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トラウマの正体

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 もちろん、初夜にそれまで知らなかった身体の相性の違和感を、初めて感じたという人もいるだろうが、それも果たして、どれだけの人が新婚旅行まで身体の関係がなかったと言えるかということを考えると、身体の相性は、成田離婚とはあまり関係がないような気がする。
 だが、それだけ、結婚してすぐのカップルが別れるかというのは、昭和の時代では信じられないほど増えたことだろう。
 結婚してから一年もしないうちに、離婚する人も多いのではないだろうか。
 とにかく、身体であれ、考え方であれ、相性が合わないのであれば、仕方のないことだ。そのままズルズルと結婚生活を続けるのは苦痛ではないだろうか。
 中には、
「子供ができれば、変わるかも知れない」
 と思って、子供ができてしまうと、今度は奥さんの方のすべての神経が子供に行ってしまい、旦那はストレスだけを抱えることになると、どうなるだろう?
 不倫に走る旦那もいるだろうし、風俗を使う人もいるだろう。どちらにしても奥さんとすれば、許せないに違いない。旦那の方は、奥さんが構ってくれないことや仕事でのストレスがたまり、奥さんは奥さんで、子供に全神経を集中させなければいけないことで、お互いに、
「交わることのない平行線」
 を描くともいうべきストレスを抱えることになる。
 そうなってしまうと、選択肢は離婚しかないのではないだろうか。
「子供のために、夫婦一緒で」
 と言って、我慢を重ねる夫婦もいるだろうが、絶対に修復が不可能だと思えるのであれば、離婚も早い方がいい。
 その家の事情にもよるのだろうが、結婚も離婚もそれほど難しいということだ。
「離婚は、結婚の数倍の疲れが残る」
 と言われるが、まさにその通りだろう。
 下北夫婦には、そんなわだかまりはまったくなかった。
 お互いに気を遣いながら夫婦生活を送っていて、炒めは二人ともストレスがないように見える。
 しかし、本人たちも今は気付いていないストレスが溜まってしまう場合も結構あるだろうから、一概に表面上だけで判断はできないだろう。
 それでもおしどり夫婦と呼ばれる二人は、本当に余計なストレスを感じない。
 夫婦間でストレスを感じるというのは、内面というよりも、まわりにいる人に対してストレスというものは伝染するもののようで、気が付けばまわりがぎこちなくさせられてしまうことがある。内面から醸し出されるストレスをまわりが気を遣おうとして、どうすればいいのか分からずに、自分のストレスが発散しているのだと感じられる。
 そうなってくると、すべてのストレスを自分のストレスだと勘違いし、余計な気をさらに使ってしまうという悪循環が生まれるのではないだろうか。
 中には分かっている人もいて、自分の中で必要以上なストレスを感じると、そのストレスが自分のまわりから受ける影響だと気付き、そして、元凶である相手と距離を置くようになる。
 そうなると、それまで付き合ってくれていた友達が、さりがなくであるが、近づかなくなったことで、
「自分の何かに原因がある」
 と思うのだが、そのストレスが自分の配偶者にあると感じると、配偶者を一方的に憎むようになる。
「俺と友達の関係に、割り込んできた」
 と感じる。
 そもそも、友達との関係と、夫婦間の関係とはまったく違うものだと思っている。それは結婚した時点で、配偶者になり、友達のような関係から家族になったからであって、家族というのは、自分にとって、いかに親密なもので、守らなければいけないものかという覚悟を示さなければいけないものなのだろう。
 だが、下北夫婦には、そのようなわだかまりもなく、うまくできているのは、覚悟をしたという意識を、無意識にできたことが大きかったのではないだろうか。
 覚悟というものを、責任として意識し、義務のようになってしまうと、それがストレスになり、お互いの関係のギクシャクに繋がっていく。それがないのが一番なのだろうが、なかなかそうもいかないものである。
 しかも、その理屈を分かっていて、
「自分はちゃんとできている」
 と思っているとしても、実際に、どこまでうまくいっているのかということを考えると、相手をその時意識していないかも知れない。
 それはわざと意識しないもので、
「自分がうまくできていれば、相手も合わせてくれる」
 という思い込みを感じてしまいかねない。
 その思い込みが実は怖いものであって、お互いの行き違いやニアミスというものは、このあたりの思い込みからくるのではないかと思える。
 離婚経験者の中で、
「途中会で、あれだけ仲が良かったのに、急にうまくいかなくなり、ギクシャクしてしまうと、離婚までに時間はかからなかった」
 という人もいた。
「最初の三年間は、ずっと新婚夫婦のような仲の良さで、他人が入れないくらいの仲睦まじさだったのに、気が付けば、話もしなくなっていて、相手からいきなり、離婚を言い出された」
 などという話も聞いた。
 これは女性だけに限らないのかも知れないが、
「女性というのは、疑問が生まれてきても、その疑問の正体、そして、自分が最終的にどうしたいということが自分の中で決定していないと、自分から口に出すことはない。自分の妻は何も言わないから、悪い方には考えていないんだ」
 と思っていた人がいたというが、
「そんな妻がいきなり離婚したいなどと言い出すから、もうどうすることもできない。理由を聞いても、俺は結局変わらないとしか言わない。こちらとすれば青天の霹靂で、もうどうしようもないところまで追いつめておいて、こちらに選択権を与えないというのは、卑怯だよな」
 と言っていたが、確かにそうだ。
 だが、奥さんの方とすれば、自分が苦しんでいるのに、見て見ぬふりをしていると思っていたようで、そうなると、奥さんの方は突っ走るだけだったのだろう。
 つまりお互いに気を遣っているようで、遠慮がすべて相手に結論をゆだねるという逃げになってしまい、それが不信感に繋がっていくのだろう。
 おしどり夫婦とはいえ、いつ何時、このようなことにならないか分からない。おしどりに見えるほど、闇は深いのかも知れないと思うと、芸能人でも、
「今話題のおしどり夫婦」
 などと言われて、夫婦でテレビで共演したりしているが、気が付けば離婚騒動が持ち上がっていて、理由は、どちらかの不倫だったりする。
 おしどり夫婦と言われてテレビに出ていた頃には、もうすでに、引き返せないところまで行っていたというのもよく聞く話だ。
「夫婦って何なんだろうな?」
 と考える人も多いだろう。

                泣かぬなら

 下北夫婦の結婚三年目くらいだっただろうか。奥さんのゆかりの妹が、ゆかりを訪ねてやってくるという。なまえはちひろというらしい
「今年大学に入学したんだけど、それでこっちに出てくるらしいの。大学の近くのワンルームマンションを借りて大学に通うらしいんだけど、一度遊びに来たいと言っているので、呼んでもいいかしら?」
 と言われた。
作品名:トラウマの正体 作家名:森本晃次