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トラウマの正体

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 昭和初期に起こった不況や、東北の飢饉の影響で、日本国内で、増加傾向にある日本国民を養っていけるだけの国力は日本にはなかった。
 広大な未開の土地である満州を手に入れて、そこに日本人を移住させ、さらにはそこを開拓させて、豊富な資源を日本にもたらすという一石二鳥の考えがあったのだ。
 さすがに植民地にしてしまうと、列強からの圧力もあるということで、満州に独立国家を築いたのだが、そこは、関東軍の傀儡国家だったのだ。
 満蒙問題の解決は日本の生き残りの最重要課題であり、満州事変は、それを一挙に解決させるために必要なことではなかったか。
 その後、日本は中国大陸でも、元々は軍による衝突から次第に事態が大きくなり、収拾がつかなくなったことで、シナ事変に突入してしまった。
 欧州は戦争状態となり、アジアも、戦争に巻き込まれることになった。中国との戦争は全面戦争となり、ただ、宣戦布告を行っていないということで、あくまでも事変であった。
 盧溝橋事件からが日中戦争と言われているが、それは正確には誤りである。盧溝橋事件に端を発したシナ事変には、日中、両国とも、宣戦布告を行っていなかった。
 国際的には、
「宣戦布告を行っていない国における戦闘状態は、戦争とは言わず、事変という」
 というのが、一般的である。
 ではなぜ、宣戦布告が行われなかったのか?
 その理由は、それぞれの国の事情によるのだ。
 国際法においては、宣戦布告をして戦争状態になった場合、第三国はその戦争に対して、自国の立場をしっかりとしておかなければならない。つまり、どちらかの国に味方をする。あるいは、中立状態でいるというものだ。
 中立状態になると、どちらかの国に対して、援助をしてはいけないということになる。中国のように、米国などから武器弾薬の援助を受けていたところは、もしアメリカが、宣戦布告の段階で、中立を表明すれば、中国に対しての援助は断たれることになる。
 もし、アメリカが中国支持ということになると、アメリカは日本を敵とすることになり、必然的に戦争状態に巻き込まれることになる、
 アメリカという国は、
「モンロー主義」
 という理念があり、
「他の国や地域の紛争や戦争に積極的に介入しない」
 という考えを貫いていたのだ。
 そうなると、立場は日本も同じで、当然同じ理由から、宣戦布告をしない方がいいということになり、結局、宣戦布告なき戦いが、行われることになるのだった。
 アメリカは最初、日本に対して融和的であったが、戦線が拡大するにつれて、日本に対して辛辣になってきた。
 その理由の一つが、アメリカにおけるイギリスとの関係だった。
 ヨーロッパにおける戦争で、日本が同盟を結んでいるドイツ、イタリアと戦争をしているのが、イギリスであった。
 イギリスはアメリカに対して、戦争参戦をお願いしていたのだが、アメリカは前述のモンロー主義という考え方があり、議会を通さなければ、戦争に参戦することはできないという国であった。つまり、国民に対し、戦争をすることの意義が示されなければ、戦争ができない国だったのだ。
 特に当時、アメリカは、どこからも攻撃を受けることもなく、戦争に突入する理由はまったくなかったのだ。
 だが、大統領はイギリスからの呼びかけに戦争を行う必要に迫られていた。それによりいかにして参戦と行うための大義名分を得るかということが問題だった。
 そこで利用したのがアジア情勢だった。
 日本を追い詰めることで、中国に対しての利権や立場を強くできるということ、さらにそれによって、日本がアメリカを敵として立ちはだかってくれれば、ドイツ、イタリアに対して、宣戦布告もできるというものだった。
 ヨーロッパの国と手を結び、日本に石油などの資源や、軍事物資となる鉄などの輸出を全面禁止をしてしまうと、日本が取る行動は決まってくる。
 アメリカからの外交交渉において、
「中国からの全面撤退などの条件」
 を呑むか、あるいは、
「自給自足を行うために、南方の豊かな資源地帯に侵攻するか?」
 という二つに一つしかなかった。
 前者は、陸軍を中心に、日本が飲めるわけのない状態だった。それでも、何とか戦争回避における外交交渉を行ってきたが、アメリカの要求はさらに大きなものになってくる。
 日本は、北部仏印に進駐し、さらに南部仏印にも進駐した。
 これで日本が自給自足の道を歩むことが表明されたようで、アメリカは最後通牒をつきつける。
 それがハルノートと呼ばれるもので、日本の権益を明治維新の状態にまで戻すということだ。
 これに従えるわけもない日本は、海軍は真珠湾攻撃、そして陸軍は、マレー半島上陸という両面作戦を結構することによって、大東亜戦争が勃発することになったのだ。
 ちなみに、真珠湾攻撃を、
「宣戦布告前に攻撃したので、不意打ちだ」
 と言われていて、ほとんどの日本人がそう信じていると思うのだが、作者はそうではないと思っている。
 そもそも、最後通牒というものを出した時点で、それを宣戦布告とみなすというのは、国際的にも周知のことであったので、ハルノートが示された時点で、アメリカからの宣戦布告だと言ってもいいはずだ。それを認めるのであれば、アメリカが使った二つの核兵器攻撃、あれも、事前通告がなかったという方が、国際法違反ではないかという意見があってしかるべきではないかと思うのは、筆者だけであろうか?
 つまり、日本が第二次世界大戦に突入することになったのは、アメリカの戦争への世論の動きを高めるためのやり方として、日本に宣戦させるためだったわけである。これは、今では公然の事実であり、したがって、日本が軍部の暴走によって、世界大戦に突入することになったという通説が果たして本当なのかどうか。怪しいものだと言えるのではないだろうか。
 日本がこれにより、英米蘭に宣戦を布告したことで、今度は中国が日本に宣戦を布告することができる。援助国であるアメリカが、敵対している日本と戦争になったのだから、今度は堂々と日本に対して、連合国側から参戦することで、アメリカと同盟国になることで、物資が公然と入ってくることになるのだ。
 いよいよ日本が孤立してしまうことになるのだが、日本には戦争を行う上での大義名分があった。それが、
「アジアの解放」
 であった。
 アジアの国々は、前述のように、欧米列強から植民地となっていて、それを独立に導くことで、
「大東亜共栄圏」
 と呼ばれる、アジア各国が毒室した上で、列強からの統治のよらないアジアでの共栄を日本を中心に目指すというものであった。
 そういう意味で、満州事変において建国された満州国の理念というのが、
「五族協和と王道楽土」
 というものであった。
 五族協和の五族とは、
「日本民族・漢民族・朝鮮民族・満州民族・蒙古民族」
 の五民族をいい、その思想が、そのまま、
「大東亜共栄圏」
 に結び付くのである。
 そういう意味で、かの戦争は、一般的には、
「太平洋戦争」
 と呼ばれているが、本当は、
「大東亜戦争」
 というのが正しいのだ。
 回線当時、日本政府は閣議決定で、盧溝橋事件から始まる戦争を、
「大東亜戦争と命名する」
作品名:トラウマの正体 作家名:森本晃次