小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「路傍の石」なる殺人マシン

INDEX|22ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 この事件において、最後の進藤の事件だけは、表向きには繋がっていないように思えるが、捜査を続けていくうちに見えてくるものがあり、諦めなければ、何かの形が見えてくると思える。
 ただし、そこに至るまでに、何度となく本当の事実ではないというブレた気持ちに陥るかも知れない。それでも、自分をどこまで信じることができるかということが、ここから先の展開に大きく溝を開けることになるかも知れない。
 そう思うと、いかに自分を信じれるのかということが重要になり、信じることができるようになるための、自分なりの鍛錬が必要であろう。
 そういう意味では、ここにいる刑事課の連中は、それぞれに、
「これだけは絶対に譲れない」
 と思っていることだろう。
 事件というものを、どこから見ればいいか、日頃から研究していて、事件が起こるごとにどこまで自分を高めることができるかということを視野に入れながら、目の前のことをさばいていく。それが刑事なのだろうと思っていた。
 この思いを一番持たなければいけないのは、隅田刑事であろう。後の二人はすでにしっかりと持っていて、その気持ちを、
「忘れないようにしよう」
 という気持ちが大切なのであろう。
 それを思うと、早く先輩に追いつきたいという気持ちを大きく持って、最後には追い越したいとまで思うことが、刑事としての自分を成長させる気概だと思うのだった。
 今度の事件は、自分の話を真剣に聞いてくれて、それを取り入れてくれ、その捜査を自分に任せてくれようとした先輩の気持ちに答えなければいけないと思った。
「これって、皆が通る道だからな」
 と、二人から言われたような気がして、一種の一人前の刑事になるための、登竜門ではないかと思わせうほどだった。
「とりあえず、桜井刑事が気にしていることを、一つのきっかけにして、それぞれの考えを聞いてみようと思うのだが、どうだろう?」
 と清水警部補が言った。
「じゃあ、まずは、柏木刑事はどうですか?」
 と聞かれて、
「そうですね。私も、最後の進藤の事件だけが繋がりが考えられないのも、一つなんですが、逆にそれを矛盾ではないと考えると、今後は、本当に第一の事件である眞島の殺害と、第二の事件である桜庭の事件も、ひょっとして繋がってはいないのではないかと思うんです。主従関係のような二人だったのではないか? という話もありますが、確証があったわけではないんでしょう? 誰かに見られたわけでもないという、ただのウワサにしかすぎないとすれば、その二つが最初だったのかと思うと、まわりが必要以上に結び付けてしまったことが怪しいような気もするんです。特に最初の事件というのは、自殺かも知れないとでも言える事件じゃないですか。それに比べて、後の二つはハッキリと分かっていない曖昧な事件でもある。そうなると、もし、これを連続殺人だというのであれば、先ほども出ましたけど、動機という面では、曖昧なところが多い気がするんですよね」
 と、柏木刑事は、それまで感じていた矛盾した気持ちを噛み砕きながら、話をしているようだった。
 それを聞いた桜井刑事が、
「なるほど、確かにそれは言えるでしょうね。先ほど私が言った、最初の意見に結び付いてくることかも知れないですね。何と言っても、被害者三人が同じ会社に勤めていて、面識もある。つまり前の犯罪捜査を続けていると、いずれは辿り着く相手が殺されることになるわけだから、犯人に先手を打たれていて、警察が常に後手に回っていると思わされているけど、事件に連続性があるのであれば、犯人、あるいは犯人グループにおいては、警察の捜査に関係なく、計画しての殺人だということになるんでしょうね。そうでなければ、突発的な殺人ということになるのかな? そういう意味でも、我々は被害者がKエンタープライズの社員ばかりということで、あまりにも、連続殺人ということを信じて疑わないようになってしまっているんですよ」
 ということで、事件の特異性が、連続殺人という意識にあるとでも言いたげな発想であることを言おうとしているのだと、まわりは感じたのだ。
「私としては、この事件は捜査の常識から考えれば、確かに連続性はあるのだと思いますが、だからと言って、連続殺人ではあっても、すべてにおいて、同じ動機で動いていると言えるのかどうか、そこに疑問を感じます。もし、動機が一つであるとするならば、犯人の狙いはなんでしょう? 三人が三人ともしななければいけなかったんでしょうか? 誰か一人をターゲットにして、後の二人にも恨みがあったのだろうけども、殺害するまでの理由、動機がどうなっているのか? そのあたりも重要になってくるのではないかと、思います」
 と、隅田刑事は言った。
「じゃあ、隅田刑事は、誰が殺されるべきだったと考えますか?」
 と、桜井刑事に聞かれた。
 すると、急に困ったような、、まるで苦虫を?み潰したような様子を見せた隅田刑事だったが、
「それは、さすがに分かりません。ただ、捜査の基本と、その基本で賄いきれない発想が事件を複雑にしているのだとすれば、臨機応変に考えるべきところもあると考えるようになったんです。もちろん、犯罪は人間の感情の中で繰り広げられ、人を殺すという安直ではあるが、もうそれしかないというところまで考え抜いたうえでの犯罪でないといけないと思うんですよ。いくら殺したいほど憎んでいるとしても、自分が捕まること、そして相手にも家族があり、たとえ殺さなければいけないと最後には行きつくと思いながらも、自分を納得させられるだけの何かがなければ、殺人に至るまでにはなりませんからね。愉快犯でもない限りですね」
 というのだった。
「なるほど、今度の事件を冷静に考えたうえで、その特異性からの考えを話し手くれたわけですね。でも実際の事件では、結構ややこしくなっているようで、例えば、第二の殺人と第三の殺人に関しては、それぞれに犯行の動機がありそうな人はいるんだけど、その二人には完全なアリバイが成立しているということのようなんだよ」
 と桜井刑事が、事件の具体性について話を始めた。
 ここまでは、事件全体を見渡した、
「総論的な発想」
 であったのに対して、ここからは、事件を一つ一つ掘り下げる形の、
「各論的な発想」
 を具体化させようという考えではないだろうか。
 ただ、事件というものが、特に第二の事件では、管轄外のところの犯行なので、情報がすべて流れてきているとは言えないかも知れない。本当はもっと早く合同捜査本部の設置が必要なのだろうが、このあたりは、さすがに公務員という警察組織だけのことはあるようだった。

                大団円(見えざるもの)

 事件が解決していくという時は、見えていなかったものが急に見えてきたり、急な展開が襲ってくることで、それまであっていなかった辻褄が合ってくることによって、一つの歯車の狂いが正常になると、繋がっていなかったことが連結してくるという発想に繋がっていくものだと、考えてもいいだろう。