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高値の女王様

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「そうですね、初対面の人にはそう言いますね。でも、さすがに学生服を着ている女の子であったり、おばさんだと思うような人には言いませんけどね。少なくともここは大学内であるし、僕と同学年か、上級生しかいないと思ったからですね」
 ということだった。
 確信犯ではあるが、彼の言っていることに、違和感はない。彼の様子を見ていると、可愛らしいの一言だった。マッチョが好きなひなたには、彼を一人の男性という意識で見るよりも、弟という雰囲気がピッタリだ。
「おねえさん」
 と言われるのも、そういう意味では違和感があるわけではない、
 家では一人っ子のひなたなので、弟ができた気がして、そういう意味で、可愛いと感じるのだった。
 そういえば子供の頃に母親に、
「どうして、私には弟がいないの?」
 と聞いたことがあった。
 小学校の頃友達の家に遊びに行った時、友達の弟が、お姉ちゃんである友達に、必死になって、
「お姉ちゃん、遊んでよ」
 と言っていたのを思い出した。
 もし、ひなたが遊びに行っていなければ、友達が弟と遊んであげていたことだろう、弟は、ひなたに嫉妬したということだろうか。
 ただ、そんなことが分かる年でもなかったので、
「この弟、鬱陶しいわね」
 というような感情を抱いたような気がしていたのだ。
 それなのに、家に帰ってくると、友達のように弟が慕ってくるのが羨ましく感じ、
「どうして私には弟がいないの?」
 と、まるで弟がいるのが当たり前であるかのような聞き方をしたのだった。
「そんなこというもじゃありませn・赤ちゃんというのは授かりものだから、私たちの思うようにはいかないおよ」
 と言われた記憶がある、
 その時言われたのは、
「授かりもの」
 という言葉で、
「神様からの」
 という言葉はなかった。
 子供の頃なので理解できなかったが、今から思えば、あれは、思うようにはいかないというウソを神様のせいにしてはいけないという、わずかばかりの後ろめたさがあったのかも知れない。
 そういう意味では、母親は子供お扱い方が上手かったのかも知れない。友達がどのように聞いているのか分からないが、考えてみれば答えにくいことは、できるだけぼやかせて、そして、そういうことは人には聞いてはいけないということを、思い込ませているようだった。
 そのおかげで、あまり母親には逆らわない娘だったと思う。逆に、あまりにも曖昧すぎて、何が悪いのかという肝心なことを自分の中で消化できずにごまかしてきたように思う。高校時代の先生との恋愛も、その一つだったのかも知れない。
「悪いことをしている」
 という意識はあるのだが、何がどうして悪いのかというのがまったく分からない。それだけに、先生とズルズルいってしまったのではないだろうか。
 しかも先生の方も今から考えれば、あまりにもガードが甘すぎる。甘すぎるガードをこじ開けてしまったのだから、ひなたにも、邪悪な女をしての目があるのかも知れない。

              年下の彼氏

 そういう思いがあるからか、図書館で声を掛けてきた少年に、何か惹かれるものがあった。だが、そこがどこなのか、ハッキリ分からない。そもそも、好きなタイプでもないのに、なぜなのだろう? しいて言えば年下だからということになるのだろうか。
 彼は、大学にストレートで入ったという、ということは一つ年下ということになる。
 大学生でなければ、一つの年の差くらいはそれほどでもないのだろうが、一年生と二年生ではまったく違う気がする。今の法律では、満二十歳で成人となるわけだが、来年には十八歳で成人だ。
 浪人していなければ、二年生から三年生の間で、成人ということであるが、来年からは、高校生でも成人ということになる。
 今の法律では、一番若く成人になることができる可能性を秘めているのは、女性の十六歳だけである。男性も二十歳を待たずに十八歳で成人という括りになるのだが、それは結婚できる年齢である、結婚してしまうと、その時点で成人とみなされるので、そのあたりが現行法の難しいところである。
 現行法では、普通に成人は二十歳から、男性が結婚できる年齢は十八歳から、女性は十六歳からになる。
 ということは、成人になるのは、結婚してからになるので、結婚前が年齢的に未成年であれば、親の同意が必要とされる。
 そのあたりが、厄介なところであった。
 しかし、来年の令和四年になると、結婚できる年齢が十八歳で統一される。
 ということは、成人年齢も、結婚できる年齢も男女統一されて、十八歳だということになるのだ。
 そうなると、すべての人が成人を迎えてからの結婚になるので、親の同意を必要としないということである。
 成人するということは、結婚することと同じで、親の同意などの束縛がない代わりに、すべての責任を自分で負わなければならない。
 いわゆる、
「少年A」
 という表記ではなくなるということだ。
 結婚するために、親の許しが必要ではなくなるのだが、それだけ、責任は大きくなってくる。
「結婚しているけど、未成年」
 という言われ方はもうこれからはありえないのだ。
 話は逸れたが、十八歳から二十歳という年齢は、いろいろな意味で大きな二年間である。二十歳から十八歳に成人年齢が引き下がることで、今後どのようなトラブルが怒らないとも限らないだろう。
 ここでの一つの年齢差は、ひなたの方には意識できたが、少年の方はどうであろうか? 見た目は少年なのだが、果たして中身はどうなのか、よく分からなかった。
 ただ、見つめ合っていると、その目力に引き寄せられそうに感じる。ドキッとする感覚に、自分が少女になったような感覚だった。
「自分が年上なのに」
 と思うと、少年のその目に引き寄せられる自分が腹立たしく感じるほどだ。
 名前を聞くと、
「僕は西垣譲二というんだ」
 という。
 見た目は少年なので、名前負けしているようにも思えたが、あの目力を思うと、譲二という名前はふさわしいと思えてきたのだ。
「譲二さんは、どんな小説を書いてみようと思っていたんですか?」
 と聞くと、
「今のところは、ハッキリとしたスタンスはないんです。とにかく何か小説を自分で完結させることができれば、それでいいと思っているんです」
 というではないか。
「じゃあ、プロになりたいとかいう意識ではないわけ?」
 と聞くと、
「なれればいいのかな? とも思うんだけど、でも、しっくりこないんだよ。プロになると、自分の書きたいものが書けなくなるような気がして、それくらいなら、自分の書きたい作品を、どんどん書いて、言い方は悪いけど、『質より量』だと思っているんですよ。でも僕は結構曖昧な考えを持っているので、よくまわりからは、『その場限りの男』って言われたりしているんだよ」
 というのだった。
 ひなたは驚愕した。その場限りというのは、自分もよく言われていることで、その言葉はどんな表現をされようとも、褒められた表現ではないだろう。
「その場限りのどこが悪いっていうのかしらね?」
 と、少し捨て鉢な言い方をしたひなただったが、
作品名:高値の女王様 作家名:森本晃次