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バラとスズラン、そして、墓場まで……

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「確かに我々もバラというのが暗号に関係があると言われると、そこに男色が絡んでいるということは、一番最初に考えることでしょうね。じゃあ、スズランはどう考えますか?」
 と聞かれたゆいは、
「スズランというのは、植物自体にも毒牙含まれています。そして、生けている花瓶の水を飲んだだけでも、十分死に至ると言われているものです。たまに、ミステリーなどの犯罪に使われているんですよね。それを考えると、ひょっとして犯人たちは、強盗に入る前に、その毒を使おうとしていたのではないかと思ったんです」
 と言った。
「じゃあ、誰かを殺そうとしたということ?」
 といちかが聞いた。
「それも考えられないわけでもないけど、強盗傷害未遂などという、犯罪としては、物足りないようなことしか起こせない人間が、人殺しなどできないとは思いませんか? そう考えると、山内は借金で首が回らなくなったことで、自殺を考えたのかも知れない。でも、自殺をするには、毒を手に入れないといけないでしょう? 普通の毒はそう簡単に手に入るわけもない。睡眠薬くらいしか考えにくいですよね。でも、睡眠薬だと死にきれなかった時が問題になる。きっと、彼は自分の殻だが汚れるような死に方は考えなかった。誰も傷つけたくないという思いがあり、それは自分に対してでも同じことではないかと思うんです。だから、睡眠薬を飲んでリストカットもできない。そもそも、度胸がない人に、できることではないですよね。この二つの花を置いた人の気持ちの中に、山内が花のようにきれいなままでいたいという気持ちがあるという暗示も含まれていたと思うんですよ。それだけ山内のことをよく分かっていて、山内に罪を認めてもらいたいんだけど、自分が彼のことを告発すると裏切ることになる。それはできないと思ったんじゃないでしょうか?」
 とゆいはいう。
「どうしたの? なんか急に冴えてきたわね」
 と、いちかがいうと、
「ええ、何か急に降りてきた気がしたの、刑事さんの話を伺っていたり、刑事さんと話をしていると、次第にあれを置いたのが袴田さんではないかと思うと、よく分かってきたのよ、それにね、さっきいちかと話した時、私がバラと男色の意味が分からないと言ったでしょう? 本当はちゃんと分かっていたのよ」
 とゆいの意外な告白に、
「というと?」
 と、いちかは冷静に返事をした。
「それはね。分からないふりをして。いちかに話をさせることで、私が考えていることと、どこまで接点があるのかを聞いてみたかったの。私が知っているということであれば、男色はスルーするでしょう? きっと、袴田さんにとって、山内さんは大切な人だったのね。そして、今回の事件も罪を償って、そして何とか立ち直ってほしいという思いと、自殺など考えないようにしてほしいということを、それぞれの関係者に知らせたいという思いがあったのかも知れないわね」
 というゆいに対して、
「じゃあ、ゆいは、ある程度のことを推理して、論理を組み立てたうえで、私のところに来たということなの?」
「ええ、そう。そして、山内という人が、いちかと知り合いだということも袴田さんは知っていて。ひょっとすると、刑事さんにいちかのところに聞き込みに行くように仕向けたのかも知れない。もちろん、ハッキリと言わなかったとは思うんだけど、警察がちょっと捜査すれば、いちかに辿り着くということも分かったんじゃないかしら? それを思うと、袴田さんが結構頭がいい人なんだって分かる気がするわ」
 というと、
「そして、袴田さんは、ゆいなら、きっとその謎を解き明かしてくれるという思いがあったのかも知れないわね」
 といちかがいうのを聞いた刑事は、
「じゃあ、どうして、松下さんストーカーまがいのことまでする必要があったんでしょうね?」
 と聞いた。
 それに答えたのは、いちかだった。
「ゆいはね。頭がいいのは誰もが認めるところなんだけど、それは本当に親しい人にだけ分かっていることで、中途半端な知り合い程度の人なら、天真爛漫な天然の女の子というイメージがまとわりついているように思われているの。というのは、彼女が切羽詰まったり、よほどの知り合いを助けるとかいう時でないと、頭が働かないのよ。それは私が一番知っているわ」
 というのだった。
 それを聞いたゆいは、軽くほくそ笑んだが、
「実はね。それもまわりを安心させる私のテクニックなのよ」
 とゆいは言った。
「えっ? じゃあ、私も欺いていたの?」
 とこれにはいちかもビックリしたようで、
「ごめんね。でもね、さっきも言ったように、私が何も知らないという様子で接する方が、いちかのようなタイプの女性は、しっかりしていることを強調しようとして、そういう時には、普段見せない力や発想を与えてくれるのよ。それは私が一番よく分かっている。そのおかげで今までどれほど助けられたか。そして今回もいちかの意見があったから、私のこの考えに至ったと思っているのよ。今まで自分が発想したことで、いちかがそれを補填してくれた内容で、間違っていたことは一度もなかった。私の進路にしても、将来のことにしても、いちかの助言が本当に役に立ったのよ。そして、私たちのような関係が、実は山内さんと袴田さんの間にはあるんじゃないかと思うの。袴田さんは私と同じ性格をしているということなのよ。だから、私は彼と婚約したのよ」
 というのだった。
「じゃあ、袴田さんは、松下さんが、自分の目論んだ通りに動いてくれると考えたということでしょうか?」
 と刑事が言うと、
「そうだと思います。そして、いちかのことも口にしたということは、私がいちかに今回のことを相談すると分かってのことでしょうね。だから、そこまでする必要はないと思われるようなストーカー行為をしたんでしょうね。それに関しては、生活安全課の人や、交番勤務の巡査さんには、ご苦労をおかけしたとは思っていますが、でも、これも防犯の一環だと思えば、少しは気が楽な気がします。実際、私の家の近くでは、痴漢や、ストーカー事件が頻繁に起こっているということでしたからね」
 とゆいがいうと、
「なるほど、でも、どうしてそんなまどろっこしいことを袴田さんはしたんでしょうか?」
 と刑事が訊くと、
「私といちかのこと、そして自分と山内さんのことを考えたんでしょうね。でも、そうすると、自分が山内さんと同性愛であることを知らせなければならない。袴田さんにとって、これは苦肉の策ではなかったのか? 今回のことをいちかに相談させるためのものではなかったかと思うんです」
 と言って、ゆいはいちかを見つめた。

              大団円〜覚悟の意味〜

 いちかの方もゆいを見つめて、顔を真っ赤にしていた。刑事はその様子を見ながら、最初何かを言おうとしたが、それ以上は言わなかった。
 だが、刑事は、少ししてから、こういった。
「なるほど、もし、ここでゆいさんが動かなければ、スズランの次には、百合の花だったのかも知れないということですね?」
 というのを聞いたゆいは、