小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「路傍の石」なる殺人マシン

INDEX|24ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 一番の理由が、山崎の態度が、死体の第一発見者として対面した時と、今回とではまるで別人のような態度を取ったからだ。
 あの時は冷静な部分が前面にあり、初めてのことで気が動転しているようには見えなかったが、今回は明らかに感情が出ている。分かりやすい男のように見えるが、何を考えているのか分からないという曖昧な部分も感じさせた。
 そう感じた時、
――この男は何かを隠している――
 と直感した。
「それで、自殺をしようとしていることに何か心当たりはあるんですか?」
 と聞かれた山崎は、
「実は、彼は少し精神的に情緒不安定だったんです。元々の原因は、彼の祖母に当たる人が詐欺に引っかかって、お金を騙し取られたんです。それから、おばあさんはショックで寝込んでしまって、結局そのまま、死んでしまったんですよ。それが五年前のことになります」
 という話を聞いて、
「それは、災難でしたね」
 と桜井刑事がいうと、
「そのおばあちゃんが貯めているお金というのは、川村のために積み立てていたものだったんです。身寄りのない川村をおばあちゃんが一人で育てていて、きっとおばあちゃんにとっては、生きがいだったんでしょうね。それなのに、詐欺グループの連中はそんな事情など知る由もなく、まるで身ぐるみを剥ぐように、おばあちゃんから生きがいを取り上げたんです。川村は最初、そんなことになっているなんて知りませんでした。おばあちゃんが自分のために貯蓄してくれていることも知らなかったんですね。だから、おばあちゃんが死んだ後にそれが、おばあちゃんの遺品の中にあった日記から見つかって、川村は相当ショックを受けていました。自分のためにしてくれていたのを知ったのが、死んだ後だったからですね。生きているうちなら、もっともっと孝行できたのにってですね。それを聞いて僕も彼の気持ちもおばあちゃんの気持ちもどっちも分かるから、ここまで川村を支えてきました。でも、彼はきっとここで一つの区切りをつけたいんだと思います。最初は彼が死にたいのであれば、それも仕方がないかと思ったんですが、次第に、自分の存在も彼が生きていてこそと思うようになって、こうやって警察に捜索願を出しに来たわけです。それにしても、本当に警察というのは、いつであっても、杓子定規のことしかしないんですね」
 と山崎は言った。
「その詐欺事件に関しては、警察で捜査はしてくれなかったんですか?」
 と聞かれた山崎は。
「捜査ですか? そんなもん、本当に表面の体裁を整えるだけのことしかせずに、結局、証拠がないとかで、犯人たちを基礎どころか、逮捕もしてくれませんでしたよ。家宅捜索すらしない、あの時に、警察なんて、しょせんそんなものだって感じたんですよね」
 と言って、いかにも警察というものが、汚いかということを言おうとしないかということを感じさせる言い分だった。
 それを聞いて、さすがに桜井も何も言えなかった。ただ、気になったのは、
「彼の自殺の原因としては、その時のことからなんですか?」
 と聞くと、
「いいえ、だけど、それが引き金になったのは間違いのないことです。何といっても、彼のモットーは、逃げないことだって言っていましたからね」
 と、山崎は言ったが、それを聞いた桜井は何か違和感があった。
――自殺をしようとしている人間の、モットーが逃げないことというのは、どういうことなのだろう? 話が矛盾しているではないか――
 と感じたのだ。
 今の山崎は動揺している。この間の冷静さとはまったく違っていて、あの時の冷静さを見ていることから、彼が少しでも取り乱すと、すぐに内に籠ってしまうのではないかと思ったのだ。
 ということは、この男が言っていることは、見えているのは、川村のことだけで、まわり全体を見ていないので、きっと今は川村の気持ちを代弁しているかのように感じているのだろう。
 だからこそ、自分のことのように考えていながら、自分を見失ってしまったことで、余計に、自分が川村になったかのように錯覚し、言わなくてもいいことを言ってしまったのではないかと思った。
 そう思うと、桜井刑事の中で、
――この人たちは、自分たちが今回の一連の殺人事件に関係しているということを、自分で告白しているような気がする――
 と感じたのだ。
 自殺というので、デモンストレーションだとは思わない。きっとこの遺書も間違いのないものなのだろう。そして、川村という男が律義なのも分かった気がした。今時、遺書を送りつけてくるというのもおかしな気がしたからだ。メールというのもおかしいのだろうが、しかもこの遺書には細かいことは何も書かれていなかった。理由もなければ、自分の気持ちも書かれていない。これをどう解釈すればいいのだろうか?
 それらのことを踏まえて再度捜査をするといろいろなことが分かってきた。
 捜査の中で、一つのことを調査してくると、見えてくるものがあったのだ。それを調べてきたのは隅田刑事で、彼が気になっていたのは、第二と第三の殺人に、決定的な動機がある人間がいるのに、その人のアリバイが完全であるということであった。
「第二の殺人の桜庭に感じては、彼を殺したいと思っているのが、実は第三の被害者である進藤だった。
 桜庭は過去の犯罪を進藤に嗅ぎつけられて、脅迫していたという。殺された進藤の部屋を覗くと、脅迫に使ったと思われる内容が、押収したパソコンから見つかったという。
「じゃあ、やつは気が小さいというのは、芝居だったというのか?」
 と言われて、
「いいえ、そうじゃないと思います。彼は気が小さいから、かなり綿密に計画を立てたのではないかと思うんです。彼は結構頭がよかった。その頭の良さを彼は自分で過信していたのではないでしょうか? だから自分が殺されるということには、まったく気づいていんかった。そして、今度は、進藤に対して動機がある人間ですが、これは川村だったんです。川村はその時には完全なアリバイがあったのですが、これを考えた時、少し奇抜なアイデアかと思ったんですが、交換殺人ではないかと思ったんです」
 といきなり、小説のようなワードが出てきたことで、さすがに他の面々はビックリした。
「交換殺人なんて、一番成功しにくい犯罪はないか。何と言っても、最初に刊行を犯した人間が不利になるでしょう? 相手が自分の殺したい相手を殺してくれたんだから
 というと、
「それはあくまでも、犯人がそれぞれに単独の場合に言えることであって、それぞれの動機がある人間を操っているやつがいるとすれば?」
 と言い出した。
「そうなんです。この犯罪の特徴は裏で操っていた人間がいるということなんですよ。まず一つ気になったのは、今回、山崎という第一発見者の男が、捜索願を出しに署に来たということだったんです。しかも、まるで桜井刑事に見つかろうとするかのようなタイミングでですね。それで、この事件には、計画された何かがあると思ったんですよ。あまりにも偶然というのが重なりすぎているような気がしたからですね」
 と隅田刑事は言った。
「じゃあ、桜庭を殺したのと、進藤を殺したのは別の人間だというのかい?」
 と柏木刑事に言われた隅田刑事は、