小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「路傍の石」なる殺人マシン

INDEX|12ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 表に出てきていることがすべて悪いことにひっくり返るのか、それとも、表に出てきていることは少しずつひっくり返ってきて、どこまで見ればいいのか分からず、結局、目が離せないということになるのかが問題だった。
 取引先とすれば、少しでも怪しいところが出てくれば、最後まで見るなどという生易しい態度を取ることは、時間と労力の無駄である。
 つまりは、カネの無駄ということに結び付いてしまうことで、結局、取引停止などという最後通牒を突きつけることになるだろう。

                パチスロ指南

 捜査が進む中で、取引会社がそんなに変わっていないということが分かってくる。聞き取りの際に、
「あの会社には、いろいろ怪しいウワサもある」
 という言い方を相手がしてくれば、深く話ができるのだが、警察から、あの会社を怪しいとはいえない。下手をすれば、誹謗を広げてしまったということで、警察が訴えられかねないからだ。一種の異形業務妨害と言ってもいいだろう。
 そういう意味で、なかなか気を遣う聞き取りであった。
 それでもKエンタープライズという会社に対しての誹謗中傷は少なからず分かっているところが多く、もっとも、それくらいしないと、今の世の中何があるか分からない。取引先を抱えている会社には少なくとも、取引先の情報を調査する部門があったりするはずである。
 今は一営業にだけ任さておける時代ではないのかも知れない。
 特に、取引先の倒産であったり、知らない間に何かに加担させられていたり、詐欺などに関わらされていると、自分の会社の存続にも関わることになるからだ。
 そのことは、経営者であれば、最低限のこととして考えるであろう。
 特に情報関係の会社であれば、個人情報や、会社内部の事情などといったものを漏洩させてしまうと、会社倒産とまでは直接いかなくても、罰金や会社の信用問題に繋がり、最終的には倒産を余儀なくされるというシナリオが、容易に想像できるというものであろう。そんなことまで捜査を続けていくと、Kエンタープライズは、
「限りなくクロに近い、グレーだ」
 と言えるのではないだろうか。
 大っぴらに、
「黒だ」
 と言えないだけで、グレーの最上級であることに間違いはないようだった。
 つまりこのことを、
「闇」
 と表現してもいいだろう。
 さて、桜庭という男のことを捜査していた隅田刑事であるが、桜庭という男と、殺された眞島との間に、異様な関係があったということを聞きつけた。
「それは、どういうことなんですか?」
 とその話をしてくれた人に聞いてみると、
「死んだ人のことを悪くいうのは嫌なんですけどね。眞島さんという人は、どうも陰湿なところがあって、人とあまり関わることのない人だったんですよ。いつも一人でコソコソしてね。だから、仕事でも誰からも構ってもらえず、自己流でやらなければいけなくなった。それがいつのまにか意固地になっていて、まるで自分のやり方が正で、まわりを認めないという感じになったんです。だから、会社もそんな彼を開発から外したんだと思うんですよ」
 と言った。
 どうやら彼は、眞島という人間が、性犯罪を密かに行っていて、前科がいくつかあるということを知らないようだ。まあ、それも当然だろう。会社としては、なるべく隠しておきたいことで、一番知られたくないのは、自分の会社の社員だからである。そういう意味で眞島の裏の顔を知っている会社の人間は、本当に限られた人物だけであろうことは、容易に想像ができるというものだ。
 ただ、そのせいもあってか、彼が眞島の異動に関して、独自の意見、いや、これこそ会社の仲間全体の共通した思いなのかも知れない。
 そこまで考えてくると、眞島という男が会社でどのように見られていたのかが分かる気がした。
 そういう意味で、眞島と桜庭の関係性について新たな話が出てくるのは、捜査の成果だといってもいいだろう。そのうちに、二人の関係が暴露されてくることで、事件の核心に繋がればいいとさえ思っていた。
「どうも桜庭さんの方が、眞島さんに影響力を持っていて、どうも、眞島さんは桜庭さんに逆らえなかったのではないかと思うんです」
 という。
「それは、見た目ですぐに分かったんですか?」
 と隅田刑事が聞くと、
「いえいえ、そんなことはありませんよ。二人の関係なんて誰に分かるわけもなく、開発員の中には、二人が話しているところを見たことがない人がほとんどなんじゃないですか? 私も途中まではあの二人は仲が悪いのだと思っていましたからね」
 というので、
「どうして仲が悪いと思ったんですか?」
 と聞かれた同僚は、
「だって、同じ部署で働いていれば、当然のごとくお互いに気を遣わなければ、仕事なんかできるものではないですからね。真剣に仕事をしようとすると、なるべく人間関係での摩擦は避けなければいけないという思いに至るわけで、そうなると、少なからず何かしらの関係があるというものですからね。それが二人にはまったくなかった。それは当然仲が悪いという思いに至っても、別に不思議のないことですよね?」
 というのであった。
「なるほど、それは当然のことですね。ということは、実際に仲が悪かったわけではないと?」
 と隅田刑事が聞くと、
「ええ、仲が悪かったというわけではないようで、そうなると、二人の関係性に別の意味での興味が湧いてくるというものです。私は、そういうのが気になる方なので、よく二人を観察していると、どうも、眞島さんがやたらと桜庭さんを意識していて、気ばかり遣っているとしか思えないんです。では、桜庭さんはどうか? 彼は逆にまったく眞島さんを意識していません。完全に上から目線になっていて、余裕があるというか、余裕しか感じないんですよ。それを思うと、二人がどこか、主従関係に見えてくるから不思議ですよね? そう思えてくると、もう二人に対してはそういう目でしか見れなくなった。そうなると、自分の考えが間違っていないのではないかと思うのも、無理もないことではないですか?」
 というのだった。
「なるほど、確かにそうかも知れませんね。特に同僚だと最初はあまり気にしないようにするように気を遣っているが、一旦気になってしまうと、もうそこから目を逸らすことなどできなくなる。それがあなたの目なんですね?」
 と言われた同僚は、
「ええ、まさにその通りです。私には、あの二人のっプライベートはまったく知りませんが、会社を一歩離れると、二人ともまったく違った正確なのではないかと思うんです。具体的には分かりませんが、もっとも、それを知ろうとも思わないですけどね。そういう意味で、二人とも別の部署に異動してくれたのはありがたかったですね」
 というのだった。
 ここで、隅田は考えた。