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精神的な自慰行為

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「アコーディオンと言ったのはそういうことなんだ。つまりは、元々男性に有利だった世の中を、いきなりハラスメントやコンプライアンスという言葉で、逆から押さえつけようとすると、却って、行き過ぎてしまうことになりかねない。そのことを分かっていないと、社会のバランスは崩れていく。何しろそれまではいい悪いは別にして、それが常識だったわけだから、それを急に反対から抑え込もうとすると、相手も反発してくる。さらに強い力で押し込もうとすると、そこに他の力も働いてくるから、押し込まれてしまって、こちらからは押すことができなくなるだろうね。バランスを逸するということはそういうことであって、実に暮らしにくい世の中になるんじゃないのかな?」
 と、高杉はいう。
「でも、それは男性側からの発想ですよね?」
 とさくらがいう。
「確かにそうなんだけどね。さくらさんも、男性側からの発想だと思うかい?」
 と言われて、
「うん、それはそうなんじゃないかって思うの、虐げられてきた女性がやっと自分の権利を言えるようになった世の中。本当はこれが本来の姿なんじゃないかって気もするのよ」
 と、いうさくらに対し、
「うん、確かにそうかも知れないね。僕の話も少し極端なのかも知れない。だけど、結局は、男は男の、女は女の、それぞれの側からしか見ることができないのであれば、この問題が平行線であって、解決することはできないんだろうね。何を正しいかとするよりも、どこを落としどころにすればいいかというところになるんじゃないのかな? だから、お互いに何が正しいのかということばかりを追求していくと、何も結論めいたものは永遠に出てこないんだろうね」
 と言った。
「じゃあ、今度の法律はどう思ってる?」
 とさくらに言われて、
「これも、落としどころの一つなんじゃないかとは思うんだ。確かに強引な法律ではあると思う。でも、そうでもして、強引なことをしないと、悲惨な事件がなくならないとすれば、必要な措置だと思うんだ。何しろ決定的に、男女で身体の作り、それから精神的なことが違っているんだから、しょうがないだろう? 元々僕は精神的な違いというのは、肉体的な違いから来ているんじゃないかと思っているんだけど、その二つを違うものだと考える人がいるから、犯罪も起こるし、こんな法律で抑えなければいけないようになると思うんだ」
 と高杉がいうと、
「じゃあ、高杉さんは法律の制定には賛成なのね?」
 とさくらは少し強めに聞いた。
「うん、基本的にはね。だけど、この法律はかなり人間の尊厳や欲望を押さえつけるような法律なので、このままでは、「張り子のトラ」のようになって、外見は厳しいけど、中身はズブズブにならないかという懸念もあるんだよ」
 という高杉に対して、
「どういうことなの?」
 とさくらは聞いた。
「人を抑えようとすると、必ず反発がある。抑え込もうとする側に、その反発に対しての備えがなければ、下手をすると押し切られてしまう可能性もある。もちろん、それくらいは政府も分かっていると思うので、それなりの法律に柔軟性を持たせているとは思うんだけど、でも、そのわりに、成立までにそれほど時間が掛かっていない。ほぼほぼ、反発には耐えられないものだという気がしているんだ。そうなると、施行されてすぐに、予期せぬ状況が現れて、そこから審議して、さらに但し書きを増やしていく。でも、それは根本的な解決ではなく、枝葉をつけていくだけなんだよね。会社で何かのプロジェクトを起こそうと思うと、そんな枝葉で固めたものが、諸刃の剣であることは誰もが分かっていることなんだ。だけど、一旦法律が施行されると、が示されて、法律の施行と平行して研究され、最後に置き換わるということでもしない限りは、まずうまくはいかないだろうね。だけど、政府がそんなことをするわけがない。基本的に、その法律の審議は終わっているということになっているので、またほじくり返すことは、時間とお金の無駄遣いでしかない。それは政府には許されないことなんだ」
 というのを聞いて、さくらは少し黙り込んだ。
「そんな理不尽な」
 とボソッと口走ったが、
「確かにそうなんだよ、最初から完璧なものを作り出すということは、到底不可能なことだと言えるんだけど、でも、少しでも完璧に近づけるという気概を持って当たらないと、できたものは中途半端でしかない。それを見切り発信させてしまうと、途中で何かあってそれを修正しようとしても、すべては後手後手に回ってしまうんだ」
 という高杉に、
「ええ、そうなのよ、政府の政策って、考えてみたら、まともに行ったことがないって思うのよ」
 とさくらはいった。
「だけどね、これはある意味難しいところで、僕は別に政府の肩を持つわけではないんだけど。世の中、特に政府や会社の役員会などの、会社は国民の代表がやることとというのは、できて当たり前、できなければ、攻撃されるというのが当然のようになっているんだよ。だから、世間やマスコミは、政府が成功した事案は法案に関しては、あまり騒ぎ立てることはしないけど、ちょっとでもミスがあると、皆で寄ってたかって非難するでしょう? だから、政府に関しては、プラスの印象派ないけど、マイナス印象しかない。これはマスコミの連中が、マスゴミといわれるゆえんであって、一種の情報操作ではないかとも思っているんだ。これは結構危険なことで、まるで、戦時中の情報操作に似ているんじゃないかとも思うんだ。もちろん、根本的には違っているんだけどね」
 と高杉がいう。
「うんうん、それは私も分かる気がするわ。マスゴミって本当にそうよね。自分たちの雑誌や新聞が売れればそれでいいと思っているので、モラルも何もあったものではないと思えてくるものね」
 とさくらは言った。
「もちろん、マスコミのすべてが悪いとは言わないけど、昔から、新聞社や雑誌社には自分たちの主張のようなものがあって、同業他社と違った論理を戦わせるという意味で、ある意味政党のような役割がある。平等な報道が求められるべきマスコミが偏った報道になっているのではないかと思うと、ちょっと怖いよね」
 と高杉は言った。
「私もそれは分かっているのよ。だから、高杉さんがどう考えているのか、ちょっと聞いてみたくなったの」
「さくらさんは、この質問を他のお客さんに聞いてみたかい?」
 といわれたさくらは、
「いいえ、今のところ、高杉さんが最初なのよ。高杉さんなら、何か考えがありそうな気がしていたので聞いてみたんだけど、私の期待した答えではなかったのよ。だけど、ここまで詳しく説明してもらって、お話ができれば、私が聞きたかったことに対しての回答のような気がして、それだけでも嬉しいわ」
 と言った。
「そう言ってくれると嬉しいね。さくらさんは、直接的な答えを期待していたことは分かっていたんだけど、僕も正直。あの法律に対しては、何が正しくて、何が間違っているのかは分からないんだ。ただ、弊害がどこかで起こるというのは分かってはいるんだけどね。だから、そこには、押さえつけようとした時の反発に対して、いかに問題が出てくるかということしか言えないんだよ」
 という高杉に、
作品名:精神的な自慰行為 作家名:森本晃次