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バラとスズラン、そして、墓場まで……

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「わざわざそういうものを置いておくということは、相手にとって意味があるんでしょうね。バラには、実際に毒はないそうなんですが、棘に刺さると、そこから化膿したりするので、毒があると思われている。逆にスズランは、毒がなさそうに見えるけど、実際には猛毒があって、コンパラトキシンなどという有害物質ですね。どちらも美しい花ではありますが、肩や毒があるように見えて、実は存在しない。肩や、毒はなさそうに見えるけど、実際には猛毒の存在がある、特にスズランなどは、生けてあるその水を飲んだだけでも死に至ると言われるほどなんですよ。この人がどういう意味で、その二つを置いたのかは分かりませんが、毒という意味で考えると、何か、あなたへのメッセージのような気がします。同じ毒でも、植物、しかも、綺麗に咲く花というところが、私には気になるんですよ」
 と、刑事は言った。
「私には心当たりはないんですけどね。どっちにしても、その人の正体も顔も分からないからですね」
 と彼女は言った。
「他にもいろいろストーカー行為を受けていることはありますか?」
 と訊かれて、
「無言電話とか、この間は、数軒の店にデリバリーを頼んでいたらしく、何とか理由を説明して事なきを得たんですが、次第にエスカレートしていくんです。それで今回思い切って、ここに来ていたんです」
 というと、
「歩いていて、後ろからつけられているとかいうようなことはなかったですか?」
 と訊かれて、
「あったような気がします。でも、あくまでも気配なので、警察にいうわけにもいかないと思っていたんですよ」
 というと、
「そういう時は近くの交番に駆け込むのもいいかも知れないですね。自宅の近くの交番の位置はご存じですか?」
「ええ、分かっています。私は以前高校の時も、誰かにつけられている気がして、交番に駆け込んだことがあるので、交番の位置は把握しています」
 と彼女は言った。
「そうですか、とにかく話を訊いている限りでは、少ししつこいのと、陰湿な感じがするので、まずは、パトロールを強化しましょう。まずはあなたの家の近くをパトロール重点箇所に定めることにします。ひょっとすると、あなた以外にも被害に遭っている方がいるかも知れないので、その方も一緒に守る必要がありますからね。ただ一つ問題なのは、相手が誰だか分からないというところが問題ですね。今度、もしその男が現れた時は時間と場所を確認しておいてください。どこかの防犯カメラに映っている可能性がありますからね。そして、家の喘に何かが置かれている時雄、同じように書き留めておいてください。そのまま通報してくれても構いません。防犯カメラがどこかにあればいいんですけどね」
 と刑事は言った。
「分かりました。私もなるべく、防犯カメラの位置くらいは、自分が毎日利用する場所くらい確認しておこうと思います。あとで、私がよく立ち寄る場所を地図で示しておきますので、ご確認しておいてください」
 と、彼女は言った。
「そうそう、あなたのことも聞いておかなければいけませんね」
 と、順番が狂ってしまったことを思い出して、刑事が訊いてきた。
「私は、松下ゆいと言います。二十八歳になります。実は今度結婚するんですよ。婚約している状態ですね」
 というので、刑事も顔が少しほころんで、
「ほう、それはおめでとうございます。それなら、余計に憂いの目は切っておかないといけませんね」
 と言った。
「ええ、そうなんです」
 そこで、刑事はさらに訊ねてきた。
「あなたが、ストーカーを気になるようになったのは、婚約してからですか?」
 と言われて、
「ええ、婚約は、二か月前にしたんですが、ストーカーのような被害が気になるようになったのは、一月くらい前のことですね」
 ということであった。
「あなたは、婚約する前に誰か他の男性と付き合っていたとかいうことはないでしょうね?」
 と訊かれて、ゆいは初めて訝しく感じた。
「それは、二股とかそういう意味ですか?」
 と訊かれて、
「あっ、いいえ。そんなことはないと思いますが、念のために伺った次第です。お気を悪くされたのであればすみません」
 というではないか。
「私はそんなことはしていません、ただ、勝手に片想いをしていて、逆恨みのような感じであれば、分かりませんが」
 というと、
「さっきの、植物の話の陰湿さからすると、相手が勝手に思い込んでいるというパターンはあるかも知れませんね。もし、そうだとすると、少し厄介ですが、一度警察はお灸をすえておくと、案外と簡単に引き下がることも多いですよ。もっとも、その通りであればの話ですけどね」
 と刑事は言った。
「少し怖いですね」
 というので、
「じゃあ、GPS機能を警察でも見れるようにしてもかまいませんか? これはかなり個人の自由を制限するものなので、警察で行動監視もできるという意味で、お考えいただくこともできます。もちろん、すぐにとは言いません。エスカレートしてきてからであってもいいと思います。その時はこちらも、完全にあなたを守るようにしますので、検挙に繋がればいいと思います。あなたに取って一番いいのは、犯人が検挙されることですよね? いつこられるか分からないのをビクビクしていると、まともに生活できませんよね?」
 強制はしないということだが、少し躊躇もあった。
「あとですね。電話番号を警察で登録しておいて、その番号から着信があった時、その時、初めてGPS機能が働くというのはどうですか? これは、最悪の場合もそうていしてのことなのですが、もし、あなたがストーカーに追いかけられて、その場で隠れていたとして、声を出せない場合なども考慮しての方法になりますが、いかがでしょうか?」
 と言われた。
「それであれば、いいと思います」
 と、まずは、その登録をしておいて、ここからさらにエスカレートするようであれば、本当にGPS管理をお願いしようと思うのだった。

               親友の主婦

「もう一つ気になるのがですね。バラとスズランなんですが、何か意味があるのかな? と思ってですね。嫌がらせとはいえ、バラとスズランというのは、組み合わせとしては不自然に思うんですよ。例えば、バラかスズランのどちらかをあなたが好きで、もう一つが犯人と目される人が好きなものだということも言えるかも知れませんね。それとも、その花自体に何か言葉としての意味があるかということもありますけどね」
 と刑事さんは言った。
「私は、バラには興味があります。私は生れが六月なので、バラというのは、六月の誕生花でもあるんですよ。それで好きになったというわけです」
 というと、
「じゃあスズランは?」
 と訊かれて、正直すぐにはピンとこなかった。
 だが、何か頭に引っかかるものがあったのだが、そのことに気が付いたのは、それからしばらくしてからのことだった。
 刑事さんから、この二つについて少し考えてみればいいという助言を貰って、ゆいは、そのまま警察署を後にした。
 ゆいは、そのまま帰るのが怖くなって、友達に連絡し、話を訊いてもらうことにした。