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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑦能登半島(福井県)

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 輪島を後に、海岸線のR249で東に向かった。今日は先ず、半島の先端部分をぐるりと回る予定だ。
 最初に立ち寄ったのは道の駅「千枚田ポケットパーク」。その展望台からは、小さな棚田が幾つも重なり海岸まで続く「白米(しろよね)千枚田」の絶景が見えた。掲示板の説明によると、1004枚の棚田の中には、小泉元総理大臣や有名な方々の田があるとのこと。確か、「所さんの目がテン」は、この千枚田と友好関係にあったはず。
 夫はこれまで、海岸の横の田んぼを見たことがなかったが、この棚田の下の方の稲は、海水が掛かってしまうのではと、要らぬ心配をしてしまった。
 千枚田の沖合に見える七ツ島とのセットで、千枚田の景色が深く記憶に残った。

 更に東に向かった。千畳敷の岩場が広がる景勝地の珠洲市(すずし)仁江海岸(にえかいがん)では、日本で唯一、昔ながらの製法で塩を作る「揚げ浜式製塩法」が受け継がれており、道の駅「すず塩田村」には、その資料館「揚浜館」があるのだが、旅の途中はまだ建設中のように見えため、立ち寄らず。

 この海岸には奇岩の「ゴジラ岩」があるとのこと。岩場の海岸を見ながら走っていると、それほど大きくはない岩だったが、確かにそう見える岩を発見。道路際のスペースにキャンピングカーを停めた。
 防波堤から50mほどの場所に、海の中から現れ、今に上陸しそうな・・・、小型のゴジラだ。それを西側から、東側から眺め、最もゴジラに見えるアングルで写真を撮った。撮り方によっては、かなり本物のゴジラに見えるのでは。背景に夕陽を入れると、良い作品になりそうな気がした。

 その先から、海岸線の岩場はダイナミックになっていった。そのフォトジェニックな海側に面した急勾配の坂道が目に飛び込んできた。アクセルを踏み込み、それを一気に上り切ったところの「椿展望台」からは、日本海に落ち込む断崖と海の絶景が広がっていた。

 その先には、能登半島の最先端の「禄剛埼(ろっこうさき)灯台」があり、最寄りの道の駅「狼煙(のろし)」にキャンピングカーを停めた。そこからのかなり急な歩道を登ると、芝生広場の向こうに白亜の灯台が見えた。海抜約50mの岬に建っている灯台のためか、灯台自身の高さはなく、それが却って、どっしりとした印象を与えている。日本海を暫く眺め、崖下にも目をやると「千畳敷」と呼ばれる海食棚が広がっていた。奥能登の日本海側は自然に溢れていると肌で再確認した。このポイントから南下する旅に切り替わった。

 富山湾に続く半島の東側の海岸線は、先ほどまでの日本海側の雰囲気とはガラリと変わり、穏やかな、人の営みを感じる景色に変わっていった。その中の「見附島(みつけじま)」を目指した。
 学生の頃、バイクで「日本一周」用に買った北陸地方のガイドブックの表紙に、この島の写真が載っていた。日本一周は春休みに決行したため、能登半島は雪や氷に閉ざされている雰囲気だったため、残念ながらパスしてしまった。そのため、この島の姿を見ることはなかった。そのことが、今回の能登半島一周の旅の、潜在的なトリガーになっていたのかもしれない。
 見附公園内の駐車場から向かった松林の奥に、この島が見えた時は“やっと会えた”という感覚に陥った。一目見たいと思ってから40年以上の時間が経過していたこともあり、その思いを妻に熱く語ったが、どこまで聞いてくれたのやら。
 近付くに連れ、別名「軍艦島」と呼ばれる高さ28mの姿に圧倒された。
 歩いて島を一周しようかと思い、砂浜で遊んでいる地元の子供たちに訊いたところ、今は出来ないとのことだった。
 「過去が羨ましい」と、ふと、そんな気持ちが湧いてきた。何故だろう。あの表紙を見てからの40年間の充実した人生を経験してきた今、これからの人生は40年もないのだが、これまで以上に充実したセカンドライフになるのだろうか、ゆっくりと考えてみたい。帰り際に買ったのは「塩キャラメル」、能登の塩の味が口の中で広がった。