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「路傍の石」なる殺人マシン

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「ええ、そうです。まず桜庭を殺したのは、僕は川村だと思っているんです。彼には桜庭を殺す動機はないからですね。だけど、彼には進藤を殺す動機はありありなんです。だから、川村がこの犯行に加担したのは、進藤は確実にお前にアリバイを作ったうえで殺すからと言われたんでしょう。だから、何のゆかりもない桜庭を殺害した」
 と隅田は言った。
「だけど、もしそうだとしても、進藤を確実に誰かが殺してくれるとは思っていないでしょう? 誰にやらせたというんだい?」
 というと、
「それはきっと、行方不明になっている川村にやらせたんでしょうね。きっと川村には桜庭を殺す動機があったのかも知れない。これは私の想像なんですが、この事件には、もう一つ、表に出ていない犯罪があると思うんです。そして、これが、本当の、いや、表に出せる犯罪の動機だと思っているんです?」
 と隅田刑事は言ったが、それを聞いて、桜井刑事を始めとして、皆頭を抱えていた。
「それは一体どういう犯罪なんだね?」
 と桜井刑事が聞くと、
「ここで出てくるのが、例の山崎が言っていた、川村のおばあちゃんが引っかかったという詐欺事件。それに、桜庭と一緒に関わっていたやつがいるんだ。本当はそいつの殺害が一番で、次が桜庭だったのさ。桜庭だけが死体で発見されれば、事件は二人を結び付けないでしょう? しかも最初に眞島という関係のない人物を殺しておいて、さらに、第二、第三の犯罪が交換殺人などという複雑なものであれば、警察もそれらずべてのややこしく絡み合った、らせん階段が二つに捻じれたような犯罪に気づくわけもない。犯人はそう思ったんでしょうね」
 とまるですべてを見透かしているように、隅田刑事は言った。
「よく分からないな。一体、その犯罪とは何で、犯人は誰だというんだい?」
 と聞かれた隅田刑事は、
「本当の犯人は、山崎ではないかと思うんです。これは、最初に犯行を考えていた川村の存在があって、川村を焚きつけることで、事件にしようと思った。そして、この見えていない犯罪というのは、第二の桜庭の殺害と、第三の進藤の犯罪の間に入っていると思います」
 と聞かれた隅田は、
「どうしてそこだと思うんだい?」
「たぶん、川村は、桜庭を殺すことを戸惑っていたんじゃないでしょうか? でも、進藤の事件の前に、本当に殺したいやつを殺害しておいて。その犯罪を闇に葬ることができるような連中ですから、今度は自分が殺されて、そこかに埋められればどうしようもないですよね? 警察からはいくらアリバイがあるとはいえ、桜庭殺害を疑われ、犯人たちから、殺人をしないと、お前を殺すというデモンストレーションをされたんだから、もう進藤を子留守しかない。だから、この犯行は、この場所でしかダメだったわけで、それが、本来の殺害の動機を達成させるためと、川村への脅迫という意味で、一石二鳥だったわけですよ」
 と隅田刑事は言った。
「なるほど、面白い推理だね」
 と、桜井刑事は言った。
「ということは、本当の犯人は山崎で、一番の動機を持っていて、利用されてしまったのが、川村だということだね?」
 と柏木刑事が言った。
「僕はそう思っています」
「じゃあ、山崎の本当の動機はなんだったんだろう?」
 と聞かれて、
「桜庭の殺害だと思います。山崎は、二年前に付き合っていた女性が自殺しているらしいんですが、それは、誰かに暴行されたからだと言います。その相手が、桜庭と、桜庭とつるんでいた眞島だったんですね。そして、彼女の自殺は、暴行からすぐではなかったと言います。実は彼女は暴行され、妊娠してしまったんだそうです。もちろん、暴行による妊娠です。そのために、彼女は自殺をした。実は彼女は、看護婦だったんですが、やつらに復讐するため、病院から密かに青酸カリを盗んだそうです。それを自殺したあと、彼女の遺書が山崎に郵送で送られてきて、事情を知ったそうです」
「じゃあ、山崎が川村の遺書が郵送で来たと言ったのは、その模倣だったわけなんだね?」
 ええ、そういうことになります。しかも、彼は一人でも犯行を実行しようと思っていたんだが、そこで共犯になりそうな川村を見つけた。そこで利用したわけでしょうね」
「その川村を殺したのは?」
「きっと臆病風に吹かれたんじゃないですか? 山崎にとって川村は一番の問題でした。何とか計画の中で、やつを仲間に引き入れたが、犯行がバレるのも、彼からかも知れない。最初から殺すつもりだったのかも知れないですね」
 と、隅田刑事は言った。
「後の細かいところは、後からの捜査で分かってくるんだろうな
 と桜井刑事がいうと、
「そうなると思います。今回の事件の特徴は、まったく表に見えていない犯行を犯すために、埋もれている殺害にまで至る勇気のなかったおのを、引きずりだして、自分の犯罪に利用したということ。そこに、変則ではあるけど、交換殺人のようなトリックと言えばいいのか、トリックとしては脆弱だけど、成功すれば、これ以上完全犯罪に近いものはないというものを使っていることですね。だから、この犯罪は大胆でなければ成立しません。そんな中に、よくあの気の弱い川村を引き入れたのかが疑問なんですけどね。でも、川村がいないと成立しない犯罪でもあるわけで、それだけに、余計に大胆だったのかも知れないと思うんです」
 と隅田刑事は言った。
「なるほど、そういうことか、よし、それを踏まえてまた捜査を続けていこう」
 tいうことになり、捜査がいろいろと続けられてきたが、捜査内容は、大方、隅田刑事のいう通りであった。
 問題は、目に見えていない犯罪の証拠であるが、それは、川村の部屋の中にあった。
 失踪していて、彼が疑われることもないという犯人の勝手な思い込みから、犯行の痕跡は、川村の部屋に残っていた。
 もちろん、捜索願を出した山崎が調べられ、山崎は観念したのか、犯行をべらべらと話始めた。
「今回の犯行の動機は、彼女が死んだ時、警察が親身になって捜査してくれなかったことさ。おかげで、彼女は自殺になったことで俺の復讐は却ってやりやすくなった。俺には動機がないからな」
 と、嘯いていた。
 さらに、
「この犯行において、よくある殺人事件などでは、犯人とすれば、犯行を行ったことで、誰が得をするか? ということがよく言われるんだが、この犯行において、誰も得をする人物はいないということさ。すべてが損をする中で、誰が一番の動機があるかということだが、犯罪としては複雑ではないが、入り食っている犯罪は、なかなか暴露されにくいかも知れない。だけど、一つ、何かその一つのきっかけを見つけると、簡単に犯行が暴露されるかも知れない。まるで諸刃の件のような気がするんだ。そういう意味では、第三の犯罪が明るみに出ると、終わりかも知れないな」
 と、山崎は言っていた。
 本当は殺さなくてもいい人を殺してしまったというのは気が引けるが、自分以外で殺したい人がいるということでの代理殺人のようなものが、結構あるということは、それだけ平穏に見える世の中も、一歩間違えると、
「誰でも、一人や二人、殺したい」
 と思っている人がいるということだろう。