小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

バラとスズラン、そして、墓場まで……

INDEX|17ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

「そんなことはないでしょう? 警察に言われることを覚悟で相手も、そういうことをしているんでしょう? いくら、警察が何もできないと分かっていても、もし、何かの弾みで捕まりでもすれば、これらの行動は必ず、追及されるでしょうね。だから、その男だって、意味を持ってのことしかしないと思うのよ。ところでね。その表に置いておいた人って、男なんでしょうね?」
 と言われた。
 ゆいは、少しビックリした。まさか、女性がそんなことをするとは思ってもいなかったので、いちかが何を言いたいのか分からなかった。
「ゆいは、私がどうしてこういう話をしたのか、ピンと来てはいないんでしょうね? これも別に私は意味もなく聞いたわけではないのよ。表に置いてあった花が、最初がバラで、次がスズランだったということに何か意味があると思ってね」
 といちかは言った。
「私もいろいろ考えてみたんだけど、バラやスズランのことをね。スズランというのは、猛毒があるというのは聞いたことがあったので、毒に対しての暗示ではないかと思ったんだけど、バラに関しては思いつかなかったわ」
 とゆいは言った。
「そうなんだ。今私が、バラを置いたのは、本当に男かって聞いたわよね?」
 といちかが聞いてきたので、
「ええ、それがどうしたの? 男でなかったら、女ということなの?」
「ええ、そういうこと。でも。それが最終的な答えではないの。あくまでも途中経過というところかしら?」
「ますます分からないわ」
 と、ゆいは、いちかが何を言いたいのか分からなかった。
「もしね、そこに置いたのが、女性だったとすれば、今度は、ゆりではないかと思うのよ」
 というではないか。
「ゆり? ゆりって、英語でリリーという、あのゆりのこと?」
「ええ、そうよ。ここまで言って分からない?」
「ええ」
「じゃあ、百合族って言葉聞いたことはない?」
 と言われて、
「聞いたことはあるけど、意味は知らないわ」
 と言った。
「知らないんだ……」
 と、今度は考え込むように、いちかが、顎に手を掛けて、考え込むようなポーズをした。
 ゆいは、人が知らないことを知っていたりして、周囲をビックリさせることが往々にしてあったりしたは、逆に、
「こんなことも知らないの?」
 とばかりに、ウブなところもあったりした。
 特に、大人の会話には、その傾向が顕著に表れていて、今回のような隠語もしかりで、さすがに、いちかも閉口してしまった。
「百合というのはね、大人の隠語なんだけど、女性同士の同性愛のことをいうのよ。いわゆるレズビアンね」
 と言われた。
「ああ、そういうことなのね?」
 とゆいが言うので、
「じゃあ、バラというのは分かる?」
 と訊かれて、
「今のお話の経緯からすれば、男性同士の同性愛、ホモということになるのかしら?」
「そういうことね。昔から、百合族、バラ族なんて言われ方をしていたりしたわ。私はあなたの部屋の前にバラがあったって聞いた時、もし、それが何かの暗号だということであれば、その答えは、ホモではないかと思ったの。これは、私の経験から感じたことなんだけど、私の前に付き合っていた男が男色だったということを聞かされたって言ったでしょう? あれから私は、そういう男色やレズのような一種の変態的なものが変に気になるようになったのよ」
 というのだった。
「そういえば、確か旦那さんが変態で、昔付き合っていた女が捨て台詞を残していなくなったということがあったわね」
 とゆいがいうと、
「ええ、そうね」
 といちかは、答えた。その表情が寂しげでもなく、却ってあっさりしているように見えた。
「じゃあ、あの女の話はウソだったのかしら?」
 とゆいが聞くと、
「そんなことはないわ。でも男色というわけではなかった。男色というのは、その性癖を隠すために、カモフラージュで結婚するというけど、彼にはそんなことはなかった。普通に私たちは愛し合っているし、ガツガツしたところもない。男の人が好きだというニュアンスはないし、彼は紳士なのよ」
 と、のろけのような言い方をした。
「それなら、よかったですよね」
 というと、
「でもね。彼はやっぱり変態だったのよ」
 と、少し語気を強めるようにいちかは言った。
「変態というと?」
「それはね、SMの気があるということなの。彼にはサディスティックなところがあるんだけど、それは、ベッドの中だけのことなんだけどね」
 と言いながら、恥ずかしそうに下を向くいちかだった。
「えっ、いちかはそれでいいの?」
 と聞くと、
「ええ、いいのよ。私も最初は戸惑ったわ。でも、そんなに嫌ではなかった。元々、彼がホモではないかって思っていたくらいだったので、ホモの男性に抱かれるよりはマシだと思ったのね。ホモの気がないと分かった時は嬉しかったもの。だけど、それなりに覚悟はしていたので、ソフトSMくらいならいいかもって思っていると、自分が彼に身体ごと委ねていることに気が付いたの。彼はとても紳士で、彼に委ねることに、私も快感めいたものを感じるようになったのね。私が身体を彼に委ねると、彼は本当に嬉しそうな顔をするのよ。私を包み込んでくれるようなね。彼の性癖というのは、羞恥系のものなので、痛みを伴ったり、苦しいものではないので、お互いに目と目が合った時など、本当に嬉しいの。ノーマルなセックスだったら、恥ずかしくて目を逸らすか、思わず笑ってしまって、ごまかすかのどちらかなんでしょうけど、彼との間にはそんなことがなく、私も快感に襲われていることに気づいたのよ」
 といちががいうので、
「じゃあ、いちかは、あなた自身もそういうセックスに染まっていったということなのかしら?」
 とゆいがいうと、
「そうかも知れない。あるいは、私自身にもマゾの気があったのかも知れない。彼からセックスの間に辱めを受けることで、身体にビリビリ電流が走る感じなのよ。何度でも昇天できるしね。こんな快感、今までになかった。身体の相性がいい悪いという人がいるでしょう? 私たちは、その領域を飛び越えている関係のような気がするの。お互いを求め合うというか、ずっと、二人の間のこのような感情をもたらす関係は永遠に続くのではないかという感覚ね。ずっと飽きることはないというかね。でも、そのためには、少々のプレイはエスカレートするかも知れない。不安と言えば、そこかしらね?」
 といちかは言った。
「いちか自身も、自分で変態だという意識はあるの?」
「ええ、ただ、その時に感じるのが、変態の定義って何なのかな? って思うのよう」
「というと?」
「私は、旦那といて、別に嫌でもないし、変態という言葉には皆抵抗あるでしょう? 私も旦那のことを変態ってあの女から言われた時はショックで、真剣、婚約解消、どうしようかって思ったのよ。でも、私はその時、思い切って聞いてみたの。あなたは、本当に変態なんかってね。そして、その話をそのオンナから聞いたというと、彼は、そのオンナとはすでに終わっていて、そのオンナの言っていることは、半分はウソだというのよね」
 といちかがいうと、
「えっ? 半分というのは?」