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いたちごっこの、モグラ叩き

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 そういう意味での疑心暗鬼というのは、かなりの力になるようで、一体どうすればいいのか、鶴岡には見えてきているようだった。
「スタートラインが見えてくると、君にも事件の概要が分かってくるんじゃないかな?」
 と、鶴岡は以前からいっていた。
 その鶴岡が、
「そろそろ、スタートラインに立てそうな気がするな」
 というのだから、かなりスタートラインに近づいてきていることだろう。
「ひょっとすると、すでにスタートラインが見えていて、すでに足元にあることで気付かないだけなのかも知れない」
 そう思うと、秋月は身震いを感じた。
 それが、武者震いなのか、それとも他の震えなのか、自分でもよく分かっていないようだ。
 とにかく、いよいよクライマックスにも近づいてきたのではないかと思うと、秋月もかなり興奮しているようだった。
「桜井さんは、何を知っているというんでしょうね?」
 と、秋月は言った。
「それも、そうなんだけど、この間、君がいっていた、桜井君が尋問した人がいたと言っていたけど、松崎さんだっけ?」
 と鶴岡がいうと、
「ええ、確かに、F大学の教授で、スズランなどの毒に関して詳しいようですね」
「なるほど、桜井君は、その松崎という男が、今回の事件に何か関わっていると思っているんだろうね」
 と鶴岡に言われて、
「ひょっとして、鶴岡さんは、松崎という男を最初かあマークしていたんですか?」
 と秋月に聞かれて、
「ああ、そうだよ」
 と鶴岡がいうので、
「あの松崎という男は、この事件でどういう役目を帯びているんでしょうね?」
 と秋月がいうので、鶴岡は心なしか表情が緩んだ。そして、
「それはね。秋月君。君と同じような役目を帯びているんだよ」
 と、鶴岡はいうではないか。
 その言葉にはさすがに秋月もビックリしたようで、
「ええっ? それはどういう意味ですか?」
 と、まったく、想像がつかないと言った様子だった。
「今君が思っていることそのものさ。もっとも、想像はできなくもないが、自分の中で認めたくないという思いが強いんだろうね」
 と鶴岡がいうのを聞いて。
「まさにその通りです。何がどうして、そういう考えになるのかということが分からない、いや、分かろうと思わないんでしょうね。その感覚があるから、想像もつかないんですよ」
と、秋月がいうと、
「それが錯誤というのか、たとえば、三段論法のような発想を、よく推理をする時には考えてしまうだろう? そうすると考えが節目でまとまるというのかな? だけど、逆にいえば、一つ道を間違えると、錯誤に結び付く気がするんだよな」
 と鶴岡が言ったが、秋月は怪訝な表情になり。
「どうしてですか? 逆のような気がするんですが。一気に推理を貫いた方が、最初に間違えれば、最後まで間違った路線になると思うんですよ。でも、節目節目でもう一度考えるチャンスがあれば、方向を元に戻せるんじゃないですか?」
 というと、
「いやいや、元の方向に戻すには、完全に方向を急角度に変える必要があるだろう。ということは、それだけ最初の路線とはまったく角度も違うことになる。しかもだよ。本当お道を理解していなければ、通り過ぎてから、どこで方向を戻せばいいのか、それとも、今の道を進む方がいいのか、まったく分からないよね。だから、一度変えてしまうと、また変えることへの恐怖はハンパないような気がするんだ」
 と、鶴岡は言った。
「なるほど、そういうことですね。一度交わってしまって、反対側に出ると、それまで見えていたものすら見えなくなる。つまり、ゴールも分からないくなるということですよね?」
 と、秋月がいった。
「そう、その通り、錯誤というのは、一度狂ってしまうと、それを戻すことの方がかなり大きなリスクを伴うということを、誰も理解していないんだよ。だから、元に戻そうと考えて、結局、明後日の方向にいってしまうということになるんじゃないかな?」
 と、鶴岡は言った。
「今の鶴岡さんのお話が、この事件の何か神髄を行っているような気がするんですが、違いますかね?」
 というので、
「私もそう思うんだよ。ただ私は事件の半分しか知らないので、そういう意味でも、桜井刑事に遭って、話を聞いてみる必要があるのさ。きっと桜井刑事も同じことを考えているような気がするんだけどね。そういう意味で、君と、松崎という男の存在が、この事件を微妙な違いを修正してくれるようでそれを思うと、いきなり四人で話をするのは危険な気がするので、とりあえず、桜井刑事と二人で話をする方が先決だと思うんだよね」
 と鶴岡は言った。
「鶴岡さんの話を聞いていると、信憑性があるのを感じられて、不思議な気がしてきあすね」
 と、秋月は言った。
 鶴岡と桜井刑事との再会は、それから一週間後に決まった。今回は特別に、秋月が参加することを桜井刑事に伝えると、
「ええ、もちろんいいですよ、鶴岡さんが連れてこられる方ですからね」
 ということで、いかにも鶴岡という人間が、桜井刑事に信頼されているのかということを示している言葉だと思った。
 秋月の方としても、
「自分にだって、桜井刑事に負けるとも劣らないくらいの言葉をいうことだってできる」
 という自負もあった。
 さっそく話をすることになったのだが、そこで、鶴岡が一言、謎めいた言葉を口にした。
「真実は一つとは限らないが、事実は一つしかないからな」
 という言葉だった。
 それを聞いた桜井刑事は、ニコッと微笑んで、いかにも、
「それくらい分かっているよ」
 と言わんばかりに、返事をした。
「逆も真なりということですね?」
 と言った。
「うむ、よく分かっているね」
 と鶴岡はいって、二人は二人だけの世界に入っているかのようだった。
 まださすがに秋月も二人が何を考えているかというところまでは行き着いていない。
「今の言葉なんだけどね、最初に真実ということから言っただろう? だけど、事実のくだりから言ったとしても、結果は同じように思うだろう? だけどね、何もない時に言われると明らかに感じる意味は正反対に近いくらいのものとなるんだよ。だから、桜井君は、逆も真なりと言ったのさ」
 と、鶴岡は言った。
「なるほど」
 とはいったが、言葉のニュアンスが伝わっただけで、何が言いたいのかまではまったく分からない。
「この事件は、今我々が追っている事件の前に、隠れている事件が存在しているんだよ。そして、それは桜井刑事の方から見ても同じで、桜井刑事はまったく正反対の方向しか見ていないので、我々が見えていない反対側の世界を見ているのさ」
 ということであった。
 それを聞いた秋月は、
「何か、日食と月食というイメージを感じましたね」
 と、さりげなく言うと、
「うんうん、なかなか君は面白い表現をするね。なるほど、鶴岡さんが君を重宝しているという意味が分かった気がしたよ」
 と桜井刑事は、そう言って、さらに続けた。
「鶴岡さんは、あの事件のことを知っていたんですね?」
 と聞かれた鶴岡は、