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無限への結論

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 答えを求めるということは、当然、それが答えであるという証明も一緒に求められる。つまり、答えに対しての証明が、その間のプロセスであり、プロセスの分からずに答えが分かったとしても、誰がそれを答えだと認めてくれるだろうか?
 回答というものは、まわりの納得がなければ答えだとはいえない。ものによっては、自分が認めることで答えだとすることができるものもあるが、余計に自分で納得できるものを無意識に探しているではないか。それと同じである。
「プロセスもなく、それを答えだとして、権力を使って思い込ませようとするのは、令和三年時点の首相や、その取り巻きの政治家の連中と同じではないか」
 ということである。
 考えてみれば、それが令和三年の首相の一番の罪ではないかとも思える。答えにならないことを強引に答えとして示そうとするから、ありもしない証明をかなぐり捨てて、民主主義を崩壊に追い込み、さらに独裁国家として滅亡に追い込もうとする、もう、怒りしか追いかけてこないなんて、情けないにもほどがあるというものだ。
 そういう意味で、未来のこの時代に、過去の回帰があるということは、一度文明としては飽和状態に至ったことで、ここは新しい世界が芽生えたのかも知れない。
 彼らにとって、この世界は、自分たちがいた令和三年の未来ではないのではないかとも思えてきた。
「あの、すみません」
 と、料理を運んできたウエイトレスに訊いてみた。
 ウエイトレスなので、そんなに詳しいことを知っているわけでもないが、ファッションやブームに関しては詳しいのではないかと思ったからだ。
「この時代のこのブームのようなものは、かつて一度流行ったことがあるものですよね?」
 ということを聞くと、彼女は少しキョトンとした様子で、考えていたが、
「そんなことはないですよ。この時代の文化は過去に一つもない無双のものですよ。私たちが過去のものを模倣するなんてありえないじゃないですか?」
 というのだった。
 彼女の言い方は完全に力が籠ったものだった。説得力というのとは少し違っているような気がするが、その様子は、松岡が叱られているかのようだった。
「あ、いや、すみません。おかしな言い方をしてしまいましたね。では、また当たり前のようなことを聞きますが、今は何年ですか?」
 と聞くと、
「令和三十二年ですよ。何を分かり切ったことを聞くんです?」
 と言って、また怒り出したのを見た店長と思しき人が慌ててやってきて。
「お客様、よろしければ、こちらにお願いできますか?」
 と言われて、奥に連れていかれた。
「お客様は、過去から来られたんですか?」
 と訊くので、
「ええ、そうですが、どうしてそう思うんですか?」
 というと、
「笑われるというのを覚悟でもう師走が。私はちょうど昨日見た夢で、過去の人と話をするという夢を見たんです。ちょうどその夢も店の女の子に過去の人間が不思議なことを聞いて女の子を怒らせるというシチュエーションだったので、それで気になったんです」
「そうだったんですか。実はそうなんです。タイムマシンを開発したので、未来に来ました」
 と松岡がいうと、彼が、
「そうだったんだ……」
 と言いながら、考え事をするかのように、次第に考えている内容が自分でもおかしいと分かっているかのようだった。
 彼は少し間があったが、話を続けた。
「実は、今のこの世界には、タイムマシンというのは存在しないんですよ」
 というではないか。
「えっ? じゃあ、この世界は、自分のいた世界の未来ではないのか?」
 と、パラレルワールドを思い浮かべ、到着する世界を間違えてしまったということなのかと思い、
「タイムマシンは失敗だったということか……」
 と松岡がいうと、
「実はこの世界では、タイムマシンを作ることは、法律で禁止されているんです。刑法でも、かなり思い罪であり、一歩間違えると、死刑になってしまいます」
 というではないか。
「じゃあ、放火殺人並みということかな?」
「いえいえ、もっと思いです。もしタイムマシンを開発したことが分かると、身内は善財産没収のうえ、血縁関係にあるものは、刑務所で無償の奉仕が待っています。それだけタイムマシンというのは、世の中において、あってはならないもの。開発してはいけないものとされたんです」
 という。
「タイムマシンだけですか?」
 と聞くと、
「ロボットもそうです。ロボットも、タイムマシンも、人間に対して悪しか生み出さないものとして禁止されたんです」
「どうしてなんですか?」
「理由は、令和三年に行ったオリンピックが原因です、あの時の政府高官はタイムマシンを持っていて、日本人が滅亡する場合は、自分たちだけ別の時代に逃れて、また戻って歴史をやり直せばいいと思っていたんです。それをオリンピック開催寸前に察知した人がいて。クーデターを起こし、政府を破滅させ。国家の接待絶命の危機を救いました。それから日本人と世界の人々は、日本の国家とオリンピック委員会の連中を倒し、オリンピックというものがこの世からなくなりました」
「そうだったんですね。それでこの時代はタイムマシンとロボット開発を断念したということになったんですね?」でもロボットというのは?」
 と聞くと、
「ロボットは、実際にもう運用されていたんです。そのロボットの代表が、オリンピック実行委員会の面々だったのです」
 ということを聞くと、
「なるほど、だから、あの時、オリンピック委員会の会長や副会長は、国民などどうでもいいから、競技者が伝染病に罹らないようにワクチンを打てば問題ないなどという、日本国民を愚弄する表現ができたんですね?」
「その通りです。人間の血が一滴も流れていないやつらに、忖度などできるわけもないという理屈です」
「なるほど、じゃあ、我々のいた時代は、本当に悪魔の住む世界だったわけですね?」
「ええ、その通り。日本政府の中にもいくつかのロボットが入り込んでいましたよ。一番笑ったのは、ロボットのくせに体調が悪いから辞任した男がいましたよね? それも一度ならず二度までも」
「ははは、じゃあ、あの男もロボットだったわけですか?」
「そうじゃなきゃ、あんなに血も涙もないことができるわけでもない。しかも、どこかネジが外れていたのか、何かの政策を打ち出せば、すべてが裏目で、国民の反感ばかり買っていたでしょう? それこそ、忖度させることは得意でも、自分からは忖度できないというロボットそのものではないですか」
 というのを聞いて。
「なるほど、あれ以上分かりやすいロボットもいないというわけですね?」
「そうですね。もっというと、その後任者も似たようなものでしたが、あっちは、逃げるのが得意でしたけどね。あのロボットは猪突猛進型だったようで、国民を説得するというよりも、自分がやりたいことだけを押し付けようとするので、見ていて何も感じないという会見が多かったんです」
「ん? だったら、何か逆な気がするんですが」
 というと、男はニッコリと笑って、
作品名:無限への結論 作家名:森本晃次