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逆さに映る

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「今はSNSとかが主流なので、アイドルの熱愛が発覚すると、結構掲示板が荒れたりしているよね。擁護派もいるにはいるが、ほとんどは、裏切られたという思いの人が多いよね、普通に考えれば。規則を守れなかったことと、チームのイメージを損ねたことでの、他のメンバーや事務所に対しての裏切り行為ではないだろうか。でも、中にはね。見つからなければいいんだ。何が悪いと言って、見つかったことが一番悪いという人もいる。そういう意味では、いつどこで、週刊誌の記者がカメラを構えて待っているかということだね。要するにアイドルというのは、どこまで行っても、商品であり、ファンに疑似恋愛を想像させることしかできず、お金を使わせることで、その欲求を晴らさせるというものだと言えるのではないかな?」
 と彰浩は言った。
「うーん、裏の話を聞いていると、本当は聞きたくもなかったような話にも思えるんだけど、それでもアイドルになりたいという人は後を絶たずに、似たようなグループはたくさん出ているもんね。まだまだ今のようなアイドルの形って続いていくのかしらね?」
 と、いちかが聞くと。
「それはそうかも知れないね。今メジャーデビューしているアイドルは結構いるけど、地下アイドルとして活動しているグループはもっとたくさんいるんだろうね。必死になってアルバイトをすることで食いつなぎ、時間があれば、レッスンを重ね、歌やダンスの教室に通い、または、オーディションなども受けたりする。アイドルと言っても、歌って踊るだけがアイドルではないよね。バラエティーに出たり、ラジオや部隊などに活路を見出したりね。勉強していい学校に入って、卒業後、アナウンサーなんて人もいたりする。中には、AVデビューする人だっているくらいだからね」
 というのを聞いて、
「えっ、av女優もいるの?」
「うん、AVというのも結構バカにできないんだよ。AV女優も男優の結構たくさんいて、AVに関わっている人は本当にたくさんいるんだ。AV女優で売れっ子ともなると、年間で百本以上の作品に出ている子だってたくさんいる。ということは、毎日必ずどこかで何組かの撮影が行われているということであり、それを思うと、スケジュール管理は、芸能人や政治家に負けずとも劣らずと言ってもいいかも知れないよね。引っ張りだこの女優になると、半年前くらいまでのスケジュールがびっしり詰まっているかも知れないくらいだよね」
 というのを聞いたいちかは、
「そうなんだ、AV業界というのも、バカにできないものね。蚊が得てみれば、レンタルショップと同じくらいの広さの店に、AVのCDが所せましと置いてあるんだから、当然のことよね?」
 というので、彰浩も、
「そうだよ、彼女たちだって、立派な女優だと俺は思っているんだけどね。絡み以外のべ面でも演技も、結構上手だと思える子だっているからね」
「でも、それだけたくさんの数の作品を撮っているんだから、それだけ男優の数も、監督を含めたスタッフの数もそれだけいるということなんでしょうね」
 といういちかに。
「その通りさ。監督をやりながら、編集や脚本も書いている人は結構いるからね。数をこなそうと思うと、予算の問題もあるので、結構大変なものなんだろうね」
 と彰浩は言った。
「いちかは、AVなんか見ないんだろうな」
 と、そうであってほしいという思いを込めて彰浩は聞いたが、
「えっ、そんなことはないよ。友達のところでたまに見たりするもの」
 と、あっけらかんとしていうので、彰浩は呆れてしまった。
――女の子というのは、そこまであっけらかんとしているものだろうか? 見ていることはいい悪いの問題ではなく、そのことを平気な顔をして、相手に言えるという神経が不思議な感覚にさせるのではないか――
 と感じさせるのであった。
「私はAV女優を見るのが好きなの。そのあたりの女優や、アイドルの女の子よりも、綺麗だったり、可愛いと思う子が結構いると思うのよ。CDのジャケットなんかみると、アイドル顔負けの子って結構いるし、元アイドルの子などは、アイドル時代こそ、地味で清楚なイメージだったけど、AV女優ともなると、完全に性癖が顔に出ているような女の子もいたりするから結構すごいと思うのよ」
 と、いちかは言った。
「いちか、お前、そこまで語れるほど、AVを見たりしているんだね?」
 というと、
「うん、そうね。だって、私は今思春期の真っ只中なのよ。そういうものを見て、、欲求不満を解消させないといけないと思うの。でも一人で見ていると、悶々としてしまうような気がして、皆で見ることにしているのね」
 といちかがいうではないか。
 それを聞いた彰浩は、少し呆れた気もしたが、よく考えてみれば、自分が思春期の頃はもっとすごかった気がする。女の子が気になるというのもあったが、同じ世代の男も意識しないわけでもなかった、
 それは、彼らの顔にできたニキビや吹き出物を見ていると、普段から欲求不満を貯めていて、アダルトビデオくらいでは、発散させることができないのではないかと思えるほどであった。
「俺にもあんな汚らしいものがあるんだろうか?」
 と思うと、あんなやつらと一緒にされても困るという思いが強かった。
 そんな男の子たちを同年代の女の子が好きになるだろうか?
 ハッキリとは分からなかったが、もし相手をするとすれば、お姉さんのような人ではないかと思えて、いわゆる、
「筆おろし」
 をお願いするお姉さんタイプの女性、彰浩の近くにはいなかったような気がしたので、、そんなお姉さんに、筆おろしはしてもらえなかった。
 彰浩が童貞を卒業したのは大学に入ってからだった。
 それまで付き合った女性とは、セックスをするというシチュエーションにはならなかった。
 誰かがお膳立てをしてくれなければ、童貞を卒業することはできないのだと思っていた。それは自分だけがということではなく。皆そうなのだと思っていたのだ。
 だから、付き合いった相手が、彰浩のことを、
「セックスを対象にする男としては見ていなかった」
 ということであろう。
 女性の中には、童貞が好きで、童貞キラーと呼ばれている女性もいると聞くが、その人はほぼほぼ姉御肌で、慕ってくれる男の子に優しくするという自分を思い描くことで自己満足していたと言ってもいいだろう。
 彰浩は、彼女たちが好む相手ではなかったということだろう。もし好む相手であれば、女性の方が放ってはおかない。童貞キラーのような女性は、男性に対して、獲物を探す狩人として自分をイメージさせていたに違いない。
 彰浩の童貞は、大学に入ってから先輩に連れて行ってもらった風俗だった。
 さすがに国立大学。高校生の頃は、受験一筋で、それ以外のことは頭になかった人が多かっただろうが、大学に入ってしまうと、自分が置いてけ堀にされてしまったという感覚で、
「早く追いつかないと」
 と感じていたに違いない。
 妹のいちかのことが頭の中になかったわけではない。むしろ、綺麗になった妹にドキドキしないわけでもなかった。
「中学時代に、子守をしたあの子が」
 という思いがあった。
作品名:逆さに映る 作家名:森本晃次