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三者三様のタイムスリップ

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 確かに数学的には、ゼロというものが存在しないとなると、いろいろと辻褄の合わないところがたくさん出てくる。つまり、ゼロの存在が、不可能であるとか、数式で解を求めるのに、ゼロという概念がなければ解き明かすことのできないものがあるということで、
「ゼロの存在意義」
 は、実際に認められていると言ってもいいだろう。
 では、無限という考えはどうなのだろう?
 これも確かに無限という考えがゼロの存在のように、いろいろ辻褄が合わないことに繋がっていくと言えるだろう。
 無限というものは、果てしないもので、どこまでいくか分からない。
 逆にゼロというものは、あくまでもゼロでしかなく、たった唯一無二のものだ。しかも、他の整数である、一、二と言った個別の数字とは別に、その単独で数字の種類として立派に存在できるものである。
 無限には限りがないのだが、これもゼロと同じように、実は唯一無二のものなのかも知れない。
 しかし、限りない、あるいは果てしないというような曖昧な形にしておいた方が、理屈的にいいだろうという考えが生まれてくる。

             無限と四次元の世界

 そういえば、昔の特撮番組で、面白いタイトルの話があったのを思い出した。
 確か、
「無限への……」
 だったと思う。
 タイトルはハッキリと覚えていないが、この話のテーマは、
「四次元の世界を作ることのできる怪物」
 というものであった。
 次元というものの考え方として、まず一次元というのは、
「点や線」
 というものであり、二次元は、
「平面である」
 というものであり、三次元、つまり我々の存在する世界は、
「平面に高さを持った立体の世界である」
 というものであった。
 そして四次元というのは、さらに、そこに時間の軸が存在しているというものであり、世界の中で時間というものが存在しているわけではなく、世界を構成するための構成要件として、時間が存在しているというものであった。
「つまり四次元の世界を架空の出来事として創造したその番組では、扉を開けると自分の知らない見たこともない虚空の世界が広がっていたり、どこかに向かって進んでいるのに、また振り出しに戻ってみたりして、結局は同じところをずっと行ったり来たりしている」
 という発想であった。
 ただ、それが本当に時間を超越しているのかどうかということはよく分からない。
 一つ言えることは、自分たちが存在している空間に、実はもう一つの空間が存在し、そこに落ち込んでしまうと、その世界を四次元の世界だという発想にも至っているということであった。
 しかも、その世界は一つや二つではないようで、
「無限に存在している空間」
 と言えるのではないだろうか。
 その無限が時間であって、無限の時間というものが、張り巡らされている。それを考えた時、隼人は、本を思い出した。
 薄っぺらい紙が、二、三枚重なったところで、厚みなどまったく感じないはずだったのに、数百枚ともなると、少し厚めの本が出来上がるではないか。どんなに薄いものでも、ゼロではないものを重ね合わせると厚みを帯びてくるものである。
 ゼロの正反対の概念が無限であるとすると、無限も有限とどこが違うのかと考えてしまう。
 考えられることとすれば、やはり。
「無限にはどんなに細分化しても、無限は無限でしかない」
 ということになるのだろう。
 二次元が三次元になるには、数が大きな力を持っていたが。三次元が四次元として成り立つには、無限への解釈が必要になる。
 四次元を肯定するなら、無限をも肯定しなければなるまい。
 三次元の世界を、
「薄っぺらい紙」
 だと考えると、出来上がった本は、
「同じ空間に存在している、限りなく広がるパラレルワールドだ」
 と言えるのではないか。
 パラレルワールドこそ、四次元の世界の入り口であり、その数は無限だと言われる発想であるに違いない。
 子供の頃に見たアニメで、四次元の世界とは発想が違うかもしれないが、
「凍り付いた世界」
 というものがあった。
 光がほとんど当たらず、人間は皆凍り付いたかのように、顔面が蒼白になっていて、身動き一つする人はいなかった。
 そんな中で、最初は、
「時間が止まってしまったのではないか?」
 と思われた世界であったが、実際にはそうではなかった。
 まったく動いていないと思われた世界において、人間の胸くらいの高さのところを、数センチくらいの何かが、ゆっくりと宙に浮きながら進んでいるのだ。
「何だ、これは?」
 と思って見ていると、それは何やら回転しながら前に進んでいるようだった。
 主人公が口を開いた。
「ここは、まったく凍り付いた街ではないんだ」
 という。
 それを聞いたもう一人が、
「どういうことなんだい?」
「ほら、ここにあるのは、宙に浮きながら少しずつ進んでいるだろう? これは何だと思う?」
 と訊ねると、
「さあ、よく分からないけど」
 というので、
「これはピストルの弾丸さ。だから、このように回転しながら前に進んでいるのさ。つまりここは凍り付いているわけではなく、ものすごく遅いスピードで進んでいる世界だということではないのだろうか?」
 と言った。
「よく分からないけど」
 と聞かれて、
「そうだなあ、四次元の世界だとでも思えばいい。四次元の世界は存在すると言われているけど、それを見たものは誰もいないんだ。だから証明もできないけど、これが四次元の世界だとすると、いろいろと辻褄が合ってくるような気がするんだ」
 というではないか。
 もう一人の人物は、まだいまいち状況がよく分かっていないようだった。
「四次元の世界を見た人間なんていないんだ。ただ、時間を支配できる、いや時間に支配される世界と言ってもいいだろう。三次元にも時間という概念はあるが、あくまでも、それは規則的に進んでいるものであり、まるで心臓の動きのように、存在していて当たり前だという発想ではないのだろうか?」
 というのを聞いて、もう一人の人物は主人公の話についてはよく分からなかったが、
「この男は、きっと事の真相に気づいているんだろうな?」
 ということは分かっていたのだ。
 その世界は、もう皆さんにも分かったと思うが、
「時間がものすごくゆっくりと経過している世界」
 だったのである。
 弾丸がゆっくり進んでいることで分かるだろう。凍り付いているように見えているのは、ゆっくりと進んでいるからだった。
 だが、どうして彼らはその世界を、
「ゆっくりと時間が経過している世界」
 だということにすぐに気づけなかったのだろうか?
 どうしてなのかすぐには分からなかったが、少しして気付いたのは、もう一人の男の方だった。
「そうか、風は普通に吹いているんだ。だから、ゆっくり進んでいるという自覚がなかったんだ」
 ということであった。
 それには主人公も納得がいったようで、
「なるほど、そういうことか」
 と言ったが、実はその理屈が解明されたことで、余計に別の問題を感じるようになったのだった。
「じゃあ、どうして、風だけが普通に吹いているんだ?」
 という問題だった。