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高値の女王様

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「小説と絵画は、また少し違うかも知れないですが、結局は同じ芸術だということでもありますよね。ひょっとすると、同じものを見ているのに、まったく違う方向から見ることで、違った形の新しい芸術が生まれるかも知れないですね。たとえば、絵を描くという発想は、マンガを描いているという感覚に似ていて、アニメとして映像にもなりますよね。小説はドラマの原作として実際にもなる。今の時代ではそういう発想もあるでしょう。でも私たちの若い頃は、絵画と小説というと、一番の違いは、小説ではすべてが想像力によるものだけど、絵の世界は、視覚で感性に訴えるというものであり、私はどちらかというと小説の方が好きだったんです」
 とマスターは言った。
「私も本当なら、小説を書けるものなら書いてみたいと思ったことがあったんですけどね。でも、今言われたようなことを考えたことがなかったので、ひょっとするとそれを聞いた今なら書けるかも知れないような気がしてきました。少なくとも、集中力というのを考えた時、小説を書けるような気もしてきました。絵画と小説、二刀流でやってみようかな?」
 というと、
「そんな甘い物じゃない。どっちか一つにしておきなさい」
 と言われるかと思ったが、
「それはいいことだ。今はまだ若いんだから、いろいろな可能性にチャレンジするのはいいことだと思うよ。特に今の若い人を見ていると、何を楽しみに生きているのかって思いたくなるくらいなので、いろいろなことにチャレンジしようとしている、ひなたさんが眩しく見えて、羨ましいくらいですよ」
 とマスターは言った。
 ひなたはそれを聞いて安心した。
「やっぱり、年上の尊敬に値すると思う人には、安心感を与えれるんだろうな」
 と感じたのだ。
 それから、少しして大学の授業に出た時、図書館に寄ってみた。それまでは絵の描き方のハウツー本のようなものを見たことはあったが、小説の書き方はなかったからだ。
 小説の書き方というのは、思ったより少なかった。文章の書き方としてはあったが、小説に限っては、あまり置いていなかった。
 そもそも、小説と小説以外の文章の違いとは何かというのを思いながら本棚を見てみると、、まるでいまさらと思うことに気づいたのだ。
「文章、と文書」
 というものがそもそも違っているのに、それまで気付いていなかった、
 それはまだ大学生ということもあるからだろうが、文書というものは、ビジネス文書に代表されるように、ある程度ひな形のような書き方が決まっているもので、会社に提出するモノとして、退職願や、始末書なのどのようなものがビジネス文書と呼ばれるものであろう。
 しかし、文章と呼ばれるものは、散文と言ってもいいのだろうが、定文化されているものではないのだが、最低限の体裁は整っていないといけないだろう。
 例えば、文章の終わりには、段落分けをして、段落分けの最初の文字は一行開けるであるとか、クエスチョンマークや、ビックリマークを書いた後は一行開けるというような、本当に常識的なこと以外は、ある程度フリーに書けるというのが、小説としての定義のようなものだろう。
 小説には、フィクションとノンフィクションがあり、論文や作文、ドキュメンタリーなどがノンフィクション、そして、ミステリーやホラー、恋愛などのような、架空の話がフィクションというわけだ。
 一般的に小説と言われるのはフィクションであろう。ノンフィクションを小説の中に入れるのは、いかがなものかという考えもあるが、ひなたの意見としては、
「入らないと思う」
 という考えであった。
 そして、もう一つ気に入らないジャンルがある。それは、
「二次創作」
 と呼ばれるものだ。
 他人の書いた、小説であったり、マンガを題材にして、その続編を書いてみたり、あるいは、題材はそこから持ってはくるが、まったく別の世界のできごととして描くことで、オリジナリティを出そうという魂胆なのかも知れないが、しょせんは
「他人のふんどしで相撲を取っている」
 というだけの、言ってしまえば、盗作まがいの話ではないかと思うのだった。
 小説のハウツー本を読んでみると、一番重要なことは、
「どんな作品であっても、最後まで書きあげる」
 ということであった。
 小説を最後まで書けない理由についていろいろと書いてあった。
 まず考えられるのは、文章が出てこないということだ。これはそのまま、発想は浮かばないということであるが、一つの理由として、
「プロットをキチンと書いていないからだ」
 と言えるであろう。
 プロットというのは、小説の設計図とでもいえばいいのか、マンガであれば、ネームと呼ばれるものであろう。
 どういうジャンルにするか、時代背景、登場人物、場所の設定などいろいろな考えられることを箇条書きでもいいから書いておく。プロットには決まった形はないので、自分で分かりやすいように書いておけばいいのだ。
 箇条書きにするのもいいし、登場人物などは相関関係図を描くのもいいだろう。小説のジャンルによって、必要なことは異なる。ミステリーなどは、探偵、犯人、トリック、被害者、そして、どのように解決に結びつけるかなどいろいろあるだろう。特に相関関係図などは、作中の挿絵などにも使えたりするので、書いておくといいかも知れない。
 まったく何も考えずに書き始めると、数行書いて、もう書くことがないのだ。すでに策は出尽くしたとでもいえばいいのか、それが初心者が陥る最初の難関である。
 その時に感じるのが、
「やはり小説を書くのは難しい。俺なんかが書こうと思ったことが間違いだったんだ」
 と思うことである。
 そして、書けなかった理由のほとんどを、小説を書くのが難しいという枠に押し込めてしまうから、書けなくなるのだ。
 どんな内容でも、どんなに下手くそな文章であっても、最後まで書きあげてしまうと、後から手直しなどいくらでもできるというものだ。
 まったく何もないところから書くよりも、一度書いたものの手直しをする方が、相当楽であることに気づくはずだ。
 そして、書けない理由のもう一つは、
「自分に自信が持てない」
 ということである。
 自信がないから、余計に、プロットも書かずにいきなり原稿用紙に向かおうとする。プロットがよほど難しいものだということを考えているのだろうが、少なくともアイデアを出すくらいの知識は誰にでもあるというものだ。
 小説のジャンルについて、まったく知らないという人はいないだろう。少なくとも、
「小説を書いてみたいな」
 と思っている人は、それまで小説を読んでから、
「あんな風に書ければいいな」
 と感じたから書こうと思ったはずだし、まったく本を読んだことのないという人に、小説を書こうという意識はないはずだ。
 それを思うと、ジャンルくらいは思いつくだろう。後は消去法である。書いてみたい小説の中から。どれだったら書けるか? あるいは、何を書いてみたいと思うかということを消去法で考えていけば、書きたいものが残るはずだ。(残らなかったら、しょうがないので、そこで諦めるしかないのだろうか)
作品名:高値の女王様 作家名:森本晃次