「路傍の石」なる殺人マシン
そういう意味で、実に恐ろしい世の中になったものだ。そのうちに、誰を殺しても後悔も自責の念もマヒしまうかのような人が出てくるかも知れない。
今回の犯人である山崎もその一人かも知れない。
「彼女の仇敵をうつ」
という大義名分はあり、確かに最初は彼女の仇を取るという意味で邁進していたのかも知れないが、そのうちに、
「俺は人を殺すことに対して、何んら嫌な思いはしなくなるのかも知れない」
と感じていたかも知れない。
人が死のうがどうしようが、自分の欲望を満たすことになるのであれば、それはそれでもいいのだという思いは、人を殺すことに一切の罪悪を感じない。まるで、
「戦争だから」
という思いの元、大量虐殺を行うかのようである。
「人を殺すころだけを目的にした殺人マシン」
いつの間にか、そんな風になっていったのが、山崎だったのかも知れない。
彼は捕まれば、簡単に観念して、ペラペラと犯行を供述し始めた。
「俺って、路傍の石だったのにな」
と、山崎は言った。
それはまるで自分の犯行を鼓舞しているかのようだった……。
( 完 )
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作品名:「路傍の石」なる殺人マシン 作家名:森本晃次