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蘇生の成功術

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「私は冷凍保存についてなんだけど、これに注目したのは、タイムマシンというものの実効性に疑問を感じたからなんだよ。今もいろいろなところで研究がなされていると思うんだけど、どうしても、相対性理論の考え方から、タイムマシンでは未来には行けるけど、過去にはいくことができないというものだよね? 未来に行くには、ロケットなどの高速で移動するものに乗って、飛び出して戻ってくると、そこは数百年先だったなどという夢のような話だよな。だけど、君も知っているのではないかと思うのだが、今ある最高速の物体を使ってその中で一年以上過ごしたとしても、秒単位でしか時間の誤差は生れないんだ。それを考えるとb、それこそ、光の速度を超えるものでなければありえないということになる。そういう乗り物の開発はひょっとすると、未来においてはできるかも知れないが、ではそこで人間が果たして耐えることができるかということだよね。そのために、人口睡眠装置を使って、ロケットの中にいる間。ずっと眠っていたとしようか? 一体どうなるんだろうね?」
 と、教授はそこで一回話を切った。
「私は以前、その手の話で、少し怖い話をドラマで見たことがありました。数人で宇宙ロケットに乗りこみ、全員が一斉に睡眠装置で睡眠状態になるんですが、一人のクルーが目を覚ました時、他の人たちは何があったのか分からないけど、たぶん機械の故障だったんでしょうね。睡眠装置の蓋が開いてしまっていて、中を見ると、他のクルーが皆白骨化していたというものでした。そのドラマではつまり、自動睡眠装置お中では時間が進まない工夫がされていて、他の機械では、蓋が開いてしまったために、急速に時間が進み、骨になってしまったのではないかというものなんです」
 と、山沖の話を切った、
 すると教授が、
「ん? ちょっと待ってよ。その話でいくと、生き残った人も、蓋が開いて出てきたのだから、時間があっという間に進んでしまって、老化してしまっているんじゃないのか?」 
 というと、待ってましたとばかりに、山沖は言った。
「そう、その通りなんです。でも、時間が進むにしたがって、別に年を取っていくというわけではない。ロケットを点検していると、もうすぐ地球に帰る日が近づいていたんですよ。地球上では、理論的に、数百年が過ぎているはずでした。地球に降り立つと、そこにはすでに見たことがない光景が広がっていた。だけど、見たことのあるような人もいるんですよ。そこにいたのは、自分たちをロケットに乗せて打ち上げた研究員たちで、ビックリしたことに、白骨になっているはずの人たちも、生きてそこに存在していた。どういうことなのかと聞くと、自分たちが飛び立ったあとで、タイムマシンが完成し、実用化したという、実はロケットに乗って宇宙に飛び出したのは、タイムマシンが失敗した時の保険として飛び出したのであって、実は自分以外の人たちも、こっちの世界にタイムトラベルしていたのだ、同じ人間が同じところに存在できないという観点から、ロケットを遠隔操作して、タイムトラベルに成功した人間をロケットの中で抹殺したというわけなんだそうです。でも、逆にタイムトラベルに耐えられなかった自分は、タイムトラベルで白骨化してしまったので、ロケットに乗っている本人が生きているということになるんだそうです。つまり、タイムマシンも、ロケットによる移動も、どちらも保険だったということになるんですよ。恐ろしい話でしょう?」
 という山沖の話を訊いた教授は、一瞬背筋が寒くなったのか、ビクッと身体を動かしたのだった。
「いや、なかなか、ホラーなお話だね。でも、今の話は実際にもあり得ることなのかもしれないね。科学者というのは得てして保険を掛けるものだし、それが当たり前だと思っている。逆に保険も掛けずに研究するというのは、科学に対しての冒涜であり、科学を万能だと思うことも、してはいけないことではないかと言われているんだ。そういう意味ではその小説を書いた人は、よく科学者の心理を分かっている、小説家の頭の構造というのは、案外科学者の頭の構造に似ているのかも知れないな」
 と教授は言った。
「そうかも知れません。私もその小説を読んだ時、何か背筋に寒いものを感じましたからね。でも、本当にタイムマシンやロボットというのは、言われているように、開発してはいけないものなのでしょうか?」
 と山沖がいうと、
「そうかも知れないけども、そもそも、これらの発想は小説の世界から飛び出した発想だとも言えるんだよ。ロボット工学三原則もそうじゃないか。逆にいうと、小説家のような発想がなければ、科学者もできないということになるかも知れない。さっきも言ったように、保険を掛けるという発想が科学者にあるだけで、小説家というものはある意味、思ったことをいくらでも書ける。だけど実際の研究者はそうはいかない。下手なことを研究して、間違った方向に世界を導いてしまうことだってあるんだ。それを思うと、責任は重大だよね」
「でも、小説家もそうなんじゃないですか?」
「いや、小説家は、フィクションだと言えば、いくらでも書けるんじゃないかな? それを思うと、逆に怖い気がするんだけどね。でも、逆にその自由な発想が、研究者のヒントになることもある。そういう意味では思考回路が似ているというのも、、あながち間違いではないかも知れないな」
 と教授は言った。
「見終わった後、最終的に終わり方も中途半端だったので、いろいろ考えてみたんですが、やっぱり分からなかったですね」
 と山沖がいうと、
「それはそうだろうね、この手のドラマ、私はオカルトなのだと思うんだけど、こういう話は最後にぼかして、いかにその内容を視聴者に考えさせるかというものだと思うんだよ。特にこれが小説となると、たぶん、最後の数行であったり、一ページくらいの間で、何か大どんでん返しがあり、それが中途半端に煮えるのかも知れないんだけど、それが小説の醍醐味だと思うんだよ。もっとも、そんな小説が面白かったりするんだよね。特に今はそういう小説も多いしね」
 と教授は言った。
 なるほど、教授の言ったとおり、今から思えば、その手の小説の出版も、テレビドラマ化されるものもそのようなものが多かった。
 そういえば、テレビドラマ化されるものも、昔から比べると、結構変わってきた。
 昔はホームドラマや、刑事ものでも、一話完結で、人情ものなどが多かったけど、それが平成に入ると、
「トレンディドラマ」
 なるものが増えてきた。
 原作があるというよりも、脚本家がオリジナルで書く時代であり、そのノベライズ本が売れた時代でもあった。したがって有名脚本家が数名いて、どの脚本家が手掛けたドラマなのかということで、視聴率が大きく変わったりしたものだ。
 テーマも恋愛ものが多かったりした。いわゆるトレンディな世界である。
 それが終わると、少しドラマ関係はシリアス系統に入ってきたりしたが、次第にそれがいろいろあジャンルが増えてくることになった。
 その理由としては、原作が脚本家オリジナルであったり、小説であったりという従来の形から、現在の定番と言ってもいいような、マンガが原作のものが多くなった。
作品名:蘇生の成功術 作家名:森本晃次