小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

無限への結論

INDEX|11ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

「だから、それが計算だったんですよ。国民にやる気のない素振りを見せて、強行突破をする。それが、一番自分にとって被害が少ないとでも思ったんでしょうね。何しろ国民や世論とは考え方に結界を持っている人だったので、逆にある意味分かってしまうと、これほど分かりやすいロボットもいない。しょせん、やつは操り人形。国民の目を逸らすための捨て駒だったようですね」
 というのを聞くと、
「じゃあ、すべてを裏で操っているドンがいたというわけですね?」
「ええ、その通りです。それが実は当時の野党にいたんですよ。それまでは党首の影に隠れて黙って潜んでいたんですが、オリンピックを強行したあたりから、入ってきた金で、この日本を牛耳るつもりだったんでしょうね。そして、日本からいずれは世界の制服を木富む秘密結社の元締め。それがその男だったんです」
 ビックリする話ではないか。
「でも、タイムマシンやロボット開発を禁止するというのとは少し違うような気がするんですが」
 と聞くと、
「それは、国家として一本化した開発をしているので、それ以外は許さないということです。秘密結社に対しての特殊警察も結成されましたからね。彼らは時として、総理大臣よりも強力な力を持っています。それくらいの力がないと、令和三年のクーデターが起こらなければ、日本民族は滅亡していて、そこから日本でロボット王国が取って代わる計画だったんですよ。日本を拠点として、全世界に散ったロボットの王国を作る。人間は領土で国家を形成するが、ロボットはそうではない。金の力と、彼らの絶大な特化した能力によって、国家が形成されるというわけです。何とか、その計画はぶっ潰すことができましたが、あれから全世界の人間は、急にシビアになって、ロボットを敵対視するようになり、タイムマシンを嫌悪するようになりました。そして、歴史の過去に学ぶことはしますが、文明や文化の答えを歴史に求めるようなことはしません。だから先ほどのあなたの質問にあったブームの再来ということは決してないのです。この文化こそ、生まれ変わった日本民族が最初に作り上げた文化なのだと言ってもいいでしょう。そういう意味では、あなたのいた世界の未来は、ここではないのかも知れないですね」
 と店主は言った。
「それにしても、野党というのは侮れませんね。私などは、当時の野党は、政権与党を批判ばかりして、まったく代替案を示さない、そんな無能な連中がと思っていましたからね」
 というと、
「その通りなんです。だからこそ、悪い連中に目を付けられるんです。野党というのは、与党しか見えていませんからね、与党を潰すためなら何でもやるという感じで、目の仇とはこのことです。だから、野党の中にフィクサーが潜んでいても、誰も怪しみませんよ。国民だって、野党は見るのも嫌というくらいに毛嫌いしていますからね。それも、フィクサーの計画通り、きっとその男は、仮想敵を攻撃するということを自分でやるのではなく、医らから操ることに掛けては右に出るものがいないほどの無双の人だったんだって思います。それこそ、ロボットだったんではないかって思うんですよ。一つのことに掛けては秀でているというですね。だから、そんなやつに掛かったら、野党なんて、小指の上で踊らせることができるくらいですよ。そうなると、誰も怪しみません。その男が与党の中に一人か、あるいは数人、自分の同士を作ってしまえば、与党内部の話はすべて聞けるし、遠隔操作で、いくらでも、見えない形で好きなことができる。いわゆる当時の流行語になった『リモート』というやつですね。そいつらが首相を洗脳していく、それによって、オリンピックの強行が行われることになったんです。もっとも、実行委員会の連中お必死ですよ。何しろ、オリンピック委員会と言っても、やっていることは自転車操業のようなものですからね。決まったことさえやっていれば、お金が入ってくる。それを知禁にして、自戒の開催もつつがなく行えさえすれば、またお金が入ってくるというところですね。開催さえできれば、やつらはそれでいいんですよ。逆にいえば、開催できない時のことは考えていないので、できなかった場合は、これほど弱い団体はない。完全に崩壊してしまって、それまでの闇が表に出てきて、死刑になってもまだ足りないくらいの罪状がいっぱい出てきて、そこで人生もジ・エンドというところでしょうか?」
 と説明してくれた。
「そんなウラがあったんですね? もしその話が本当だったら、本当にそのフィクサーというのは、ロボットだったのかも知れませんね。そもそもロボットというのは、人間の役に立つために開発されるためであるのだけれど、マンガや小説に出てくるロボットというのは、基本的に悪の手下であって、自分たちの組織の利益のために働くというのが、定番ですよね。そこに正義の科学者がいて、正義のロボットを作る。その二つが戦うというのが、王道のロボットSFストーリーなんじゃないのかな?」
 と松岡がいうと、
「ほう、令和三年という世界はそんなマンガを意識していたんですね?」
 というではないか。
「この時代の人のマンガというと違うんですか?」
「ええ、ロボットというのは、基本的に開発してはいけないものなんです。だから、ロボットものを書くとしても、完成することは許されないんです、開発しようとする悪の組織があれば、その組織をやっつけるという勧善懲悪を人間が行うという話にしかすることはできないんです」
「じゃあ、話の幅が狭まってしまいますよね?」
 というと、
「そうでもないですよ。ロボット開発がどれほど危険かということをマンガを通して知らしめる必要があるので、ロボット開発によって、悲惨な世の中になるという架空の話を描くのはいいんです。要するに、問題は、ロボット開発をすることは倫理上許されないということを教育で教え込むというところにあるからですね」
 ということを聞くと、
「そうなると、さっきの野党のフィクサーというのが、本当はロボットだったのではないか? という仮説が、信憑性をいよいよ帯びてくるわけですね?」
 と、松岡は興味津々で、身を乗り出しながら話を訊いた。
「そうなんですよ。そういうのが、今の世界の主流になっているんです。だから、この三十年の間にどんなことが起こったのか、我々は歴史では習っていません。ただ、一度世界は滅ぶ前に寸前まで行って、そこから立ち直った世界であり、そのために、昔の歴史を肘繰り返してはいけないという、一種の『パンドラの匣』のようなものだということを習いました」
 という。
「ということは、あなたも本当の歴史を知らないわけですね?」
「ええ、どこまでが本当なのか分からないという意識を最近では持っています。だから、さっきの話もどこまでが本当なのか、ひょっとすると、マインドコントロールされているのではないかとも思っているんです」
 と言って、恐縮しているようだった。

                 科学力の限界理論

 未来の、本当であれば、
「過去の歴史を知っている人」
 というはずの人から、
「本当は知らない。過去の歴史が信用できない」
作品名:無限への結論 作家名:森本晃次