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時間の螺旋階段

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 一票の違いであっても、民主主義では同数ではない限り、少数派は見捨てられる運命にある。考え方としては残るかも知れないが、決まったことがそれから以降では、
「正義」
 ということになるのだ。
 つまりは、
「少数派というのは、どんなに優秀な考えであっても、見捨てられる」
 ということだ。
 もちろん、決を採るまでに国民に十分な理解を得るような演説であったり、講演会が催されるのだろうが、中には、政府の中で、自分の利権のために、
「おカネ」
 という武器を使う人もいる。
 本来なら禁じ手なのだが、それが横行するようになると、今の世の中のように、
「民主主義イコール金権政治」
 ということになる、
 票を金で買ったりする輩が公職選挙法違反という形で、選挙前から、選挙が終わってしばらくは、絶えず誰かの手によって、新聞を賑わしているのが恒例ではないか。それが民主主義というものの限界だというのは、実は百年以上前から叫ばれていることだった。
 そこに台頭してきたのが、社会主義という考え方である。
 これは、その先にある、「共産」という考え方を目指すもので、
「民主主義との大きな違いは、国家の権力によるものである」
 というものだ。
 民主主義はあくまでも、国家は表に出ずに、自由主義であるのだが、それによって差別や貧富の差が顕著になってくると、政府が国民を縛るという考えが出てくるのだ。
 国家の社会形成という一つの歯車の中に、すべての人間が組み込まれるという考えだ。だから、社会主義は、社会(政府)至上主義と言ってもいいだろう。
 そこで目指すものは、企業や生産を国家の体勢に組み込むという、
「すべての産業の国営化」
 である。
 こうしておけば、会社の大木さによって貧富の差が生まれることはないし、政府の政策の下なので、差別もないという理想論であった。
 だが、これは通貨の流通を滞らせてしまったり、国家による国民生活の干渉により、いわゆる、
「ピラミッド型の体制」
 が出来上がってしまう懸念があるのだ。
 一部の特権階級によって、世間が牛耳られるということは、一党独裁になってしまい、最高権力者の思い通りの国家が出来上がってしまうことで、独裁政治になるということだ。
 諸外国とは一線を画し、誰も守ってくれないことで、自分たちの身は自分で守らなくてはいけないということになり、軍事国家に変貌することで、国民の生活は困窮を極めることになるだろう。
 どこからも助けがないのは、国家自体が独裁国家で、国際社会に対してその正体を明かすことができないからではないだろうか。
 そんな国家が理想の国家であるというのもおかしな話で、共産主義、さらに社会主義の国というのは、世界でも、有数しかなくなってしまっているのだ。
 そういう意味ではどの国家も、一長一短があるということである。日本という国も同じで、戦争がないというだけで、果たして平和ないい国だと思っている人がどれだけいるだろう。政府は腐敗し、歯止めが効かなくなってきたし、何よりも、
「有事になると、政府は平気で自分たちの利権を守るために、国民を見殺しにする国家だ」
 ということが、顕著になってきたではないか。
 そんなことは口が裂けてもいえるわけはない、
理不尽であっても、矛盾していても、自分たち刑事は、法の下で方に準拠しながら、国民の安心安全と守らなければならない。
 そういえば、
「安心安全」
 という言葉が、オブラートよりも薄い世の中になっていたのだが、それも口に出すことはできない。
 今の世の中、綺麗ごとはそのほとんどが政治家の詭弁や欺瞞のために使われるしかない世の中になり果てていたのだ。
 考えれば考えるほど、世の中がネガティブにしか考えられない人が増えてきた。政府やマスゴミのせいであるが、行方不明になっている人で、これから自分が捜索しなければいけないその人は、
「マスゴミではないマスコミ」
 だということを願うしかないだろう。
 そういえば、辰巳刑事に捜査を依頼した新聞記者がおかしなことを言っていたのを思い出した。
「実は、行方不明になった新聞記者なんだけど、どうもおかしな状態になっているって、かれの 同僚から聞かされたんですよ」
 と言っていた。
「どういうことなんだい?」
 と辰巳刑事が訊くと、
「最初はその人の感覚として、記憶喪失になったんじゃないかって思ったらしいんだ。今までのことをほとんど覚えていないし、話の内容が支離滅裂だからだというんだ」
「記憶を失ったとすれば、それはすべての記憶をなのかい? それとも最近の記憶だけとか、あるいは、途中の記憶が抜けているとか、記憶喪失にもいろいろあると思うんだけどな」
「そうなんだよ。問題はそこにあるんだよ」
 と、新聞記者は少し興奮気味に話した。
 新聞記者は続ける。
「実は、記憶を失っているのは、最近の記憶には違いないらしいんだけど、その代わりに、彼の記憶とは思えない記憶が彼の中に残っているというんだ」
 と言われて、
「ん? 話の内容がいまいち分からないんだが、まるで、誰かの記憶と交錯しているかのような感じなのかな?」
 と辰巳刑事がいうと、
「そんな感じなのかも知れないけど、その交錯している相手が近くにいないmだ。誰か分からないということで、出版社で彼がおかしいことに気づいた人は、皆、気のせいではないかと思ったということなんだよ」
 と、新聞記者は言った。
「それはおかしな現象だね。でも、記憶が人と交錯するというのは、ありなんじゃないかって俺なんかは思うことがあるんだ。俺たちのように殺人事件や凶悪事件ばかりを追いかけていくと、犯人や、事件の当事者の精神状態というのは、本当に分からないところに存在しているような気がしてきて、時々、自分までがおかしくなったんじゃないかって思うことがある。特に被害者や、事件の当事者が日記なんかをつけていて、それを見る機会があると、本当に何を考えているのか分からないと思うんだ。だから、余計に、犯罪を犯す人間の精神状態というのは、本当に異常なんだなって思うんだよ」
 という辰巳刑事に対して、
「そうなのかな? 俺は殺人事件を起こす人間の方がよほどまともな人間が多いんじゃないかって思うことがあるんだ。精神状態が最初から異常であれば、異常な状態に慣れているから、少しは殺人などをしなくても別の方法を思いつくのではないかと思うんだ。何かに追い詰められて、精神的に弱ってしまうのは、普通の精神状態の人であって、そんな人が想像もつかないことを引き起こすと思うんだ。だから、犯罪捜査の難しさというのはそこにあるんじゃないかと俺は常々思っているんだけど、刑事としては、こういう考えは認めたくないのかな?」
 という新聞記者の発想に、少しさすがの辰巳刑事も脱帽だった。
「いや、なかなかそこまでは思いつかないよ。そもそも、そこまで精神分析をすることはないかも知れないな。犯罪捜査において、犯罪者の考えをそこまで掘り下げる必要はないので、考えたこともなかったという方が正解ではないかな?」
 と、辰巳刑事がいうと、
「そっか、それもそうかも知れないな」
 と、新聞記者は呟いた。
作品名:時間の螺旋階段 作家名:森本晃次