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「路傍の石」なる殺人マシン

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 と、清水警部補も少しビックリしていたが、一緒に行った柏木刑事も?然としている。何も知らなかったのだろうか?
「調べてきたというよりもですね、あの会社、実は以前から怪しいという話がでていたんですよ」
 と隅田刑事がいう。
「それはどういうことだい?」
 と、桜井刑事も聞いてきたので、
「これは、生活安全課の方でちょっと聞きこんできたんですが、どうも、あの会社、ブラックなところがあるらしいんです。会社の規則などもそうなんですが、どうも、社員というのが、一癖も二癖もある連中らしく、眞島と同じくらいの犯罪をしているやつは、結構いるらしいんですよ。社員同士は知らないらしいんですが、上の方ではそのあたりを把握しているらしく、社員に横のつながりがないのをいいことに、社員の過去の素行の悪さを許して雇用を続けるかわりに、ブラックを社員に強制するという感じですね」
 と、隅田は言った。
「なるほど、皆脛に傷を持つ連中ばかりなので、同僚はまわりにいうわけにもいかない。だから、うまく会社に利用されるというわけか」
 と桜井刑事がいうと、
「ええ、そうなんです。眞島のようなやつは、特に何度もやっているので、扱いやすいんではないかということです。それに、仕事もこれと言ってできるわけでもないのに、そのくせ、自己主張をしたがるので、会社も手を焼いているというふりをすれば、いいだけなので、異動に関しても何も言わなかったのは、言えなかったというのが正しい解釈ではないでしょうか?」
 と、隅田刑事は言った。
「じゃあ、桜庭という男も、同じ穴の狢ということなのかな?」
 と桜井刑事に聞かれて、
「そうですね、彼の場合は、眞島のような性犯罪ではなく、会社に勤めながらできるという甘い汁と吸っていたんですね」
 と隅田刑事がいうと、
「会社もよく黙っていたな」
 と桜井刑事がいうので、
「これは僕の想像なんですが、あの桜庭という男は、会社の事情も、まわりにロクなやつがいないことを分かっているんじゃないでしょうか? だから、少々のことをしても、会社が大目に見てくれるという感覚だったのかも知れないですね」
 と、隅田刑事がいう。
「でも、そんな危険な橋を渡るだけの度胸が桜庭という男にはあるのかね?」
 と桜井刑事に聞かれて、
「それはあるんじゃないですか? ただ、あくまでも、問題にならない程度に抑えているので、もし桜庭のことが問題になると、会社やまわりの連中にも火の粉が降りかかってただではすまないということは分かっているんじゃないですかね? それだけ、桜庭というのは、頭がキレるのではないかとも思ったんです」
 と、隅田刑事が言った。
「なるほど、今の話を聞いていて。納得できる部分は結構あるな。だが、決めつけはいけないので、桜庭に関しては、引き続き、隅田君に捜査の方をお願いしようと思っているんだけどね」
 と、清水警部補が言った。
「分かりました。私の方でできる限り捜査を進めていきたいと思います」
 と、最後は、大きな声で隅田刑事は答えた。
「それにしても、あの会社がそういうところだったとは、ビックリですね」
 と柏木刑事がいうと、
「この話は、あの会社に限らずあるようですよ。特に、バックにヤクザが絡んでいる零細企業などや、やくざの隠れ蓑になっている会社なども、まだ少しはあるんじゃないかな?」
 と桜井刑事がいうと、
「詳しくは分からないけど、今でもブラックと言われる企業が山ほどあるんだから、それも当然なんじゃないかな?」
 と、清水警部補が言った。
 この時の捜査会議で消えられた捜査方針としては、まず、現状の捜査の継続が第一であり、そして次に、桜庭という男の個人的なことの調査。これを隅田刑事を中心に行う。
そして、残りで、彼らの会社についての捜査を行うということであった。
 彼らの会社は、
「Kエンタープライズ」
 という会社で、実はネットで調べれば、ツイッターなどの評判は最悪であった。
「あの会社はブラックだ」
 あるいは、
「犯罪者だらけの会社である」
 などと言った誹謗中傷が多く、中には、
「私はやつらの被害者だ」
 と言っている人もいる。
 ただ、ネットにおいてでは、会社ぐるみの犯罪というわけではなく、あくまでも集まった社員が犯罪者が多いというだけで、会社自体が犯罪企業というわけではないという。もちろん、だからと言って、会社にまったく責任がないのかというと、そんなバカなことはない。
「どうしてそんなバカな連中を雇っているんだ?」
 あるいは、
「会社側がちゃんと調査して、そんな連中を懲戒解雇すべきではないか。それ以上に警察に告発するくらいしないと、許されないだろう」
 というくらいにまで言われている。
 そういうウワサが立っていることを踏まえたうえで、捜査本部は、捜査をするようにしいていた。
 もちろん、その犯罪者の個人名がネットで晒されるわけもなく、そうなると、会社に対しての誹謗中傷ということで、それはそれで問題になっているべきなのだろうが、捜査をしてみても、Kエンタープライズ側からの、誹謗中傷に対してのいわゆる、
「法的措置」
 なるものは、公言されていない。
 それは、実際に公言していないだけで、水面下で調査を進めているのかも知れない。まさか、ソフト開発の会社が、自分たちをエゴサーチしないなど、普通で考えればないだろう。
 実際に犯罪者が会社内にいるところも分かっているはずなので、会社の信用を考えると普通はするだろう。もししないのだとすれば、よほど、世間の声が気にならない会社なのか、それとも、表に見られるような平穏な会社ではなく、それどころではないほど、火の車になっているかのどちらかではないだろうか。
 そうなると、まわりにも分かるというもので、
「Kエンタープライズという会社は危ない」
 というウワサも出てくるだろう。
 ネットではそんな話題はなく、さらにネット以外でも、そのような話が出てくることはなく、実際に捜査を行っていく中で、Kエンタープライズに対しての悪評は聞こえてこない。
 もっとも、ネット以外での捜査に関しては、聞き取りというのは、Kエンタープライズに関係する取引会社や、利害関係にある会社、さらには同業他社ということになるので、彼らとすれば、下手なことも言えないだろう。
 捜査陣も、それくらいのことは分かっているので、質問にも気を遣う。余計なことも言えずに、だんまりを決め込む会社もあった。
「うちでは、そんな質問にはお答えできません」
 というところもあった。
 こういう場合に、
「あの会社は問題ない」
 と言えない場合は、何か具体的なことを言わなくても、さらには、だんまりであっても、態度としては、
「あの会社は危ない」
 と言っているようなものだった。
 それが真っ黒であるか、グレーなのかという違いだけである。
 警察とすれば、真っ黒だというよりも、グレーの方が問題がある。真っ黒であれば、表に出てきていることがすべてだということになるが、グレーであれば、何が飛び出してくるか分からない。