 ということである。
 乙姫様は美しいままなのに、老人になった太郎を慕うというのはどういうことであろうか?
 性欲などを考えると、老人に若い娘が抱かれるというのは、異常性癖でもなければ、考えられないことだ。
 となると、本当の浦島太郎の話は、二つあり、一つは、今伝わっている話がその一つであり、実際の話とされているものには、
「玉手箱は存在していない」
 と考えればどうであろう?
 途方に暮れた太郎の元に、乙姫様がやってきて、乙姫様と永遠に幸せに暮らしたという考えであるが、だが、限りある命の太郎に、永遠という言葉は当て嵌まるのか? とも考えられた。
 そこで、
「玉手箱は存在し、あの煙はおじいさんになるための煙ではなく。鶴になるための煙だった」
 という考えである。
 つまり、玉手箱を開けたことで、太郎は鶴になり、乙姫がそれを見て、自分も地表に行って、二人で幸せに暮らしたということであるが、これで本当にしっくりくるのだろうか?
 そもそも、乙姫様というのは、竜宮城の女王様のようなもので、いくら一人の人間を好きになったからと言って。簡単に竜宮城を出て地表に来れるものだろうか?
 竜宮城を見捨てたことになるのではないか?
 そう考えると、この話もしっくりとこない。
 では、乙姫にも何らかのバツが与えられたと考えるとどうだろう?
 そこで出てくるのが、本来言われている玉手箱の効力である。
 乙姫が地上にくるために受けた制裁は、
「おばあさんになることだった」
 ということであれば、浦島太郎がおじいさんになった理由も分かるというものだ。
 しかし、最初から乙姫様は、自分がおばあさんにさせられるということを分かっていなければ、玉手箱を渡すという話は偶然で片づけていいものなのかと思い。この話もどこか胡散臭い気がする。
 ただ、前述の、
「この話は、そもそも二つあった」
 と考えるのが、妥当かも知れない。
 伝わっているのとは違うハッピーエンドの話には、本当は玉手箱が出てきたわけではなく、実際に伝わっている話と一緒になり、もう一つの言い伝えになっているのではないかという考えである。
 そういう意味で、明治政府が、浦島太郎がおじいさんになるという話を採用したことの訳が、ハッキリと分かるのではないかと思えたのだ。
 きっと、この浦島太郎という話は、
「どう解釈しても、何かタブーを犯してしまったことで、その報いを受けなければいけないという話に、どうしてもなってしまう」
 ということではないかと思えるのだった。
 竜宮城から出た乙姫が、地表に着いた時点で、時の流れに逆らえず、おばあさんになるという発想は、実際に本人は分かっていたのだろう。
 ただ、ひょっとすると、乙姫様は、
「浦島太郎に渡した玉手箱の本当の効力を、何も知らなかったのかも知れない」
 とも考えられる。
 ただのお土産のつもりだったのかも知れないが、ただ、彼女も地表と竜宮城の違いと知っていたと考える方が妥当であろうと思われる。
 乙姫様も、ひょっとすると、そんな効果のことを知らなかったのかも知れない。
 考えられることとして、考えられているように、
「乙姫様が竜宮城の支配者である」
 という考えが果たして正しいのかということである。
 もし、彼女が竜宮城の支配者であったとすれば、その地位を捨ててまで、好きになったとはいえ、見ず知らずのしかも、地表の男を慕って、地表に出てくるだろか?
 それまでの昼夜名誉、権力を捨ててまで地方に来るというのは、竜宮城が小倉区浄土に思えた浦島太郎からすればありえないことではないだろうか。
 それを考えると、
「乙姫様は竜宮城の支配者なのでも何でもなく、ただのスポークスマンのような存在で、お飾りの代表者だったのではないか?」
 ということである。
 それであるならば、浦島太郎を追って竜宮城を抜け出しても別に不思議はない。竜宮城としても、
「乙姫の代わりなど、いくらでもいる」
 という程度に考えていたとすれば、乙姫の権力や立場など、最初からなかったようなものだ。
 ただの傀儡であったとするならば、玉手箱の正体を知らなかったとしても無理はない。
 上の人から、
「玉手箱を渡して。開けてはいけないと釘を刺しさえすれば、それでいい」
 ということだったのかも知れない。
 乙姫は、浦島太郎がその玉手箱を開けて、おじいさんになったのを知って、自分のしたことを後悔し、自分が浦島太郎を好きだったことに気づいた。
 だから、浦島太郎への懺悔の気持ちと、好きになった気持ちから、カメになって竜宮城の門番を騙し、陸に上がったと考えてもいいだろう。
 つまりは、竜宮城は、極楽浄土などではなく、人間を欺くための何かを目的とした基地だったと言えるかも知れない。
 それが地球を侵略する前線基地だったのかも知れない。それが海底人によるものか、それとも宇宙人によるものかは分からない。
 海底人だとすると、彼らは、ひょっとすると人間よりも前から地球にいた祖先なのかも知れない。
 そう思うと、彼らが不思議な力を使ったとしても不思議はない。人類などに比べてはるかに文明が発達した世界の人種だとすれば、その後、地表に何もしなかったのも分かるかもしれない。
 ひょっとすると、やつらは、地表などよりも、もっと住みやすいところを宇宙に求めたとも考えられる。今頃は他の星で、人類の想像もつかないような文明を持っているかも知れない。
 そして、
「もう人類なんて、眼中にないわ」
 というくらいに、文明的にも置いて行かれたと考えるのが妥当ではないだろうか。
 だから、それ以降、海底から地表に対して何もないのだ。それを思うと、不幸中の幸いだったと言えるのではないだろうか。