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バラとスズラン、そして、墓場まで……

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「それは何? それによって、相手に当たり前のことを言っているのに、まるで自分にだけ言っているようなことであり、的中していると思わせて、占い師が相手の信頼を勝ち取るということになるのかしら? 要するに、占い師が得をするための、心理的な技法ということになるの?」
 とゆいが聞くと、
「そうね。だから、マインドコントロールなのよ。相手にそう信じ込ませて、自分がマウントを取ったり、相手を服従させた李する時に使うものなのかお知れないわね」
 といちかは言った。
「なるほど、だとすれば、これは占いというだけではなく、それ以外の人間関係において、ある意味すべての場合に言えることよね。さっきのマウントを取るという意味だけでも、相当な範囲が考えられるからね。本人が意識していなくても、相手に対してマウントと取っているのは、こういうバーナム効果が働いているのかも知れない。そういう意味で、苛めなどの問題も、ここから出発しているのかも知れないわ」
 とゆいがいうと、
「それはそうかも知れないわね。でも、もっと切実なところで、男女関係のマウントもかなりの影響力を持ってくると思うのよ。特にヒモなんかの場合にも言えるんじゃないかしら? 本人は、従順なつもりでいるんだけど、その言葉を聞いて、女は、『この人がいうんだから』ということで、すべてそのヒモのいうことであれば、すべて信じてしまうということがあるでしょう? これって、最初に何らかの洗脳があって、女はもう男の言葉に従うしかないことになるかも知れないのよ。しかも、その男は自分が洗脳しているということを分かっていない。そもそも、バーナム効果などという意識もないでしょうからね。でも、中にはヒモのプロのような男がいれば、簡単にオンナは落ちてしまう。何しろ男には自分に落ちやすいという女を見つけることにかけても、長けているはずなので、ヒモで食っている連中だっているわけだから、そんな彼らの生命線は、マインドコントロール。そのためには、バーナム効果くらいは基礎知識として覚えているはずで、常套手段にしていることでしょうね」
 といちかは言った。
「ということであれば、詐欺にでも何でも使えるということね?」
 とゆいがいうと、
「占い師の中にはそういう輩がいたりするじゃない。占いで、例えば誰にでも当てはまるような話をして、相手は、当たってると一度でも感動すれば、後は、畳みかけるように、マニュアル化されたことをいい続けるのよ。たとえば、あなたは、昔ネコを飼っていて、死んでしまった時に、自分が何か悪いことでもしたんじゃないかと思って、後悔しているとかなんとかね。相手が女性だったら、ペットで猫を飼っていることは多いでしょう。それこそ、猫かわいがりしていたでしょうから、小学生の頃のような子供だったら、猫の寿命なんて知らないだろうし、猫が弱ってきたとしても、気付かないわよね。それを強引に今までと一緒に、猫の年齢に合わないような無茶な遊び方をすれば、寿命を縮めたかも知れない。それで猫が死んでしまったとすればどうかしら? その女の子は、自分が無茶したので殺したと思うんじゃないかしら? 特に弱ってきた時は、猫はご主人様に助けを求めるような目をしているとしたら、そのことに気づいてあげられなかったという意識を、猫の目を思い出すたびに、持つようになって、トラウマになるでしょうね、そういう人って結構いるのよ。特に子供の頃だったらね。もちろん、大なり小なりの違いはあるでしょうけど、要するに、この人は、誰にでも当てはまることを言って、その人のトラウマを言い当てたと本人に思わせるのだから、その時点で、すでにマインドコントロールされているわけよ。そうなってしまうと、もう、占ってもらっている人は、その人のいうことであれば、何でも聞いてしまうでしょうね。二束三文の石だったり、印鑑などを、十万近くの値段で購入することだって、その人からすれば、もったいないと思わせないんだから、すごいわよね。何と言っても、その人が自分の意志で買ったんだから、詐欺として立件することは難しいでしょうね。ただ、これらの事例が増えてきて、被害者側が気付いて、集団訴訟でもすれば別だけど、マインドコントロールに罹っている人は、そう簡単に気付くわけはない。結局、占い師のやりたい放題ということになるのよね」
 といちかは言った。
「でも、占い師の中には、そんな人ばかりではないでしょう? 本当に真面目に占っている人もいるんでしょうね」
 とゆいがいうと、
「それはそうでしょうね。皆が皆、そんなひどい人ばかりではないでしょうからね。そういう意味でも、そういう詐欺のような輩は、真面目にやっている人から見ても、大迷惑なのよ。でも、なかなか立証することは難しいし、被害者自身が、被害に遭っていないと思っているわけだから、厄介なのよ」
 といちかがいうと、
「そういえば、昔の話として聞いたことがあったんだけど、世紀末伝説というのがあって、ある宗教に入信している人たちは、その世紀末伝説を真剣に信じていて、教祖から、お布施をすれば、あの世に行った時に、幸せになれるということで、信者なら、皆の全財産をお布施させることに成功した教祖が、訴えられていたわね。何しろ、世界が滅亡すると言われた時、世界では何も起こらず、次の日から、また普通の生活が始まるわけだから、お金を出した人たちは、一文無しになって、この世に放り出された形になったのよ。教祖は確か夜逃げしたんじゃなかったかな? 本当に酷い話で笑ってはいけないんだろうけど、私はその話を訊いた時、本当にこんなバカな話に騙される人がいるんだって、心の中で笑っていたのを思い出したわ。あの時は本当に他人事だったんだけど、これこそが、本当のマインドコントロールなんでしょうね。何と言っても、人の気持ちに入り込んで、騙すわけだからね」
 とゆいは言った。
「まさしくその通りなのよ。でも、何が怖いのかと言って、人は何も信じずには生きていけないでしょう? 必ず何かを信じているはず。少なくとも自分は信じていると思うのよ。でも、こういう話が多いと、次第に人を信用できなくなってしまう。信用すると騙されるという構図が頭の中に出来上がるからね。でもね、人よりも自分のことが信じられないと思う人もたくさんいるのよ。それは自分に自信が持てないという人ね。だから、マインドコントロールにも引っかかりやすい。皆、自分が信じられないと思っているから、誰でもいいから、自分のことを信じてくれたり、自分の性格を分かってくれたり、自分を肯定してくれると、絶対にその人に服従しようと思ってしまうのよ。自分は信じられないけど、この人なら信用できるってね。そういう意味での詐欺を行う人もいるようだけど、これが結構たちが悪くて、しかも、厄介な如」
 と、いちかがいうと、
「どうしてなの?」
 とゆいが質問し、