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理不尽と無責任の連鎖

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「子供だからしょうがないじゃないか」
 とまた同じことをいうが、
「それはお前の子供だからそう言えるだけだ、他人の子供がうるさかったら、特にお前のようなやつは、親がどうしてうるさいのを辞めさせないのかと思うだろうよ。それを親の務めだとな。だが、自分の子供というのは、本当に可愛いらしいな。だけどな、本当に可愛いと思うんだったら、ちゃんと常識を教え込んでおかないといけないだろう? 今回のように、不満に思ったやつから、殺されかねないからな」
 というと、
「そんなの逆恨みじゃないか?」
「逆恨み? 自分の自由を、相手の勝手な事情で邪魔されて、騒音という公害を受ければ、それに対して、報復しようと思う人間は結構いるんだぜ。お前だって、まったくうるさい相手に何も感じないわけではないだろう? どうすることもできないから泣き寝入りして、頭のなあデ。相手は子供だから仕方がないと思うのさ。せめてできるとすれば、騒音の元になっている家に怒鳴りこむくらいのことだろうよ。しかし、その後の近所づきあいを考えるとそれもできない。だったら、妄想の中だけでも、そのうるさい連中に天誅を与えてやるというくらいの想像だってするだろう?」
「いやいや、そんな想像はしないよ」
 と言って、父親はあたかも呆れたような顔で、きっと、心の中では、呆れているに違いない。
 それも、自分の置かれている立場を分かっていない証拠だろう。
「ふふふ、それすら忘れてしまったのかな? それとも、無理にでも忘れようとして、そう思った感覚をマヒさせたのか、人間なんだから、自分に対して危害を加える相手に対して何も感じないなんてことはない。もし、そうだったら、最初からいかれていると言ってもいいとお能のさ」
 というと、父親は、少し考え込んで、
「百歩譲ってそうなのかも知れないが、だからと言って、人間を消滅させるというのは、どうなんだ?」
 と、父親は。自分の立場を少しずつ理解しながら、話をしてきた。
 まさか、あわやくば、助かる方法はないかなどということを模索しているのだろうか。もしそうであるなら、主人公からみると、
「実に情けない」
 としか感じなかった。
「俺には、生殺与奪の権利があるのさ。だから、こういう光線銃を持っているのさ」
 と主人公がいうと、
「生殺与奪? 誰からそんな権利をもらったというんだ?」
 というので、
「誰からでもないさ。俺がその権利を有しているだけさ」
 と主人公がいうと、
「何だって? じゃあ、勝手にお前が言っているだけじゃないか? 自分勝手にもほどがある」
 と父親がいうと、主人公はその言葉に苛立ちを覚えたが、
「ほう、お前がよくいうよな。お前たちこそ、近所迷惑になるということを少しでも考えたか? いや、考えたとしても、行動しなければ一緒なんだよ。どうせお前は、子供がすることだというのを言い訳にして、子供から嫌われたくないという理屈を盾にして、面倒なことに目を瞑り、近所迷惑を考えないようにしたんだろう? その方がよほど自分勝手ではないか。そもそも、お前が逃げずに子供を叱りつけていれば、こんなことにはならなかったのさ」
 という言葉に対して、
「まさか、こんなことになるなんて思ってもいなかったから」
 と父親がいうと、
「そうだろう? だから自分勝手だって言ったのさ。じゃあ、こんなことにならないのであれば、騒音を出しても、別に悪いことをしたわけではないと思っている証拠さ」
 と主人公が言った。
「俺が何を悪いことをしたというんだ? 子供がうるさいのは当たり前のことだ」
 と、苦しい言い訳しか、もはやできないくらいに頭の思考回路は混乱しているのだろう。
「どうやら、お前はまだ開き直ることすらできていないようだな。普通ならここまで言えば開き直って、ちゃんと成仏できるというのに。だから、せっかく三十分を設けてやったのさ。もっと短いと、普通なら開き直れないからな」
「開き直るってどういうことなんだ?」
「開き直ることさえできれば、成仏できるということさ」
「成仏?」
「ああ、少なくとも、魂が感覚がマヒした状態で、あの世に行くということさ」
「どこに行くというんだ?」
「それは、俺にも分からない。俺は肉体を消滅させるだけで、魂の行先までは知らないからな」
 という男の話を訊いて、父親は呆れていた。
「どこにいくか分からないなんて、なんて無責任な」
「お前がいうか? 子供がうるさいのを放っておくどころか、お前までもが一緒になって騒ぐんだからな。だから、罪が重いと言ってるんだ。この期に及んでもそんなことも分からないんじゃあ、地獄の連中も楽でいいだろう。審議もいらないだろうしな」
 と主人公は言った。
「だから、お前に対しては、あの世で息子と一緒になって後悔すればいいなんて言葉は言わないのさ」
「どういうことだ?」
「さっき俺が言ったじゃないか。どこに行くか分からないって。だから、二人が会えるかどうか分からないということさ。もっというと、会える確率はほとんどないと言ってもいい。もっとも、人間が死ぬと、どうやら、死後の世界は、基本的に一人だというからな。行ってみればわかるさ。どうせ、あと少しで行けるんだからすぐに答えは分かるというものさ」
 という。
「そんなことをして、面白いのか?」
 と言われた主人公は、
「ああ、面白いね。お前だって、子供と一緒に家の前のプールで遊んでいる時、あんなに楽しそうだったじゃないか?」
 というと、
「別に楽しいわけじゃない。父親として子供が遊んでいるのを、一緒に遊んでやっただけだ」
 というのを聞いた主人公は、少し落胆した。
「今の言葉がどういうことを言っているのか、お前にはどうせ分からないんだろうな」
「どういうことだ?」
 と言われた主人公は、それまでの余裕に満ちた表情に怒りがこみあげてきたようだ。
「お前は楽しくもないのに、楽しいふりをして、それでまわりに迷惑を掛けていたというのか?」
「お前の理屈からいえば、そういうことになるかな?」
 というのを聞いて。さらに顔が真っ赤になった主人公は、
「そんな理屈が通用するわけないだろう。さっきまでほんの少しだが、罪悪感があったが、もうそんなものは完全に吹っ飛んだ。これは、ありがとうというべきかな?」
 という。
 さらに、
「お前がどのように感じているのか、今よく分かった。それに、他の人がやっているんだから、俺もいいだろうということが、一番のお前の罪だということも、どうせお前には分かっていないんだろうな。集団意識というのが、この世での本当の罪悪になるのさ。だから、あの世、特に地獄と呼ばれるところは、基本一人で孤独なものなんだ。一人でいると、いろいろとなことが考えられる。ある意味、宗教の考えていることのようなものさ。今のお前に、一人でいることがどういうことか分からないだろう。きっと一人になった時点で、地獄の苦しみなのだろうが、それから永遠に続く苦しみや、拷問は、お前にとって、どんなことになるんだろうか? 絶対にこの世に転生してくることはないんだ。もがき苦しむだけの運命を、思い知るがいい」
 と主人公は、最後通牒を出した。
作品名:理不尽と無責任の連鎖 作家名:森本晃次