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トラウマの正体

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 しかし、女は皆同じ顔である。もう一人の自分が夢に出てくるのが怖いのだから、自分以外の人間でも同じ顔をした人が出てきたのだとすれば、これも、相当恐ろしいと言えるだろう、
 だから、自分の中で敢えて相手の顔が見えないようにしたのではないか、つまり、顔が分からないということは、きっと皆同じ顔だということが分かり、ただ、ハーレムとして自分に快楽という癒しを与えてくれる人であることを望んでいる。
 そして、もう一つ感じたのは、その相手の顔が、
「まだ見ぬ理想の相手なのではないか?」
 という思いであった。
「相手が誰かということは想像がついても、その人の顔が分からない。そんな相手なのではないか?」
 と、そんな風に感じるとその人がゆかりの妹である、ちひろではないかということが分かった。
 だから、この夢は、ちひろが自分の目の前に現れる前に見た夢であり、ちひろと会った後で見た夢ではないかと感じたのは、その夢が怖い夢で、何か暗示を自分に与えるためではないかと感じたからだ。
 もし、その暗示が警鐘であって、
「好きになってはいけない相手を好きになってしまった自分に対しての警鐘」
 というものではないだろうか。
 しかも、これはただの不倫ではない、義理とは言え、腹違いとはいえ、自分の嫁の妹ではないか。
 これはハーレムではなく、処刑場における刑の執行前の、
「悪い夢」
 これは悪夢ではない、警鐘ではあるが、ひょっとすると、畜生道に勝るとも劣らないという意味を自分に教えているのではないか。
 自分の中で、
「相手が血の繋がりさえなければいいんだ」
 という思いがあるとすれば、それに対する戒めではないだろうか。
 だが、冷静になって考えてみれば、
「近親相姦の何がいけないのか?」
 という思いに至ってしまう。
 そう思って、以前調べてみたことがあった。
 近親相姦というのは、古来より、禁忌なことであると言われてきているが、日本において、近親相姦を罰する罪はない。幼女との性行為に対しての罪はあるが、近親者での性交を罪だとすることはないのだ。
 確かにそうだ。どうして近親相姦がダメなのか。医学的な見地があるのだろうか?
 日本での近親相姦は罪ではないが、これが結婚ということになれば、話は変わってくる、三親等以内では結婚できないと、民法の親族相続法で謳っているのだ。
 ただ、医学的には証明はされていたい。近親相姦を禁忌する理由として、
「近親間での出産の場合、病弱であったり、障害のある子供が生まれる可能性が高い」
 と言われているからだという説がある。
 そしてこのような出産を避けることで、ずっと系譜されてきた遺伝が強く、子孫を残してこれたことから、
「近親相姦というのは、忌まわしいものだ」
 と言われるようになったという説がある。
 さらに、
「人間というのは、本来、近親間の性交を嫌う感情を持っている」
 という説もあり、この説もあくまでも説だということで、元々は何から近親相姦を禁忌だと言い始めたのかということは分かっていない。
 そういう意味で。どこまで近親相姦というものが本当に禁忌と言われるほどいけないことなのかは分からない。
 考えてみれば、古代から受け継がれてきた、
「万世一系」
 と言われる天皇家であっても、近親相姦による血の繋がりがあったのも歴史的な事実である。
 そうやって調べてくると、近親相姦に対して、どのように考えればいいのか分からなくなった。
 確かに、近親相姦が悪いことではないと思えば思うほど、怖くなるのだ。過去から脈々と受け継がれた言い伝えを、簡単に否定できない自分もいるのだ。
 そんなことを考えていると、却ってちひろのことが気になってしまう。義理でもあるし、腹違いということであれば、近親相姦という発想はない。しかし、やはり倫理的に許されることなのかということも気になる。
 不倫というのも、自分にはできないと思っていた。もちろん、ゆかりのことを愛しているからなのだが、今回は少し違う。
「ゆかりのことを愛しているから、ちひろのことを愛してもいいんじゃないか?」
 と、到底受け入れられるものではない言い訳なのは分かっているが、一度思い込むとそうもいかなくなった。
 そもそも、倫理に逆らうことを性癖の上では間違っていないと思っていたのかも知れない。性欲というものが、あくまでも、本能から来る条件反射であるかのごとくに考えると、好きになった女性が義理の妹だというシチュエーションに、興奮している自分がいる。
 それに、ちひろを見ていると、どこか自分に似ている気がした。初めて会ったようなものなのに、どうしてそう思うのかというと、第一印象からそう感じていたのだ。
 他の人には感じることのない思いを感じたのだから、信憑性はあるような気がする。まわりから見て言い訳にしか見えないことであっても、泰三にとって、
「どういう道を通ったとしても。行き着く先は同じだ」
 と思えたのだった。
 そう思えることが泰三にとっての信憑性なのだが、まわりから見れば言い訳にしか見えない。そう思って考えると、
「よくテレビのワイドショーなどで言い訳をしている人がいるが、意外とその言い訳は、真理なのかも知れない」
 と感じたりもした。
 ちひろが誘ってきたのは、そんな泰三の気持ちを思い計ってか、
「お兄さん、どうしたの? 私を見て、想像してくれているのかしら?」
 と言って、ニコリと笑う。
 まるで、女優を見ているようだ。
――この魔力のような笑みに最初から魅了されてしまっていたのかも知れない――
 と感じたが、結局何も言えなかった。
 きっと、この時何も言い返せないことで、その後の二人の関係が決定したのかも知れない。
 言いなりとまではいかないが、ほぼちひろに逆らえない感じだった。
 ひょっとすると大学で、
「私、お義兄さんとお付き合いしてるのよ」
 などと言っているのかも知れない。
 実際に大学でも話しているのだった。
「えっ、不倫の相手が義兄なの?」
 と言われて、
「うん、そうよ」
 というだろう。
「お姉さんに悪いという思いは?」
 と聞かれて、
「あるわよ。でも、これとそれとは別問題。姉が好きな部分を私は好きになったわけじゃないの。人間なんて、一面だけじゃなくて、多面性を持っているものなのよ。それに気づけるか気づけないかで、その人のすべてを愛しているかどうかが決まってくる。きっとお姉さんは、お義兄さんの影の部分を知らないのよ。いや、しているかも知れないんだけど、見ようとしていないみたいなの。だから、その部分を私が貰うの。貰うと言っても、ずっと私のものにしようとまでは思わないわ。だから、後ろめたさというのは、それほどないかも知れないわね」
 とちひろがいうと、
「でも、お義兄さんがあなたに対して真剣になるかも知れないわよ」
 と言われると、
「そのあたりは、大丈夫。お義兄さんにのしをつけて、あねに返してあげるわ」
 というと、
「でも、そのお義兄さんが逆上したりしない?」
 と言われて、
作品名:トラウマの正体 作家名:森本晃次