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精神的な自慰行為

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 男性の性犯罪が多いのは、そういう性的な身体の作りがあるからで、ある意味、どうしようもない部分がある。だから、こんなおかしな法律が真剣に審議され、法案が可決されることになるのだ。
 だが、法案が可決されても、男女の双方での相違がある限り、この法案が完璧になることはない。
 したがって、結構早いうちから法案を水面下で進めていたが、実際に法案が通過しても、さらに法律を補うための、世間の体制を作っていく必要があるのだ。
 できるかどうか分からないが。女性用の性風俗を真剣に政府が考えているというのも、そのあたりからではないだろうか。
 ここに、一人、高杉洋三という三十歳の男性がいて、彼は三十歳になるが、彼女いない歴というのが、年齢と同じだった。だが、彼は童貞というわけではない。好きになった女性がいなかったわけでもない。だが、どうしても男性という体質が影響していてか、
「同じ相手と、セックスをすることができない」
 という体質であった。
 しかし、それは、
「続けて同じ相手とは生理的にできない」
 というだけで、その間に別を人を挟めば、どの問題はなかった。
 だから、大学時代に先輩に連れて行ってもらったソープランドで、
「筆おろし」
 の儀式を終えて、それ以上風俗ばかりを利用するようになった。
 彼は、大学時代から絵を描くのが好きで、絵を描くという趣味を持ちながら、就職してからの仕事も充実していて、傍から見ていると、顔の作りも均整が取れているので、
「彼女がいない歴は、実年齢と同じ」
 というと、
「え〜」
 と言って、驚かれる。
 それは男であっても女であっても同じで、それだけ、男からも女からも好かれる要素を持っていたのだ。
 ただ、女性からすると、そんな彼が女性と付き合ったことがないと聞くと、
「ホモではないか?」
 と思われることもあったようだ。
 男性から見ると、彼を見ていて、ホモには見えないので、たぶん、風俗通いをしているのではないかと思うだろう。それはやはり、男性が女性と違って、同じ相手と毎回身体を重ねることで、飽きが来るのではないかという性質が分かっているからであろう。
 だから、男性が見る目は間違っておらず、高杉ははけ口として、性風俗をいつも利用していたのだ。
 だが、彼は風俗を、
「性のはけ口」
 とは思っていない。
 確かに、欲求不満がたまった時は風俗に行くのだが、それはちゃんと楽しみで行くようにしていた。
 他の人は少なからず、ソープで満足した後は、帰りなど、罪悪感とまではいかないが、憔悴感に見舞われてしまい、お金を使ってしまったことを、若干後悔してしまう。それは前述のように、絶頂を迎えるまでと、それ以降での落差の激しさが物語っているように、ほとんどの人は、その日は、憔悴感に浸ってしまうことだろう。
 しかし、高杉の場合はそんなことはなかった。
 風俗で絶頂を迎えると、後悔はない。満足したままの気持ちで帰途につき、その中で、
「今度はどの娘にしよう」
 と、次回を楽しみにしていた。
 楽しみにできる理由の一つとして、彼が趣味や仕事に充実した毎日を過ごしていることで、意外と一日があっという間に過ぎてくれるので、次回までは楽しみなまま過ごせるというのがあった。
 もう一つは、彼は身体と気持ちがある程度一緒になっていた。身体に対してはすぐに飽きが来るのを自分で分かっていて、いや、それを当然だとして割り切れているので、絶頂を迎えた後で、憔悴感を味わうことはないのだ。
 憔悴感が襲ってくるのは、罪悪感や、風俗でお金を使ってしまったことへの自分の正当性が満たされないからだった。だから店に来る前に、自分の中で、
「男の性なんだから、仕方がない」
 という言い訳を保つことで、絶頂を迎えることができるのだが、元々言い訳でここまで来たのだから、憔悴してしまうと、その気持ちに歯止めが利かなくなる。
 しかし、最初から言い訳もなく、憔悴も覚悟できていると、絶頂を迎えた後で、他の人に得ることができない満足感を得ることができるのだ。
「そうなんだ。他の人は満足感が足りないんだ」
 と、どうして皆あんなに店に入る時も、出てからも、一目を気にするようにしているのかという理由が分かると、何が足りないかということで、そこに満足感というものの存在が控えていることを理解できるようになったのだ。
「満足感があるのとないのとが、男女の決定的な性行為での違いなのかも知れない」
 と思った。
 男の場合は、絶頂に至るまでにすでに満足感を味わっているので、絶頂に達した時に、訪れるはずの満足感の代わりに憔悴感が襲ってくるので、どうしても。満足感を感じなかったと思うのも仕方のないことだろう。
 高杉の場合は、風俗の相手であっても、一緒にいる瞬間を、疑似ではあるが、恋愛として感じることができている。これは、他の人が感じている恋愛感情と同じものであるが、まわりの人から見れば、そうは絶対に思えない。しかも、本人である高杉もそこまでは感じていないのだから、高杉にとっては、
「恋愛感情というものを、俺は一生もてないのではないかな?」
 と感じていた。
 確かに高杉という男はおだてに弱いタイプだった。人からおだてられることで、その気になって、やる気を発揮できるというのは、彼の一つの才能だった。趣味にしても仕事にしても、充実した生活を送ることができているのは、その才能が影響しているのだった。
「絵が上手い」
 というのは、自他ともに認めることであった。
 最初は、自分が上手だなどと思ってもいなかったので、絵を描いているということをまわりにひた隠しに隠してきたが、
「もうそろそろこれだけやってきているのだから、恥ずかしいという気持ちでまわりに隠す必要もないな。どちらかというとまわりに見てもらって、それなりの評価を一度くらいしてもらった方がいいかも知れない」
 と感じたことで、みんなに、
「俺、絵を描いてるんだけど、一度見てくれると嬉しいな」
 と、いつも一緒にいる友達に話してみると、
「ほう、そうなんだ、一度見せてもらおう」
 と言われて見せてみると、
「なかなかなクオリティじゃないか。これだけ描けるのに、今まで何も言わなかったというのはどういうことなんだ?」
 と言われて。
「自分の作品がどれほどのものかって比較対象があっても、どうしてもよく見えたとしても、それを贔屓目だと思ってしまうと、却って恥ずかしくなって、誰にも言えないと思ったんだよ。でも、時期がある程度過ぎると、今度は恥ずかしさよりも、まわりの意見を聞いてみたくなったんだ。やっぱり、ある程度まで続けてくると、これから続けていいのかというのを、客観的に見てほしいという気持ちになるからね」
 というと、
「じゃあ、俺が辛辣な意見を言ったら、どうするつもりだったんだい?」
 と言われて、
「その時は、自分に自信が持てようが持てまいが、ウソでもいいから自信がついたと思おうとしたんだよ。もちろん、他の人には黙ってということになるんだけどね」
 というと、
作品名:精神的な自慰行為 作家名:森本晃次