小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

伏線相違の連鎖

INDEX|1ページ/27ページ|

次のページ
 
 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ただし、小説自体はフィクションです。ちなみに世界情勢は、令和三年七月時点のものです。それ以降は未来のお話です。

           アレルギーとアナフィラキシーショック

 K警察署では、その日これと言った事件もなく、平和な一日が終わろうとしている午後九時というと、当直刑事と、もう一人、ちょうど研修から帰ってきて、出張精算所を書くためだけに帰ってきた刑事と二人で、夕飯を食べていたところだった。
「今日は、皆早かったんですね?」
 という昨年に巡査勤務から刑事課に配属された隅田刑事は、そう言った。
「ああ、そうなんだ。君が研修に行っている間の三日間は結構平和だったんだぞ」
 と、当直の桜井刑事がそういった。
「先輩、夕飯はどうするんですか?」
 と聞かれた桜井刑事は、
「狐狸庵にうどんを注文したところさ」
 というので、
「じゃあ、俺も追加できるかな? 昼はほとんど食べてなかったので、腹減っちゃってですね」
 と隅田刑事は言った。
「なんだ、ちゃんと食べなきゃいけないじゃないか」
 と桜井刑事がいうと、
「そうなんですけどね、でも、普段肉体労働と言ってもいいくらいの俺たちが、研修という名目で朝から晩まで机に座っての勉強ですよ。食事が進むわけないじゃないですか。ここに帰ってきて、刑事課の匂いを思い出しただけで、食欲がわいてくるというのもごく自然なことではないですか?」
 と隅田刑事は言った。
(このセリフは、今度の事件の核心に迫るところで出てくることになる)
「そんなものなのか? あまり急いでがっつかない方が身体のためだぞ」
 と、桜井刑事は苦笑いをしていた。
「じゃあ、俺は鴨なんばでお願いします」
 と隅田刑事は追加で注文していた。
 それから、二十分くらいしてから注文していた料理が届いた。
 桜井刑事は肉うどんのようで、隣の鴨なんばを見て、不思議そうに首を傾げながら、
「隅田。お前さっき、それを鴨なんばって言わなかったか?」
 と言われて、
「ええ、言いましたよ」
 というので、
「鴨南蛮というのが正しいんじゃないのか?」
 と言われた隅田は、得意げな顔をして、
「いえいえ、鴨なんばでいいんですよ。鴨なんばの具材は、基本は鴨肉とネギなんです。なんばというのは、このねぎのことなんですね。ちなみに、なんばというのは大阪に地名があるのをご存じでしょう? そこに明治時代、広大なネギ畑があったというのも、難波という言葉の語源だと言われているんですよ。南蛮というのは、そもそもネギのことで、昔南蛮渡来の人が健康保持のために食べていたという説もあるようですが、実際には、難波説の方が有力なようなんです。だから、大阪にいる頃は、鴨なんばと言っていましたね」
 と、説明していた。
「お前なかなか詳しいな」
 と言われ、してやったりの顔をして、食べ始めた。
「俺、実はねぎは嫌いなんですけど、鴨なんばだったり、鍋に入っているねぎは嫌いじゃないんです。水炊きなどに入っているねぎは好きですよ」
 と隅田に言われ、
「どういうことだ?」
「煮たり炊いたりすると、ねぎのあの苦みが消えて、しなっとなるでしょう? あれが結構おいしいんですよ」
 と返事をした。
「なるほど、嫌いなものでも、調理方法によっては、好きなものに変わるということだな?」
 という桜井に、
「そうなんですよ。本当は刑事たるもの、何でも食べないといけないとは思うんですが、そうは言っても、嫌いなものは嫌いです。身体が受け付けないというものもあったりしますからね」
 と隅田がいうと、
「そうなんですよね、昔の幼稚園の話などを聞くと、牛乳が飲めない子は、残されて飲めるようにさせていたというから、考えてみれば怖いよな」
「ええ、牛乳に限らずですが、アレルギー性のものは結構食べ物にはありますからね。それに気づかずに無理やり飲ませたりすると、中毒を起こしますからね」
 と隅田が答えた。
「アナフィラキシーショックというやつだな? 俺も聞いたことがあるよ。この言葉を最初に聞いたのは、ハチに刺された人の話を訊いた時だったんだよ」
 と桜井がいうと、
「ハチですか?」
 どうやら、隅田はこの話を知らないようだった。
「ああ、スズメバチなどの話なんだけど、スズメバチのような毒性の強いハチに、二度刺されると死んでしまうという話を訊いたことがあるかい?」
 と言われた隅田は、
「ええ、そういう話は聞いたことがあります」
 と答えた。
「だけどな。ハチに刺されて死ぬというのは、ハチの毒が直接の死因ではないんだ」
 と桜井はいうではないか。
「どういうことですか?」
「人間というのは、身体に何か毒が入ってきたりすると、身体の中でその毒と戦うそうなんだが、その時に、一緒に抗体というものを作るというのは知っているかい?」
 と聞かれた隅田は、
「ええ、知っていますよ。風邪を引いた時に出る発熱というのも、身体の中で風邪の金と戦っているからだと聞きました。だから、熱が出てくると、冷やすのではなくて、熱が上がりきるまで身体を暖めるんだそうですね。僕も小さい頃はよく高熱を出していたので分かるんです。熱が上がり切っていない間は、身体に熱が籠って、汗も出ずに、身体がかなり熱くなっているんですよね。でも、そういう時って却って寒気がして、身体がブルブル震えるんです。桜井さんも見たことがあるでしょう? 高熱の人が、ブルブル震えているところを」
 と言った。
「ああ、分かる気がする。それって、麻薬患者の禁断症状などもそれに近いのかも知れないな」
 と桜井刑事は言った。
「ええ、そうなんですよ。それでね、熱が上がり切ってしまうと、今度は急に身体から汗が噴き出してくるんですよ。額から玉のような汗が出てきたりしてですね。そうなると、急いで下着やパジャマを変えたり、シーツを変えたりする。下着などは、十枚くらいいりますからね。絞れるくらいに汗が噴き出してくる。そうすると、そこから頭を冷やすんです。汗で毒素が出てしまうということですね」
 と隅田がいうと、
「なるほど、そういうことなのか。それが自浄効果のようなものなのかも知れないな」
 と桜井がいうと、
「まあ、そういうことです。ところでさっきのハチの毒の話の続きは?」
 と聞かれた桜井は、我に返って、
「ああ、そうだった。ハチの毒が最初に身体に入った時には、普通の応急手当で何とか収まるんだけど、その時に身体の中に、スズメバチの毒に対しての抗体ができるんだよ」
 と桜井は言った、
作品名:伏線相違の連鎖 作家名:森本晃次