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高値の女王様

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「ひなたの顔を見ているとね。急に怖くなってきたんだ。何か悔しいような気がしてきたというか、気のせいなんだろうけどね」
 と先生がいうと、ひなたは、キョトンとした表情をした。
 その表情が一種のあざとさを見せつけているようで、
「ひなたが、僕だけのものだということは分かっているつもりなんだけど、ひなたが僕を見つめてくれているその表情を知っているのは、本当にこの僕だけなんだろうかって、急に怖くなるんだ。もちろん、ひなたがそんな顔をするのは、僕にだけだよね?」
 というと、
「何言ってるのよ。先生だけに決まっているじゃない」
「ひなたのその上目遣いな表情、さらに、下から見上げた時の、物欲しそうな顔。僕にはとても切なく感じるんだ。それを他の誰にも渡したくない。ひなたのことを好きになればなるほど、余計にそんな気持ちになってくるんだ」
 と先生がいうと、
「ひなたに嫉妬してくれているのね。嬉しい。私先生に嫉妬されていると思うと、身体が熱くなるの。もっともっと、先生を癒してあげたいと思うのよ」
 と、ひなたは言ったが、実際には、sの言葉の裏に、S性が潜んでいることを、先生は分かっているだろうか。
 ひなたの方でも、先生を話したくないという思いが強い。そのためにはある程度、自分のことを引き付けておきたい気持ちになることが、先生を焦らすということに繋がるのだ。SMの関係というのは、お互いの変質的な好奇心を満たすだけではなく、相手を自分にいかにつなぎとめておくことができるかという気持ちの表れでもあるのだろう。
「ひなたは先生のもの」
 と言って、自分のことをもの扱いにするというのも、先生の自尊心を高めようという気持ちがあるからではないだろうか。
 先生の方でも、
「君は僕のものだ」
 と口では言いながらも、これ以上ないというくらいに、オンナとしてのひなたを愛しているのだ。
 オンナというものは決してものではない。これ以上ないというくらいに感情が入り込んだ恋愛対象であり、
「自分を犠牲にしてでも、この人だけは」
 という気持ちは、SM関係から生まれる場合もあるのだと、先生は考えていた。
 先生は大学時代、一度SM関係について研究したことがあった。好きになった女性がM女であり、先生をやたらと拘束することを楽しんでいるようだった。
 プレイとしても、凌辱系が好きなようで、相手の女に、恥ずかしい言葉を言わせることを楽しみにしていた。
 だが、その彼女とも、結構すぐに別れたのだ。
「あなたとは、趣味が合わない」
 と言われたのだが、先生には何が合わないのか、まったく見当がつかなかった。
 それ以降は、好きになって付き合った女の子は皆ノーマルだったので、頭の中からSMのことは半分消えかかっているそんな時に現れたのが、ひなただったのだ。
 ひなたは、先生のことが好きな気持ちに変わりはないが、その気持ちが最初の頃に感じた思いと同じなのかどうか、分からなくなってきた。最初の頃は純愛を好んでいたはずんだったのに、付き合い始めれば、まったく違った感情になった。
「身体を重ねるのは、あくまでも気持ちの確認のようなものでしかないんだわ」
 と思っていたはずなのに、一度身体を重ねてしまうと、
「そうよ、私はこの身体を想像して、ずっと先生のことを慕っていたんだわ」
 と感じるようになっていた。
 先生の方でもそうだったようで、
「自分の性していた相手が、たまたま生徒だったというだけのことだ」
 と、まるで教師であることを自分から放棄するかのような感情であった。
 あれだけ、生徒との間のことを気にしていたはずなのに、今では、
「教師と生徒だから何だっていうんだ。愛し合っていれば関係ないじゃないか」
 と思うようになっていた。
 そのために、職を失おうが、先生にとって、それほど重要なことではないと思えたのだ。自分が教師になったのは、
「ひなたに出会うためだった」
 と思えば、目的が達成できたので、教師でなくなったとしても、後悔はないと思うのだった。
 あくまでも、自分中心の考え方なのだろうが、相手のひなたも同じことを思ってくれているのであれば、これ以上幸せなことはないと思うのだった。
 先生と生徒という関係を一歩超えてしまうと、そこは二人だけの世界。誰にも入り込むことのできない世界であり、誰が何と言おうと引き離すことはできないと思うのだった。
 ひなたの方では、もしバレてしまった時には、先生と駆け落ちをしてもいいという覚悟は持っていた。
「どうせ、家族は崩壊寸前なんだ」
 と家族に未練もないし、学校にも未練はない。
 先生と会えなくなること、それだけが、辛いことだったのだ。

            その場限りの反省

 高校時代に、先生との逢瀬をあれだけ重ねていたのに、よく誰にも知られずに、卒業できたものだった。
 ひなたが好きではあったが、他の生徒は、先生のことをあまり好きではなかったようだ、
「あの先生、どこか気持ち悪いわよね、あの厭らしい視線には、皆ドン引きしていたもんね」
 と言っていたようだ、
 実は、先生も自分では気を付けているつもりだったようだが、生徒の方の目の方がえげつないと言えるのではないだろうか。
 ひなたの方は、完全に先生に対して贔屓目だったので、そこまでは感じなかった。ただ、好きなタイプの女性はどんなタイプなのかは分かっていたので、自分もそんな女の子になろうと健気に考えたことも事実のようだ。
 だが、他の生徒が先生を偏見の目で見ていたおかげで、正面から見ていなかったことで、ひなたとの関係が他の生徒にバレることもなかった。それに、先生のことを密かに思っている生徒も他にいなかったことも、ひなたにはよかったのかも知れない。
 他の先生も、ひなたのことはあまり意識していなかったようだ。
「典型的な大人しめの女の子で、目立つところもないので、問題を起こすような子ではない」
 と思っていたようだ。
 まさか、ここまで大胆な生徒ではないと思っていたのだが、ある意味誰も気付かなかったことで事なきを得たという、一種の結果オーライだったと言ってもいいだろう。
 さらにひなたという女の子は、感情が、
「熱しやすく冷めやすい」
 ところがあったようだ。
 一気に燃え上がった感情で、数か月澗突っ走った感じだったが、ホテルに最初に行った時をピークに、次第に感情が冷めてきていたようだ。感情にもタイムラグがあるようで、ホテルに数回行った時が本当に最高のテンションだったが、ある日、先生が淡白だった日があったのだ。
 体調が悪かったのか、それとも、何か心配ごとがあったのか、どこか上の空だったのだ。ひなたは、その時の先生の感情が分かったような気がした。
「どうしたの? 先生。心ここにあらずって感じだけど?」
 と聞くと、本当であれば、
「あっ、、いや、そんなことはないよ」
 とウソでもいいから、とぼけてほしかったのだが、先生はそのあたりは性格は素直にできているようで、自分の気持ちを隠し切れないようだった。
「先生って、こんなに感情の起伏が激しいんだ」
 と思うと、今度は、
作品名:高値の女王様 作家名:森本晃次