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バラとスズラン、そして、墓場まで……

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「ご想像にお任せしますが、私が動くか動かないかをストーカーまでして促したのだから、それで動かないのであれば、本当に最後の秘密までも、自分が知っていることを明かして、ある意味、すべてをリセットしようという覚悟まで持っていたのかも知れない。袴田さんという人は、そういう人なんです」
 と、ゆいは言った。
 それを聞いたいちかは、自然と頷いていた。いちかはそのことについて語ろうともしないし、刑事もそれ以上のっことを聞こうともしない。二人にとって、この秘密は、きっと、
「墓場まで持っていく秘密」
 なのだろうと、刑事は思った。
 そして、このことを暗示しているのは、袴田であり、ゆいもそのことは分かっていた。刑事の方でも、事件にギリギリ関係のない部分として、この秘密は調書にも残すつもりもなければ、いちかとゆいの関係も調書に残すつもりはなかった。
「ゆいは、袴田さんと、このまま結婚するの?」
 といちかが聞くと、
「ええ、sのつもりよ。彼が最初に私に送ったバラ、それは、バラが花の女王であって、そして愛情を示している。私は男色だという意味よりも、彼の本当の気持ちはそっちらと思うの。そして、その後のスズラン。これはフランスでは花嫁に送る風習があるというのよ。これを知った時、どうして先にバラで、その次がスズランだったのか、分かった気がした。袴田さんという人はそういうところがあるのよ。今回の事件も、山内さんへの義理立てもあってか、直接犯人を指し示すことをせずに、自分から証言することもせず、私が謎を解き明かすことになる。そして、私といちかに敬意を表してか、自分のことも曝け出すかわりに、あなたのことも分かっているという暗示だった。だけど、そのことは墓場まで持っていくという覚悟を示したうえで、それでも僕のことを思ってくれていれば結婚したいという、彼なりの再プロポーズだったのではないかと思うんです」
 と、ゆいは、質問者であるいちかと、刑事に対してそういった。
「なるほど、事件の謎を解き明かしてくれたゆいさんの言う言葉なので、信用できると思うのは、警察官としての性なんでしょうかね?」
 と刑事は言ったが、
「それもあるかも知れませんが、それだけ、袴田さんがしっかりと順番まで考えて、そして、ストーカー行為に代表されるような覚悟を持って、しっかり考えてくれたおかげなのではないかと思うんです。私はそんな袴田さんとこれからも一緒に生きていきたいし、彼が墓場まで持っていくと言っていたことを、これからは二人で共有したい。それが二人にとっても足掛けであったり、十字架であったとしても、それはそれでいいことだと思う。徳川家康が『人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。いそぐべからず。不自由を常と思えば、不足なし。』と言っているが、まさしくその言葉の通りではないですかね。今回のようなことはそれほ、長い人生から見れば、大したことではない。まだまだこれから先があると言ってくれていると私は勝手に解釈したんですよ。きっと、このような思いがあるからこそ、彼は私を選んでくれたのではないかと思うし、その思いに今近づけたということで、本当に彼を選んでよかったとも思っています。私はこのままのライフスタイルを変えるつもりはありません。もちろん、それを彼が分かってくれてのことであるという認識は持っています。それは、同性愛というおのが、どういうものかを彼が分かってくれているからではないかと思います。正直、私には男性同士の愛情に関しては分かりません。ハッキリ言って、気持ち悪いという感情もあります。それでも、彼以外には考えられないということろが本音ですね。私は、いちかも同じ感情であってほしいと思っています」
 とゆいがそういうと、
「ゆいの気持ちはよく分かるは、でも、私にはゆいと違って、覚悟はあるつもりなんだけど、生理的に受けつけられるかどうかを、もう一度自分に問う時間が必要なの。それでいいかしら?」
 といちかがいうので、
「もちろんよ。一生というのはゆっくりと歩んでいくものなのよ。だから時間というのは大切なのよ。人が考えたり、覚悟に要するまでの時間というのは、絶対に必要なものであり、だからこそ、重荷を背負うことになるの。それが十字架である必要は決してない。十字架を背負えるかどうかは、覚悟ができるかどうかにかかっていると思うの。覚悟ができないと思うのであれば、無理をしなければいい。無理をしない人生だって、十分に選択肢として選ぶことができるのよ。そのために、たっぷり時間を使って、選択肢を逃がさずに意識して、そこから、自分の覚悟ができそうなことを選べることができれば、それがあなたにとっての正解になるのy。他の答えもあなたにとって正解。ただ、それによって開ける人生は、かなりの幅があるというだけのこと。反省と後悔を履き違えないようにしないといけないわね。私はそれをいつも考えていたような気がしたわ。あなたがどこまで分かっていたか。いえ、分かっていると思う。い私がいちかの足元にも及ばないと思っていることがあるのよ」
 とゆいは、いちかに言った。
「それは何?」
 といちかが聞いた。
 いちかの顔を見ていると晴れ晴れとしている、どうやら、いxひかにも分かっているようだった。
「それはね、いちかがすぐに覚悟を決められるということ。つまり、いちかは覚悟を決めてから、論理を考えるのよね。だから、必ず覚悟に似合う論理を導き出すことができる。私にはどうしても先に覚悟を決めることができないの。私がいちかに惹かれたのは、そういう男ら数ところに惹かれたのよ。それを袴田さんにはないところだと思っていたんだけど、それは違ったみたいだけどね」
 と、ゆいは言った。
 それを聞いたいちかは、
「何言ってるの。ゆいは、その代わりに、冷静な判断力と推理力を持っている。私のような猪突猛進型だったら、私も、ゆいをこんなに尊敬する相手として選ぶことはなかったのよ」
 というのだった。
「ありがとう。そう言ってくれると、私も嬉しいわ。正直私が結婚すると言った時、いちかは私から離れていくものだと思っていたけど、そんなことはなかった。これまでと変わらずにと言ってくれたのが本当に嬉しかったのよ」
 とゆいがいうと、
「ちなみに、さっきの百合の話なんだけど、ゆりってね、ユリ科に属さないユリというのも結構あるらしいの。トラユリと呼ばれるものは、アヤメ科だったり、ユキゲユリと呼ばれるものは、ヒアシンス科らしいの。また、ユリ科には属しているんだけど、系統の遠いユリも結構あるということで、ユリという植物は、私には神秘の象徴のような気がしたの」
 とゆいは言った。
 その言葉はいちかに向けられたもので、同時に刑事に対してもいい気kせていた。
 刑事に対しては、
「百合という神秘的な植物にうかつに触れないでほしい」
 という警告のような意味合いがあったのだ。
 いちかに対しては、
「私も、いちかのように、少しでも早く覚悟を決められるようになりたいと思っているのよ」
 という含みを持たしていることを意味していた。
 その後の事件のなりゆきは、ゆいの推理通りに進んでいった。